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顧問弁護士との契約、総務が申し込む前に決める相談範囲と月額の使い道

2026-10-29 顧問弁護士法務継続契約総務稟議

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この記事を読むと、顧問弁護士と契約するかどうかを、社内で説明できる形で判断できます。判断の中心は月額の安さではありません。「自社に起きる相談が何系か」「月額に何が含まれ、何が別料金か」「やめるとき・替えるときに何が残るか」の3点です。顧問契約は毎月引き落とされ続ける固定費なので、使わない月が続くと真っ先に見直し対象になります。契約前にこの3点を決めておくと、1年後に「何に払っているのか分からない」とは言われません。

顧問契約は「相談し放題」ではない。月額に含まれるものを先に書き出す

顧問料の案内には「法律相談無料」「いつでも相談可能」と書かれていることがあります。ただし中身は事務所ごとに大きく違います。契約書の条項を読むと、相談の回数や時間に上限が設けられていたり、一定時間を超えると時間単価の請求に切り替わる仕組みになっていたりします。

契約前に、次の点を文書で確認してください。口頭の「大丈夫ですよ」は、担当が替わると残りません。

  • 月額に含まれる相談の範囲(電話・メール・来所・オンラインのどれが含まれるか)
  • 1か月あたりの時間または件数の上限、超過したときの単価
  • 契約書レビューが含まれるか。含まれる場合、1件あたりの分量の目安(英文契約や長文の基本契約は別扱いになることがあります)
  • 内容証明郵便の作成、相手方との交渉、裁判対応が含まれるか(たいていは別料金です)
  • 対応の目安時間。急ぎの相談に何営業日で返事が来るか

実務でよく詰まるのは、相談できる人の範囲です。社長と総務だけなのか、現場の管理職が直接連絡してよいのかを決めていないと、各部署が勝手に連絡して超過料金が積み上がります。逆に窓口を総務1人に絞ると、総務が不在の日に相談が止まります。窓口は2人、連絡経路は1本、という決め方が運用しやすい形です。

自社に起きる相談が何系かを仕分けないと、相性で失敗する

弁護士は全員が同じ分野を扱うわけではありません。中小企業の総務が持ち込む相談は、おおむね次のどれかに寄ります。自社の過去1〜2年を振り返って、件数の多い順に並べてみてください。

  • 労務系(問題社員への対応、解雇や退職勧奨、残業代の請求、ハラスメントの事後対応、就業規則の条文確認)
  • 取引系(取引先との契約書レビュー、売掛金の回収、納品トラブル、下請法まわりの確認)
  • 消費者・クレーム系(顧客からの苦情、SNSへの書き込み、過度な要求への対応)
  • 知的財産・ウェブ系(商標、画像の無断使用、競合からの警告書)
  • 事業承継・株主まわり(株主総会、役員の責任、M&Aの初期相談)

中小企業でいちばん多いのは労務系です。ところが、労務を主に扱う事務所と、企業間取引を主に扱う事務所では、得意分野が異なります。ホームページの取扱分野だけでなく、初回の面談で「直近でどの分野の相談が多いか」を聞くと、実態が見えます。

もう1点、規模の相性もあります。大きな事務所は体制が厚い一方、担当者が若手になり、こちらの業種事情を毎回説明し直すことがあります。個人の事務所は話が早い反面、その人が繁忙期に入ると返事が遅れます。どちらが良いという話ではなく、自社が求めるのが「専門性」か「反応の速さ」かを先に決めるということです。

月額のほかに発生する費用。着手金・報酬金・日当・実費を分けて聞く

弁護士費用は2004年に旧来の統一基準が廃止され、現在は各事務所が自由に定めています。つまり相場を聞いても一つの答えは返ってきません。比較するには、費目の構造をそろえて聞くしかありません。

  • 顧問料(月額。年払い割引がある事務所もあります)
  • 着手金(依頼した時点で発生し、結果にかかわらず原則戻りません)
  • 報酬金(解決時に、回収額や経済的利益に対する割合で発生することが多い費目です)
  • 日当(遠方の裁判所や交渉の場に出向くときの拘束料)
  • 実費(印紙代、郵券、交通費、謄本の取得費など)
  • タイムチャージ(時間単価制。1時間あたりで積み上がる方式)

顧問契約を結ぶと、着手金や報酬金が一定割合で割引になる事務所が多くあります。この割引率は、顧問料を払う価値を社内に説明するときの材料になります。見積の段階で「顧問の場合はいくらになるか」を明示してもらってください。

稟議で突っ込まれやすいのは「使わなかった月の分はどうなるのか」です。多くの顧問契約は、使わなかった相談枠の繰り越しを認めていません。繰り越しの可否と、繰り越せる期間は、契約書に書かれているかを確認してください。書かれていなければ、繰り越しはないものとして予算を組むのが安全です。

社労士・税理士との線引きを決めないと、同じ相談に二重で払う

すでに顧問社労士や顧問税理士がいる会社では、相談先が重なります。重なったまま運用すると、同じ案件に別々の費用を払い、しかも回答が食い違います。

大まかな目安は次のとおりです。制度の細かい線引きは専門家の間でも場面によりますので、自社の契約内容で確認してください。

  • 就業規則の作成と労働基準監督署への届出、社会保険の手続き、助成金の申請代行は社労士の領域です。
  • 個別労使紛争が現実に発生し、相手方と交渉する、あるいは労働審判や訴訟になる場面は弁護士の領域です。
  • 税務申告は税理士、契約書の条文と法的リスクの判断は弁護士、という分け方が基本です。

実務で判断に迷うのは、その手前の段階です。たとえば問題社員への対応は、「指導記録の取り方」までは社労士、「退職勧奨の進め方と合意書の文面」からは弁護士、というように途中で担当が替わります。この引き継ぎ点を決めずに始めると、社労士に相談した内容を弁護士に説明し直すだけで時間が溶けます。

契約前に、社労士と弁護士の両方に「この種の案件はどちらに出すのが普通か」を聞き、総務の手順書に1枚で書いておいてください。トラブルが起きてから考える余裕はありません。

やめるとき・替えるときに詰まる点。解約予告と係争中案件の扱い

顧問契約は、入るときより解約するときに手間が出ます。継続契約の共通点です。

確かめるのは次の点です。

  • 解約予告の期間。1〜数か月前の書面通知を求める契約が一般的です。年度の途中でやめられるかも確認します。
  • 年払いにした場合の中途解約。未経過分が返るのか、返らないのかで判断が変わります。
  • 解約時点で進行中の案件の扱い。顧問契約を終了しても、個別に依頼した事件はそのまま受任が続くのが通常です。顧問料だけ止めて事件は継続、という形になるのか、事件ごと引き継ぐのかを決めておきます。
  • 預けた書類の返還。契約書の原本、登記関係の書類、相手方とのやり取りの記録を、どの範囲で返してもらえるかを聞いておきます。
  • 利益相反の確認。自社の取引先や、将来争う可能性のある相手の顧問も務めている場合、その案件は受けられません。契約前に主要取引先の名前を伝えて、支障がないかを確認する会社もあります。

替えるときにいちばん効くのは、相談の記録が社内に残っているかどうかです。回答がすべて電話で、総務の記憶にしかないと、次の弁護士に一から説明し直すことになります。相談のたびに、日付・相談内容・回答の要旨をメールか社内の記録に残す運用にしておくと、担当が替わっても引き継げます。

稟議の通し方。月額の根拠を「件数」ではなく「止めた損失」で書く

顧問料は、成果が数字に出にくい費目です。「今月は1件も相談しませんでした」が続くと、経営から真っ先に削減候補に挙がります。稟議では、次の3つをそろえてください。

  • 直近1〜2年で、外部に相談した、または相談すべきだった案件の一覧(件数と、かかった費用または時間)
  • 顧問契約がある場合の着手金・報酬金の割引率
  • 顧問がいない場合に起きうること。新規でスポット相談を申し込むと、面談の日程調整から始まり、着手まで日数がかかります。残業代の請求書や解雇の無効を主張する通知が届いたとき、回答期限は待ってくれません。

書き方としては「月額◯万円で相談し放題」ではなく、「初動が遅れたときに増える費用と時間を抑えるための固定費」と位置づけるほうが通りやすい形です。数字を盛る必要はありません。自社で実際に確認できる件数だけを書いてください。

運用が始まったら、相談の記録を半年に一度まとめます。件数、分野、解決までの日数が並べば、次の更新のときに続けるか見直すかを事実で判断できます。記録がないと、更新のたびに同じ議論を繰り返すことになります。

まず動くことは3つです。過去の相談案件を洗い出す。社労士・税理士との線引きを1枚にまとめる。そのうえで2〜3の事務所に面談を申し込み、月額の範囲・超過単価・着手金の割引・解約予告を同じ質問票で聞き比べる。ここまでやれば、稟議はほぼ書けています。

買う前に確かめること

  • 月額に含まれる相談の時間または件数の上限と、超過時の単価を書面で確認したか
  • 契約書レビュー・内容証明・交渉・裁判対応のどこから別料金になるかを確認したか
  • 顧問契約がある場合の着手金・報酬金の割引率を、見積に明示してもらったか
  • 解約予告の期間と、年払い分の未経過返金の有無を契約書で確認したか
  • 進行中の案件がある状態で解約した場合の扱いと、預けた書類の返還範囲を決めたか
  • 社労士・税理士との担当の線引きを1枚にまとめ、社内で共有したか

候補になる分類

月額定額の企業顧問契約(相談範囲と時間上限が契約書に明記されているもの)

目安:月額3万〜10万円程度(事務所と範囲により幅があります)

相談が月に数件は発生する会社、労務のトラブルを抱えやすい業種に向きます。費用を固定費として予算化でき、着手金や報酬金の割引が付く事務所が多いのが利点です。相談がほとんど発生しない会社では、割に合わない固定費になります。

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スポット相談型(顧問契約を結ばず、案件ごとに依頼する形)

目安:相談1時間あたり1万〜3万円程度、案件ごとに別途見積

相談が年に数回あるかどうか、という規模の会社に向きます。使った分だけの支払いで済みますが、面談の予約から着手まで日数がかかることがあり、期限の迫った通知への対応には不利です。まずスポットで数件依頼し、相性を見てから顧問に切り替える進め方もあります。

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労務分野を主に扱う事務所との顧問契約(社労士との連携体制があるもの)

目安:月額3万〜10万円程度+個別案件は別途

従業員が増えて、退職や休職、ハラスメントの相談が出始めた会社に向きます。社労士と弁護士の引き継ぎ点が事務所側で整理されていると、総務が間に立って説明し直す手間が減ります。取引契約や知財が中心の会社には、別の専門性が必要です。

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よくある質問

従業員30人程度の会社に、顧問弁護士は必要ですか。

人数ではなく、相談の発生頻度と業種で決まります。直近1〜2年で外部に相談した案件、または相談すべきだったのに社内で抱えた案件を数えてみてください。年に数回以下ならスポット相談で足り、月に1件以上あるなら顧問契約の検討に入る、というのが一つの目安です。

すでに社労士と契約しています。弁護士とも契約すると二重払いになりませんか。

役割が分かれていれば二重にはなりません。手続きと就業規則の整備は社労士、相手方との交渉や法的紛争は弁護士、という分担が基本です。ただし境目の案件はあるので、契約前に両者へ「この種の案件はどちらに出すか」を確認し、社内の手順書に書いておくと迷いません。

顧問料の範囲で、どこまで契約書を見てもらえますか。

事務所によって大きく異なります。定型的な短い契約書は月額内、長文の基本契約や英文契約は別料金、という線引きがよくある形です。見積の段階で、自社で実際に使っている契約書を1通見せて「これは月額の範囲か」を確認するのが確実です。

契約した弁護士を替えたくなったら、どうすればいいですか。

まず契約書の解約予告期間を確認します。書面での事前通知を求める契約が一般的です。進行中の案件がある場合、顧問契約の終了とその案件の受任は別に扱われることが多いので、どう処理するかを先に取り決めてください。預けた書類の返還範囲も同時に確認します。

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