オフィスの選びかた

中小企業の総務が決裁する「契約」と「買いもの」を、実際に決裁した側の目線で選ぶための記録。

会計ソフトのクラウド乗り換え、契約前に総務と税理士で決めること

2026-09-07 会計ソフトクラウド会計乗り換え顧問税理士電子帳簿保存法

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会計ソフトの乗り換えは、ソフトの機能比較で決めると高い確率でもめます。実際に詰まるのは、顧問税理士が対応できるか、期の途中で切り替えていないか、やめたあと過去の帳簿を見られるか、の三点です。この記事を読むと、見積もりを取る前に税理士へ何を聞けばいいかと、稟議書に何を書けばいいかが決まります。値段の比較は最後で構いません。

乗り換えの成否は、ソフトより顧問税理士との段取りで決まる

中小企業の会計ソフトは、社内だけで使っている道具ではありません。多くの場合、顧問税理士や会計事務所が同じデータを見て、月次のチェックと決算をしています。ここを飛ばして社内だけで新しいソフトを決めると、あとで必ず戻ってきます。

よくあるのが、次の三つです。

  • 事務所が新ソフトに対応しておらず、毎月データを書き出して渡す手作業が増える
  • 対応はしているが、事務所側のライセンス費用が増えるとして顧問料の見直しを言われる
  • 事務所が長年使っている別のソフトへの統一を勧められ、社内の希望と食い違う

決算料や顧問料が月あたり数千円から一万円台で上がると、ソフト代の差額はすぐ消えます。だから順番が大事です。候補を三つほどに絞った段階で、税理士に「この中で御事務所が問題なく見られるのはどれですか」「変わることで顧問料に影響はありますか」と、文書かメールで聞いてください。口頭だと稟議に添付できません。

事務所によっては、自社が使うソフトを会社側に提供する形をとっているところもあります。その場合、会社が別に契約する必要があるのかも確かめます。二重に払っている例は珍しくありません。

期の途中で切り替えない ─ 移行時期と過去データの扱い

会計データは、年度をまたいで数字がつながっています。期の途中で乗り換えると、同じ年度の帳簿が二つのソフトに分かれます。決算のときに合算する手間が増え、税務調査で「この期の総勘定元帳を出してください」と言われたときに、二か所から出すことになります。

原則は、新しい期の初日から使い始めることです。逆算すると、決算日のおおよそ三か月前には契約を決めておきたいところです。設定と試し打ちの期間が要るからです。

過去データの移行は、期待しすぎないでください。移行できるのは、たいてい次のあたりまでです。

  • 勘定科目と補助科目の一覧
  • 期首残高、取引先マスタ
  • 直近一期分程度の仕訳(形式が合えば)

補助科目の枝番や、独自に作った部門コードは崩れることがあります。移行後は、試算表を旧ソフトと新ソフトで並べて一円まで合うか確認します。ここを税理士にも見てもらってください。

そして、旧ソフトの過去年度をどう保存するか。これは次の節と合わせて決めます。紙で総勘定元帳を出しておく会社もありますが、量によっては段ボール数箱になります。置き場所も先に考えておきます。

料金表に出ない費用 ─ ユーザー数、部門数、電子帳簿保存の追加分

クラウド会計の月額は、プラン表の金額だけでは決まりません。実務で効いてくるのは、次のような加算です。

  • ユーザー課金。経理担当だけなら安いのですが、経費精算や請求書発行を社員に開放すると、使う人数分の課金になることがあります。四十人が申請だけするのに全員分が上位ユーザー扱い、という設計だと金額が跳ねます。閲覧・申請だけの人が安く済む区分があるかを確かめてください。
  • 部門別や拠点別の集計。事業所が複数ある会社では、上位プランでないと部門管理が使えないことがあります。
  • 電子帳簿保存法まわり。証憑(しょうひょう=領収書や請求書などの原本)の保存機能が別オプション、保存容量が別課金、というパターンがあります。紙の請求書をスキャンして捨てたい場合は特に確認が要ります。
  • 初期設定の支援費用。導入サポートが有償で、数万円から十数万円程度かかることがあります。無償だと自力設定です。
  • 年払い割引の裏側。年払いで安くなる代わりに、中途解約しても残りは返らないのが普通です。

見積もりは「三年目の年間総額」で出してもらってください。一年目のキャンペーン価格で比較すると、稟議のあとで数字が変わります。

やめるときに何が残るか ─ 解約後のデータと閲覧期間

継続契約は、入るときより出るときに詰まります。会計データは法律上、原則として七年(欠損金の繰越がある場合はさらに長く)保存が要ります。クラウドを解約したあと、その帳簿をどうやって出すのかを、契約前に文書で確かめてください。

聞くべきことは四つです。

  • 解約後、データを閲覧できる期間はどれくらいか。即日停止か、数十日の猶予があるか。
  • 書き出せる形式は何か。PDFの帳票だけか、仕訳データをCSVで出せるか。他社ソフトに読み込める形式か。
  • 電子で保存していた証憑(領収書の画像など)を一括で持ち出せるか。一件ずつダウンロードしかできない設計だと、数千件で現実的に不可能です。
  • 解約後も閲覧だけ続けるプランがあるか。あるなら年額いくらか。

実務では、解約後の閲覧料を毎年払い続けている会社があります。安いソフトに変えたのに、旧ソフトの保管料が残って合計が減っていない、という状態です。それを避けるなら、解約前に全期間の総勘定元帳と仕訳データを書き出し、社内のサーバーか外付けの記録媒体に保存し、税理士にも同じものを渡しておきます。この作業に一日から数日かかることも見込んでください。

この確認は、乗り換え先の契約前にやります。次にやめるときの話です。

誰が運用するか ─ 銀行連携と仕訳ルールは自動では育たない

クラウド会計の売りは、銀行やカードの明細を取り込んで仕訳を自動化する点です。ただし、最初から賢いわけではありません。「この摘要ならこの科目」というルールを人が登録して、はじめて自動になります。この初期の学習作業を誰がやるのか、決めずに導入すると止まります。

実務でつまずく点を挙げます。

  • インターネットバンキングとの連携は、銀行側の申請が別に要ることがあります。法人インターネットバンキングの契約種別によっては連携できず、電子証明書やワンタイムパスワードの機器を使う設定だと自動取得ができない場合もあります。金融機関に先に確認してください。
  • クレジットカードの連携は、カード会社の明細サイトの仕様変更で一時的に止まることがあります。
  • 自動仕訳の精度は、最初の二、三か月は低いものと考えます。この間は旧ソフトと並行して見る覚悟が要ります。

担当が一人だと、その人が辞めたときにルールの意味が誰にもわかりません。設定内容と、月次の締め手順を紙一枚のマニュアルにしておいてください。画面のスクリーンショットを貼るだけで十分です。

そして、権限設定です。誰が仕訳を確定でき、誰が閲覧だけかを分けます。小さい会社ほど全員が管理者になりがちですが、退職時の権限削除が漏れます。退職手続きのチェックリストに「会計ソフトの権限削除」を一行足しておきます。

稟議は「安くなる」で出さない ─ 通し方と書く順番

会計ソフトの乗り換えを「クラウドのほうが安い」で稟議にかけると、二つの理由で通りにくくなります。一つは、差額が年数万円程度だと手間に見合わないと言われること。もう一つは、実際には税理士の顧問料や初期設定費で相殺されがちで、あとで数字が合わないことです。

通りやすいのは、次の順で書いたときです。

  • 今困っていること。例えば、経理担当が出社しないと入力できない、担当が一人しか操作できない、法改正のたびに更新作業が要る、など具体的な場面で書きます。
  • 変えないと何が起きるか。担当者不在時に月次が止まる、保守が終了する版を使い続けるリスク、など。
  • 費用は三年総額で。初期設定費、税理士側の影響、解約時の保存費用まで含めます。
  • 移行のスケジュール。次期の期首から、と日付を入れます。
  • やめるときの出口。データをこの形式で持ち出せる、と一行書いておくと、決裁者は安心します。

反対が出るとしたら、たいてい経理の現場と税理士からです。「今のやり方で困っていない」という反対には、機能の話で返しても平行線です。属人化の解消と、担当者が休んだときの代替手段、という言い方のほうが通ります。導入後に現場の負担が一時的に増えることも、正直に書いておいたほうが後が楽です。

で、どうすればいいか ─ 契約までの進め方

順番だけ決めておけば、迷いません。

一、決算日を確認し、切り替え目標を「次期の期首」に置きます。逆算して、おおよそ三か月前を契約期限にします。

二、顧問税理士に、候補ソフトの対応可否と顧問料への影響をメールで聞きます。回答は稟議に添付します。

三、候補を二つか三つに絞り、それぞれから見積もりを取ります。条件は「実際に使う人数」「拠点数」「証憑保存を使うかどうか」を揃えて出します。三年総額で比較します。

四、解約時の条件を、営業担当ではなく契約書と利用規約の該当箇所で確かめます。データの書き出し形式、閲覧できる期間、年払いの返金の有無。ここは口頭の回答を信じないでください。

五、無料試用期間があれば、実際の一か月分の取引を入れて試します。カタログを見るより早くわかります。銀行連携もこの期間に試します。

六、旧ソフトの過去データを書き出し、社内と税理士の双方に保存します。旧ソフトの解約日は、書き出しが終わってから決めます。

七、権限設定と月次の手順を紙一枚にまとめ、退職手続きのチェックリストに権限削除を追加します。

ここまでやって、はじめて乗り換えが終わりです。導入日はゴールではありません。

買う前に確かめること

  • 顧問税理士に候補ソフトの対応可否と顧問料への影響をメールで確認したか
  • 切り替え日を次期の期首に置き、逆算した契約期限を決めているか
  • 実際に使う人数・拠点数で見積もりを取り、三年総額で比較したか
  • 解約後のデータ書き出し形式と閲覧できる期間を契約書で確認したか
  • 初期設定と月次の締めを誰がやるか、担当が不在の時の代替を決めたか
  • 旧ソフトの過去データを書き出し、社内と税理士の両方に保存したか

候補になる分類

クラウド型の会計ソフト(会計事務所とデータを共有できるタイプ)

目安:月額数千円〜2万円台程度(人数・拠点数で変動)

経理担当が一人しかいない、あるいは在宅や複数拠点から入力したい会社に向きます。顧問税理士が同じ画面を見られるかどうかで使い勝手が大きく変わるため、事務所の対応状況を先に確かめてから選びます。

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インストール型(自社パソコンに入れる)会計ソフト

目安:年間3万円〜10万円程度(保守込みの場合)

取引量が安定していて、経理が社内の決まった端末で完結している会社では、これで足りることがあります。年間の保守やバージョンアップ費用と、担当者が不在のときにどうするかを合わせて検討してください。

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会計事務所の記帳代行と会計ソフト提供がセットになった契約

目安:月額2万円〜10万円程度(仕訳数による)

経理専任がおらず総務が兼任している会社で、入力そのものを外に出したい場合の選択肢です。契約を終える際に、データを自社の形式で受け取れるかを最初に文書で確認しておくことが重要です。

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電子帳簿保存法に対応した証憑(領収書・請求書)保存サービス

目安:月額数千円〜2万円程度(保存容量・件数で変動)

紙の請求書や領収書をスキャンして保管を減らしたい会社向けです。会計ソフトの標準機能で足りるのか、別契約が要るのかを見積もり段階で分けて出してもらうと、後から金額が増えるのを防げます。

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申し込み先

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よくある質問

期の途中でどうしても乗り換えたい事情があります。無理でしょうか。

できないことはありませんが、同じ年度の帳簿が二つに分かれます。決算の合算作業と、税務調査で過去帳簿を提示する際の手間が増えるため、税理士と相談のうえで判断してください。やむを得ない場合は、月初など区切りのよい日を選び、切り替え日を書面に残しておくと後で説明しやすくなります。

顧問税理士が新しいソフトに反対しています。どう進めればいいですか。

まず反対の理由を分けて聞いてください。事務所側が対応できないのか、追加費用がかかるのか、単に慣れの問題なのかで対処が変わります。対応できないという理由なら、そのソフトは候補から外すのが現実的です。費用の問題であれば、増額分を含めた三年総額で比較し直せば判断ができます。

解約後、過去のデータはどうやって保存すればいいですか。

解約前に、全期間の仕訳データと総勘定元帳、決算書を書き出して社内に保存します。形式はCSVとPDFの両方があると安心です。証憑の画像も一括で書き出せるか確かめてください。同じ一式を顧問税理士にも渡しておくと、後日の照会に対応しやすくなります。

銀行の明細が自動で取り込めると聞きましたが、本当に手間は減りますか。

減りますが、すぐには減りません。摘要ごとの仕訳ルールを人が登録して育てる期間が、おおよそ二、三か月は必要です。また、法人インターネットバンキングの契約種別によっては連携できない場合があるため、契約前に金融機関へ確認してください。

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