ビジネスチャットとグループウェアの導入、総務が契約前に決めるアカウントと退職者のデータ
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この記事を読むと、ビジネスチャットやグループウェアを申し込む前に、総務が社内で決めておくべきことがはっきりします。決めるのは「誰にアカウントを配るか」「過去のやりとりを誰がいつまで見られるか」「退職時に何をするか」「やめるときにデータをどう持ち出すか」の四つです。料金表の月額だけ見て決めると、人数が増えた年と、やめようとした年に想定外のことが起きます。逆に、この四つを先に紙に書いておけば、稟議も通りやすく、乗り換えも重くなりません。
まず決めるのは「チャットが欲しいのか、グループウェアが欲しいのか」
同じ社内ツールに見えても、中身の狙いは分かれます。ここを曖昧にしたまま比較表を作ると、機能の多い方が良く見えて、使わない機能にお金を払うことになります。
- チャット型:社内の連絡を速くするもの。メッセージ、ファイル共有、通話が中心。導入は軽い。
- グループウェア型:スケジュール共有、施設予約、掲示板、稟議などのワークフロー、安否確認まで含むもの。業務の型が決まっている会社向け。
- オフィススイート一体型:メール、文書作成、ファイル置き場、アカウント管理まで一つの基盤にまとめるもの。会社のメールアドレス自体を移す話になる。
判断の順番は、今いちばん困っていることを一つだけ書き出すことです。「電話とメールで連絡が追いつかない」ならチャット型で足ります。「誰がいつ休むのか、稟議がどこで止まっているのか分からない」ならグループウェア型が要ります。「メールの容量とパスワード管理が限界」なら基盤ごと見直す話です。困りごとが一つなら、ツールも一つで始めるほうが定着します。二つ同時に入れると、どちらも中途半端に使われて、翌年の更新で説明に困ります。
料金は月額ではなく「誰にアカウントを配るか」で決まる
多くのサービスは、利用者一人あたりの月額という形です。おおよそ一人あたり数百円から二千円程度の幅で、機能の段階によって変わります。ここで総務が最初に詰まるのは、金額ではなく人数の数え方です。
確かめるのは次の点です。
- パートやアルバイト、業務委託の人にも配るのか。配らないなら、その人たちへの連絡はどう回すのか。
- 退職者の枠は、退職した月のうちに減らせるのか。年間契約だと、期中に人数を減らしても返金されない形が一般的です。
- 繁忙期だけ人が増える会社では、増やすのは即日でも、減らすのは更新月だけ、という条件になっていないか。
- 社外の協力会社を招く「ゲスト」の扱いは無料か、有料の一人として数えるのか。
よくあるのは、現場から「あの人も入れてほしい」と少しずつ依頼が来て、気づくと想定の二割増しになっている状態です。これを防ぐには、申し込む前に「アカウントを配る条件」を一行で決めておくことです。たとえば「雇用契約がある人全員」「常時出社する人のみ」といった線引きです。線引きがないと、判断が毎回総務個人の裁量になり、断りにくくなります。
無料プランの落とし穴は、過去ログとデータの持ち出し
無料で始められるものは多く、試すには向いています。ただし無料のまま本番運用に入ると、後から効いてくる制限があります。契約前に確かめるのは、機能の数ではなく次の三点です。
- 過去のメッセージがいつまで見られるか。一定期間より前や、一定件数より古いものは閲覧できなくなる形があります。消えたわけではなく「見えない」だけ、という説明のこともあります。
- データをまとめて書き出せるか。書き出し機能が有料の上位段階だけに付いている場合、退会前にお金を払って上げる必要が出ます。
- 管理者ができることの範囲。誰がどの会話に入っているかの一覧、退職者アカウントの停止、外部共有の制限などが、無料では使えないことがあります。
社内連絡をチャットに寄せると、そこが実質的な業務記録になります。「言った・言わない」の確認や、トラブルの経緯を追うときに過去ログが要ります。見えない期間があることを知らないまま運用を続け、必要になった時点で困るのは避けたいところです。無料で試すのは構いません。本番に切り替える判断基準を「全社で使い始める日」と決めて、その日までに有料の段階と金額を稟議に載せておくと、後追いの決裁が要りません。
入社と退職のたびに発生する作業を、契約前に書き出す
継続契約の負担は、月額よりも運用の手間に出ます。人の出入りがあるたびに、誰かが手を動かすからです。
入社時にやることは、アカウント作成、所属グループへの追加、スマートフォンへの導入案内、初期パスワードの伝え方、といったあたりです。退職時にやることはもっと繊細です。
- アカウントを即日停止するのか、一定期間は停止だけにして削除は後にするのか。
- その人が書いたメッセージやアップロードしたファイルは残るのか、消えるのか。ツールによって挙動が違います。削除と同時に本人の投稿ごと見えなくなる設計だと、引き継ぎの経緯が丸ごと失われます。
- その人だけが管理者だったグループや共有ファイルの持ち主を、誰に移すのか。
ここで詰まりやすいのは、退職の連絡が総務に届くタイミングです。最終出社日の後に人事から連絡が来ると、停止が遅れます。入退社の手続き一覧に「社内ツールのアカウント停止」を一行足しておくだけで、抜けが減ります。担当が一人しかいない会社では、管理者権限を必ず二人以上に持たせることも決めておきます。担当者本人が急に休んだとき、誰もアカウントを止められない状態になるためです。
やめるとき・乗り換えるときに何が起きるか
入るときは数クリックでも、出るときは手間がかかります。契約前に確かめておくと、数年後の自分が助かります。
- 解約の申し出はいつまでか。月単位で止められるのか、年間契約の自動更新で、更新の一定日数前までに申し出る形か。
- 解約後、データはどれくらい残るのか。停止から一定期間で完全に消える設計が一般的です。消えた後の復旧は期待できません。
- 書き出せる形式は何か。読める表計算ファイルなのか、機械向けの形式なのか。後者だと、中身を人が読むために別の手間が要ります。
- ファイル本体も一緒に書き出せるか。メッセージの文字だけ出て、添付ファイルは出ない、という分かれ方があります。
乗り換えでもう一つ現実的な問題があります。新旧ツールの併用期間です。連絡先が二つあると、どちらに書けばよいか分からなくなり、見落としが出ます。切り替え日を決め、旧ツールは閲覧のみにする、という段取りを先に決めておくと混乱が短く済みます。過去ログを新しいツールに引っ越せる保証はありません。「旧ツールの書き出しファイルを共有フォルダに置いて、必要なときに検索する」という落とし所にするのが現実的です。
社内の反対と、稟議の通し方
社内ツールの導入で止まる理由は、たいてい費用ではありません。人の抵抗です。想定される反対と、対応の考え方を挙げます。
- 「メールで足りている」という声。全部を移すのではなく、社外とのやりとりはメール、社内はチャット、と用途を分ける形を示すと通りやすくなります。
- 「私物のスマートフォンに入れたくない」という声。会社から端末を配らないなら、入れるかどうかは本人が選べる形にし、入れない人にはパソコンで見てもらう、という逃げ道を用意します。
- 「夜中に通知が来る」という懸念。通知を止める時間帯を全社で決め、就業時間外の連絡は原則しない、と文章で示します。これは労働時間の管理にも関わるため、あいまいにしないほうが安全です。
稟議書には、月額の総額だけでなく「導入で減る作業」を一行入れます。たとえば、全員への連絡が電話とメールに分かれている状態が一本化される、稟議の紙が回る時間が短くなる、といった内容です。金額の根拠は、人数の上限を先に示すと質問が減ります。「現在の従業員数ぶん、上限は次年度の採用計画まで」と書いておけば、増員時の追加決裁が不要になり、後から説明に行かずに済みます。
で、どうすればいいか
順番はこうです。
一、困りごとを一つに絞る。連絡が遅いのか、予定が見えないのか、メール基盤が限界なのかを紙に書きます。
二、アカウントを配る条件を一行で決める。誰に配り、誰に配らないかです。これが金額の土台になります。
三、候補を二つか三つに絞り、営業担当に同じ四つの質問をします。過去ログの保存と閲覧の条件、データの書き出し方法と形式、退職者アカウントを停止したときの投稿の扱い、解約の申し出期限と解約後のデータ保持期間。回答はメールなど文字で残してもらいます。口頭の説明は、担当者が替わると引き継がれません。
四、一部の部署だけで一か月程度試します。全社導入の前に、通知の多さと、使われない機能が見えます。
五、切り替え日と、旧来の連絡手段をどう残すかを決めてから全社に案内します。
契約前にこの五つを終えていれば、値段の差は大きな問題になりません。差が出るのは、運用を誰が回すかと、やめるときに手元に何が残るかです。
買う前に確かめること
- アカウントを配る対象の条件を一行で決め、社内に示したか
- 過去のメッセージの保存期間と、閲覧できる期間の条件を確認したか
- データの書き出し方法と形式、添付ファイルが含まれるかを確認したか
- 退職者のアカウントを停止したとき、本人の投稿が残るかを確認したか
- 解約の申し出期限と、解約後にデータが消えるまでの期間を文字で得たか
- 管理者権限を二人以上に持たせ、担当不在時に止められる体制にしたか
候補になる分類
社内連絡に絞ったビジネスチャット(無料の段階から試せるもの)
目安:無料〜1人あたり月額千円程度
まず連絡の速さを改善したい会社に向きます。導入が軽く、スマートフォンだけでも始められます。ただし過去ログの閲覧期間とデータ書き出しの条件は、有料の段階で変わることが多いため、本番運用に移す時期を先に決めておくのが安全です。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
スケジュール・掲示板・ワークフローを含むグループウェア
目安:1人あたり月額数百円〜2千円程度
休暇申請や稟議が紙とメールで回っている会社に向きます。連絡だけでなく、誰がいつ何を承認したかが記録として残ります。機能が多いぶん、使う機能を絞って導入しないと定着しにくい点は注意が要ります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
メールとファイル共有を含むオフィススイート型のクラウド基盤
目安:1人あたり月額千円〜3千円程度
会社のメールアドレスやファイルの置き場そのものを見直したい会社に向きます。アカウント管理を一か所にまとめられるため、入退社の手続きが整理しやすくなります。移行の作業量は大きいので、導入の担当と期間を先に決める必要があります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
無料プランのまま全社で使い続けてもよいですか
短期間の試用なら問題ありませんが、本番運用では過去のやりとりが一定期間より前は見られなくなる形が多く、後から経緯を確認したいときに困ります。管理者が退職者のアカウントを止められるか、データをまとめて書き出せるかも、無料では制限されていることがあります。全社で使い始める日を決め、その時点で有料の段階に上げる前提で予算を組むほうが安全です。
従業員の私物スマートフォンに入れてもらってよいですか
強制はしないほうが無難です。私物端末に業務用ツールを入れる場合、紛失時の対応や、業務時間外の通知の扱いを会社として決めておく必要があります。入れない人はパソコンで確認する、という代替の手段を用意し、就業時間外の連絡は原則しないことを文章で示しておくと、後のトラブルが減ります。
退職者のアカウントはすぐ削除してよいですか
削除の前に、その人の投稿やファイルがどうなるかを確かめてください。ツールによっては、アカウント削除と同時に本人の投稿が見えなくなり、引き継ぎの経緯が追えなくなります。実務では、最終出社日にいったん停止(ログインできない状態)にして、引き継ぎの確認が済んでから削除する段取りが取りやすい形です。
乗り換えるとき、過去のやりとりは新しいツールに引き継げますか
そのまま引き継げると考えないほうがよいです。旧ツールから書き出したファイルを共有フォルダに保管し、必要なときに検索する形が現実的です。書き出しに対応しているか、添付ファイルも含まれるかは、契約前に文字で確認しておいてください。