オフィスの選びかた

中小企業の総務が決裁する「契約」と「買いもの」を、実際に決裁した側の目線で選ぶための記録。

会社の固定電話を入れ替える前に ─ 総務が確かめる番号の引き継ぎとリース残債

2026-09-12 ビジネスフォンクラウドPBX固定電話リース契約総務の実務

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会社の電話は、壊れるまで誰も触りません。だから入れ替えの話が出たときには、たいてい時間がない状態です。この記事を読むと、代表番号を残せるかどうかをどこに聞けばいいか、いま使っている機械にいくら残っているか、そして切り替えたあと誰が困るかが、契約前に判断できるようになります。順番を間違えると、番号が変わって名刺と封筒とホームページを刷り直すことになります。

最初に決めるのは機種ではなく「代表番号をどうするか」

電話の入れ替えで最も戻せない失敗は、代表番号が変わることです。機械は買い替えられますが、番号は取り戻せません。

名刺、封筒、ホームページ、取引先の登録、請求書、契約書の連絡先、Googleの店舗情報、求人票。番号が変わると、この全部を直すことになります。刷り直しと差し替えの手間を金額に換算すると、電話機の入れ替え費用より大きくなる会社もあります。

ですから、検討の一番最初にこれを確かめます。

  • いまの代表番号は、どの事業者から発番されたものか
  • 切り替え先のサービスで、その番号をそのまま使えるか(番号ポータビリティ、つまり番号の持ち運びができるか)
  • 持ち運べる場合、切り替え作業に何営業日かかり、その間に不通の時間が出るか

販売店の営業担当は「たいてい大丈夫です」と言いがちです。口頭ではなく、番号ごとの可否をメールで文書にしてもらってください。複数の番号(代表番号のほかに、FAX専用番号、支店の番号など)を持っている会社は、番号ごとに結果が違うことがあります。

もうひとつ、移転の予定がある会社は要注意です。市外局番のエリアをまたいで引っ越すと、番号が変わるのが原則です。移転を1〜2年内に考えているなら、電話の刷新は移転とセットで計画したほうが無駄がありません。

いま何を使っているのか、契約書を見ないと話が始まらない

見積もりを取る前に、社内の現状を紙に書き出します。これをやらずに相見積もりを取ると、条件がそろわず比較になりません。

集めるのは次の書類と情報です。

  • 電話回線の請求書(どの事業者に、毎月いくら払っているか。基本料と通話料を分けて見る)
  • 主装置(しゅそうち。電話機をまとめて制御する箱)のリース契約書。開始日、月額、期間、満了日
  • 電話機の台数と設置場所。何台が実際に鳴っているか
  • FAXの有無と、月に何枚送受信しているか
  • 保守契約の有無と、年額いくらか

主装置は、たいてい事務所の隅か電話配線盤(MDFと呼ばれる壁の箱)の近くにあります。ふだん誰も見ないので、埃をかぶった状態で見つかります。側面のラベルに型式と設置年が書かれていることが多いので、写真を撮っておくと商談が早く進みます。

ここで判明しがちなのが、リースが満了しているのに自動で再リース(満了後の格安な継続契約)に入っていて、少額を払い続けているケースです。逆に、まだ残債が2年分あることが分かる場合もあります。どちらかで打ち手がまったく変わります。

クラウド型に変えるか、箱を置き換えるか、判断が分かれる点

選択肢はおおむね三つです。

  • 従来型の入れ替え:新しい主装置と電話機を入れる。使い勝手は変わらないが、機械と工事が必要
  • クラウドPBX:電話交換の仕組みを事業者側に置き、スマホやパソコンのアプリで内線・外線を使う。事務所に大きな箱は不要
  • 両者の併用:代表番号はクラウド、FAXや警備・エレベーター連絡用の回線は従来のまま残す

クラウド型が向くのは、外出が多い、拠点が複数ある、在宅勤務がある、近く移転する予定がある会社です。会社の電話を個人のスマホで受けられるので、取り次ぎの手間が減ります。

一方で、確かめずに入れると詰まるのがこの三つです。

  • 通話品質はネット回線に乗ります。回線が細い、Wi‑Fiが弱い事務所では音が途切れます。導入前に試用して、来客の多い時間帯に実測してください
  • 停電・ネット障害時に電話が全部止まります。携帯へ自動転送する設定を用意できるか確認します
  • FAXがそのまま使えないことがあります。複合機のFAXを残すなら、FAX用に従来回線を1本残す判断が要ります

また、料金が「利用者1人あたり月額」の形になっているサービスが多く、人が増えると費用も増えます。3年後の人数で試算してから比べてください。

カタログに出ない費用 ─ 工事、配線、廃棄、そして再リース

見積書の合計金額は、実際に出ていくお金の一部でしかありません。実務で後から出てくるのは次のあたりです。

  • 電話配線の工事費。既存のLAN配線を使えるか、電話専用の配線を引き直すかで金額が変わります。古いビルほど読めません
  • 電源とハブの増設。IP電話機は電源を食います。島ごとにスイッチ(ネットワーク機器)を足す話が後から出ます
  • 古い電話機と主装置の撤去・廃棄。産業廃棄物の扱いになるため、粗大ごみには出せません。撤去費が別見積もりになっていないか確認します
  • リースの残債。途中解約すると残りをまとめて払うのが原則です。新しい契約の月額に残債を上乗せして「毎月ほぼ同額です」と提案されることがありますが、総額では増えています。総支払額で比べてください
  • 保守費。機器代とは別に年額でかかります。5年分を足して比較します

実際にやってみると分かりますが、いちばん揉めるのは廃棄です。撤去した電話機が20台、段ボールに入って会議室の隅に半年置かれる、という光景はよくあります。撤去日と引き取り日を、契約書か発注書に日付で書いてもらってください。口頭の「あとで引き取ります」は動きません。

社内の反対は「機械が変わること」ではなく「電話を取る人」から出る

電話の刷新でつまずくのは、たいてい技術ではなく人です。

反対の中身は、だいたい三つに分かれます。

  • 受付や事務の担当者:「取り次ぎのやり方が変わると、来客対応と同時にできない」
  • 年配の社員:「スマホのアプリで会社の電話を受けるのは分かりにくい」
  • 営業:「私用スマホに会社の電話を入れたくない。休日にかかってくる」

最後のものは根が深いので、先に方針を決めておきます。私用端末に業務アプリを入れるなら、受付時間外は着信させない設定にできるか、退職時にアプリと番号を切り離せるかを、契約前に確認してください。ここを曖昧にしたまま導入すると、退職者の私物スマホに会社の内線が残る、という事態になります。

進め方としては、いきなり全社を切り替えないことです。総務と、外出の多い部署の数名で1〜2か月試す。そのあいだに「誰が最初に取るか」「取れなかったときどこへ流れるか」を紙1枚のルールにする。この紙があるかどうかで、切り替え後の混乱がまるで違います。

稟議は「通話料が下がります」だけでは弱いです。取り次ぎと折り返しにかかっている時間、移転時に発生するはずだった工事費、リースの整理。この三つを並べたほうが通りやすくなります。

やめるとき・移転するときに詰まる点を、入る前に文書で押さえる

継続契約は、入るときより終わるときに時間を取られます。契約前に、次の点を必ず書面で確認してください。

  • 最低利用期間と、期間内に解約したときの違約金の計算方法
  • 自動更新の有無と、解約予告の期限(何か月前までに、どの方法で伝えるか)
  • 解約したとき、代表番号をどうできるか。他社へ持ち出せるのか、それとも番号が消えるのか
  • 貸与された電話機やアダプタの返却義務と、返却送料の負担
  • 通話履歴や録音データを、解約後に取り出せるか。取り出せる期間はいつまでか

いちばん重い項目は番号です。クラウド型の中には、その事業者が独自に用意した番号を割り当てる形のものがあります。この場合、解約すると番号を持って出られないことがあります。つまり、次に乗り換えるときに番号が変わる。入るときには誰も説明しませんし、聞かないと出てきません。

聞き方は簡単です。「解約時、この番号を他事業者へ移せますか。移せる場合の手続きと期間を教えてください」。この一文をメールで送り、返信を保存しておく。それだけで、数年後の自分が助かります。

まとめると、進める順番はこうです。番号の引き継ぎ可否を文書で確認する。現契約とリース残債を洗い出す。回線品質を実際に試す。撤去・廃棄まで含めた総額で比べる。解約条件を書面で残す。この五つを終えてから、はじめて機種を選んでください。

買う前に確かめること

  • 代表番号を引き継げるか、番号ごとの可否をメールで文書回答してもらったか
  • 主装置のリース契約書を見て、満了日と残債の金額を確認したか
  • 撤去した電話機と主装置の廃棄費用、引き取り日が見積書に入っているか
  • 解約時に番号を他社へ持ち出せるか、書面で確認したか
  • 1〜2か月の試用で、来客が多い時間帯の音声品質を実測したか
  • 私用スマホを使う場合、退職時にアプリと番号を切り離せる仕組みがあるか

候補になる分類

クラウドPBX(既存の代表番号を引き継げるか、番号ごとに可否を確認できるもの)

目安:1人あたり月額1千円前後〜/初期費用は数万円〜数十万円程度

外出や在宅勤務が多く、拠点が分かれている会社に向きます。事務所に大きな機械を置かずに済み、移転時の電話工事も軽くなります。ただし利用者ごとの月額が多いため、人数が増える前提の会社は3年後の人数で試算してから比べてください。

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ビジネスフォン主装置の入れ替え(買い取りとリースの両方で見積もりが出せるもの)

目安:台数によるが数十万円〜/リースなら月額数千円〜数万円程度

来客対応や受付が中心で、使い勝手を変えたくない会社に向きます。ネット回線の品質に左右されにくいのが利点です。リースにする場合は、途中解約時の残債の扱いと、満了後に機器がどうなるかを契約書で確かめてください。

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電話代行・一次受付サービス(受付時間と報告方法を選べるもの)

目安:月額1万円前後〜数万円程度

総務が一人で電話番も兼ねている会社、少人数で外出が多い会社に向きます。機械を入れ替えずに取り次ぎの負担だけ減らせます。取り次ぐ相手のリストを誰が保守するか、月間の受電件数を超えたときの追加料金を先に確認してください。

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よくある質問

いまの代表番号を、そのまま新しいサービスで使えますか。

番号の発番元と切り替え先の組み合わせによって変わります。使える場合も、切り替え作業に数営業日かかることがあります。番号ごとに可否をメールで回答してもらい、その回答を保存しておいてください。口頭の「大丈夫です」は根拠になりません。

FAXはどうなりますか。

クラウド型に一本化するとFAXがそのまま使えないことがあります。複合機のFAXを残すなら、FAX専用に従来の回線を1本残すのが現実的です。月に何枚送受信しているかを先に数えると、残すか廃止するかの判断がつきます。

主装置のリースが残っています。今すぐ入れ替えられますか。

原則として残りの期間分をまとめて支払う必要があります。新しい契約の月額に残債を上乗せする提案を受けることがありますが、総支払額は増えます。満了までの期間が1年を切っているなら、満了に合わせて切り替えるほうが無駄が出にくいです。

停電やネット障害のときに電話が止まりませんか。

クラウド型は、事務所のネット回線が止まると通話もできなくなります。障害時に携帯電話へ自動転送する設定を用意できるか、契約前に確認してください。警備会社やエレベーターの連絡用回線は、別系統で残す判断が必要な場合があります。

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