法人ネットバンキングの申し込み、総務・経理が決める承認権限とトークン管理
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法人のインターネットバンキングは「口座があるから申し込むだけ」と思われがちですが、決めごとは契約書より社内運用のほうに多くあります。この記事を読むと、誰が入力して誰が承認するか、トークン(ワンタイムパスワードを表示する小さな機器)や電子証明書を誰が持つか、そして将来ほかの銀行に移すときに何が止まるかを、申し込み前に決められます。手数料の比較は最後で構いません。先に決めるのは権限と引き継ぎです。
最初に決めるのは手数料ではなく「入力する人と承認する人」
申し込み画面では利用者IDをいくつ作るか聞かれます。ここを深く考えずに「経理担当者ひとつ」で済ませると、あとから直すのに書面手続きが必要になることがあります。
法人の不正送金や内部不正の防止で基本になるのは、入力する人と承認する人を分けることです。経理担当が振込データを作り、上長または代表者が承認して初めて送信される設定にします。小さな会社ほど「ひとりで全部できたほうが早い」と言われますが、万一のときに本人が疑われる形になります。本人を守る仕組みでもある、と説明すると社内は通りやすくなります。
よくあるのは、承認者を代表者ひとりにしてしまい、出張や入院で振込が止まるケースです。承認者は二人以上登録し、片方が動けないときにもう片方が承認できる状態にしておきます。ただし二人とも権限を持つなら、誰が承認したかが履歴で追えることを必ず画面で確かめてください。
- 入力専用、承認専用、照会のみ、の三種類を使い分けられるか
- 一定金額を超えたら承認者を増やす設定ができるか
- 権限変更は画面上でできるか、書面と印鑑が要るか
月額の基本料より、振込手数料と「口座を増やす」費用を見る
比較するときに目に入るのは月額の基本料ですが、年間の負担を左右するのは振込1件あたりの手数料と件数です。毎月の支払件数と給与の人数を数えて、1年分で概算してください。ここを出さないと稟議の資料が作れません。
見落としやすいのは次の費用です。
- 同じ銀行あて/他行あてで手数料が違う。取引先に同行の会社が多いかで差が出る
- 給与振込を総合振込で出す場合、1件あたりの単価や月あたりの基本料が別立てのことがある
- 口座振替(自動引き落とし)を使うなら、初期費用と1件あたりの請求手数料が別途かかる
- トークンの追加発行や再発行は有料のことが多く、紛失時は数千円程度かかる例もあります
- 支店や部門ごとに口座を増やすと、口座ごとに利用料がかかる方式かを確認する
ネット専業銀行は基本料が無料または低額で、振込手数料も抑えめの設計が多い一方、融資や手形、窓口での相談は期待しにくい面があります。メインバンクとの関係を考えて、支払い用のサブ口座だけをネット銀行にする分け方もよく選ばれます。どちらが安いかではなく、何に使う口座かを先に決めてください。
電子証明書とトークンは、担当者のパソコンと退職に紐づく
法人向けでは、ログインに電子証明書(パソコンに入れる電子的な身分証)やトークンを使う方式が一般的です。ここが実務でいちばん詰まります。
電子証明書はインストールしたパソコンに紐づきます。そのため、担当者のパソコンを入れ替える、OSを初期化する、故障で交換する、といったときに失効と再発行の手続きが要ります。情報システムの担当者が善意でパソコンを初期化した翌日に振込ができない、という事故はよく起きます。パソコン入れ替えの手順書に「銀行の電子証明書の移行」を1行入れておくと防げます。
トークンは物理的な機器です。誰が保管しているかを台帳にし、保管場所を決めます。承認者のトークンが承認者の個人の引き出しに入ったまま退職した、となると再発行まで振込が止まります。
退職や異動のときに必要なのは、次の棚卸しです。
- 利用者IDの削除と、残った権限の付け替え
- トークンの回収と、返却されたかの記録
- 振込先登録に、その担当者しか知らない口座が残っていないかの確認
- メール通知の宛先が退職者のアドレスのままになっていないか
通知メールの宛先は、個人宛だけでなく、経理の共有アドレスにも届くようにしておくと、入金や異常の見落としが減ります。
やめるときに止まるのは、口座振替と給与振込と引き落とし
継続して使うものは、入るときより終わるときに手間がかかります。銀行の切り替えも同じです。口座を解約した瞬間に止まるものを、先に洗い出してください。
- 取引先からの入金口座(請求書・契約書・ホームページに記載した口座番号)
- 社会保険料、税金、リース料、家賃、光熱費などの自動引き落とし
- 給与振込の依頼データと、従業員への届け出
- クレジットカードや各種サービスの引き落とし口座
実務では、旧口座を数か月から半年程度は残して並行稼働させるのが安全です。入金のほうは、取引先に口座変更を案内しても、昔の請求書を見て旧口座に振り込む先が必ず出てきます。旧口座を早く閉じると、入金の行方を追う作業が発生します。
また、振込先の登録データは銀行をまたいで自動では移りません。取引先が数十社あると、口座番号の再入力と確認に相応の時間がかかります。会計ソフトや給与ソフトから全銀協フォーマット(銀行共通の振込データ形式)で出力できるなら、その形式に対応しているかを新しい銀行側で確かめてください。対応していれば、手入力の量を減らせます。
解約手続き自体は、通帳やカード、トークンの返却を求められることがあります。何を返すのかを事前に聞いておくと、当日の往復が減ります。
稟議は「手数料が下がる」より「止まらない・疑われない」で書く
費用削減だけを理由にすると、金額が小さいときに決裁が止まります。通りやすいのは、次の二つを並べる書き方です。
一つめは業務が止まらないこと。承認者がひとりしかいない、担当者のパソコンにしかログイン手段がない、という状態は、人が一人欠けると支払いが止まります。支払いが遅れると取引先との信用に関わります。これは金額に換算しにくい分、経営層に伝わりやすい論点です。
二つめは担当者を疑わなくて済むこと。入力と承認を分け、履歴が残る状態にすることは、不正を防ぐと同時に、何かあったときに担当者の潔白を示す材料になります。「担当者を守るため」と書くほうが、社内の反発は小さくなります。
稟議書に添える資料は多くなくて構いません。年間の振込件数と手数料の概算、現在の権限の一覧、申し込み後の運用ルール案(誰が入力し、誰が承認するか)の三点があれば、判断材料としては足ります。手数料の比較表だけを出すと、「それなら今のままでいい」で終わりがちです。
で、どうすればいいか ─ 申し込み前にやる順番
順番を間違えなければ、作業そのものは重くありません。
一つめに、今の支払いと入金を棚卸しします。毎月の振込件数、給与の人数、自動引き落としの一覧、入金を受けている口座を紙に書き出します。
二つめに、権限の形を決めます。入力者、承認者(二人以上)、照会のみの三種類で、誰を割り当てるかを先に紙で決めてから申し込みます。申し込み後に直すと書面手続きになることがあります。
三つめに、トークンと電子証明書の管理ルールを決めます。保管場所、台帳、退職時の回収、パソコン入れ替え時の移行手順。ここは情報システム担当やパソコンの保守業者にも共有しておきます。
四つめに、銀行に確かめます。確認するのは、権限設定の自由度、トークン再発行の費用と日数、全銀協フォーマットへの対応、総合振込と口座振替の料金体系、解約時の返却物です。
最後に、切り替えるなら旧口座を数か月程度残した並行稼働を前提に計画します。急いで閉じない。これだけで、切り替え時のトラブルのかなりの部分は避けられます。
買う前に確かめること
- 入力者・承認者・照会のみの権限を、申し込み前に紙で割り当てたか
- 承認者を二人以上登録し、不在時も振込が止まらない形にしたか
- トークンと電子証明書の保管場所・台帳・退職時の回収手順を決めたか
- 自動引き落とし、給与振込、入金口座の一覧を洗い出したか
- トークン再発行の費用と日数、解約時の返却物を銀行に確認したか
- 会計・給与ソフトの振込データ形式に銀行が対応しているか確かめたか
候補になる分類
都市銀行・地方銀行の法人向けインターネットバンキング(複数承認に対応したタイプ)
目安:月額おおよそ1,000〜3,000円程度+振込手数料
融資や手形、窓口相談も必要なメインバンク向けです。権限を細かく分けられる方式が選べるか、承認者を複数登録できるかを申し込み前に確かめる会社に向きます。基本料はかかりますが、既存の取引関係を崩さずに運用を整えられます。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
ネット専業銀行のビジネス口座(基本料無料型)
目安:月額0円程度〜、振込手数料は1件あたり数十円〜百数十円程度
支払い件数が多く、手数料の総額を抑えたい会社に向きます。窓口相談や融資は期待しにくいため、メイン口座ではなく支払い専用のサブ口座として使い分ける形が現実的です。トークンや承認権限の仕様は銀行ごとに差があります。
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会計ソフト・給与ソフトからの振込データ連携(全銀協フォーマットまたはAPI連携)
目安:既存ソフトの契約に含まれる場合が多い
振込先の手入力をやめたい会社に向きます。既に使っている会計ソフト側の機能に含まれていることが多く、銀行側が対応していれば追加費用なしで使える場合もあります。銀行を変える前に、連携の可否を両方に確認してください。
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よくある質問
従業員20人ほどの会社でも、入力と承認を分ける必要がありますか。
人数が少ないほど、ひとりに権限が集中しやすくなります。分けておくと、不正の防止だけでなく、担当者が休んだときに業務が止まらない効果もあります。代表者を承認者に入れ、経理担当を入力者にする形が小規模では一般的です。
トークンをなくしたら、振込はすぐ止まりますか。
再発行までの間、その人の承認ができなくなる可能性があります。再発行には費用と数日程度の日数がかかる例が多いため、承認者を二人以上登録しておくことが現実的な備えになります。保管場所と台帳を決めておくと紛失自体を減らせます。
銀行を切り替えるとき、旧口座はいつ閉じればよいですか。
急いで閉じないほうが安全です。古い請求書を見て旧口座に振り込む取引先が出るため、数か月から半年程度の並行稼働を見込む会社が多くあります。自動引き落としの切り替えがすべて完了したことを確認してから解約してください。
申し込みから使えるようになるまで、どのくらいかかりますか。
銀行や方式によりますが、書面審査と電子証明書・トークンの郵送があるため、数日から数週間程度を見ておくと安全です。給与支払日の直前に切り替えを当てる計画は避けてください。