法人携帯の契約、台数が増える前に総務が決めておくこと
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法人携帯は「1台いくら」で決めると、あとで必ず困ります。困るのは料金ではなく、台数が増えたあとの管理と、やめるときの手続きです。この記事を読み終わると、契約先をどの型から選ぶか、契約前に社内で決めておくルールは何か、稟議に何を書けば通るかが決まります。20年分の失敗を先にお渡しします。
最初に詰まるのは料金ではなく「誰の名義で何台あるか」
法人携帯の相談で最も多いのは「もう何台契約しているのか、総務も把握できていない」という状態です。営業が増えるたびに1台、現場に1台、共用の見積り用に1台と足していくと、数年で管理台帳が現実と合わなくなります。
実務でよく起きるのが、退職者の名前のまま生きている回線です。請求は毎月来ているのに、端末は誰の引き出しにあるかわからない。これが数台あると、月額で数千円ずつ、年間では無視できない金額が漏れていきます。
もう一つは名義の混在です。創業期に社長個人の名義で契約した回線が残っていたり、支店長が自分の名義で契約して経費精算していたり。個人名義のままだと、その人が辞めたときに会社が番号を引き継げません。取引先に案内している番号だと、実害が出ます。
ですから見直しの第一歩は、価格比較ではありません。回線番号・名義・端末・利用者・用途を1枚の表にすることです。ここが埋まらないうちに新しいプランを検討しても、比較の土台がありません。表を作る過程で、たいてい「使っていない回線」が数本見つかります。それだけで元が取れることもあります。
契約先は3つの型から選ぶ:キャリア直販・代理店経由・法人向け格安SIM
契約の入口は大きく3つに分かれます。それぞれ得意な会社の型が違います。
- 大手キャリアの法人窓口(直販)…担当者が付き、故障や紛失の対応が早い傾向です。データ量の多い使い方や、通話がとても多い部署がある会社に向きます。ただし単価は高めになりがちです。
- 代理店(販売店)経由…値引きや端末セットの提案が出やすい入口です。注意点は、契約書の相手が誰かをはっきりさせることです。回線契約はキャリアと、端末の分割やオプションは代理店の系列会社と、というように契約が分かれることがあります。解約時の窓口も分かれるので、後で「そこは弊社では承れません」となります。
- 法人向けの格安SIM(MVNO=キャリアの回線を借りて提供する事業者)…月額を抑えたいときの選択肢です。データ量を社内で分け合える仕組みを持つところもあります。かわりに、故障対応は自社で手配する前提になりやすく、混雑時間帯の速度が落ちる場合があります。
選び方の目安は、通話とデータのどちらが主かです。現場からの短い連絡が中心で通話が少なければ、格安SIM系で足ります。外出先で図面や動画を扱う、テレビ会議に入る使い方があるなら、速度が安定する側を選んだほうが、結局は安く済みます。
端末代の残債とオプション、カタログの月額に出てこない費用
提案書の「1台あたり月額」は、たいてい通信料だけです。実際の支出は、そこに次のものが積み重なります。
- 端末代の分割金(多くは2年〜4年に分けて支払う形)
- 故障時の補償オプション(1台あたり月額数百円程度が一般的)
- 端末管理ツール(MDM=会社が遠隔で端末を制御する仕組み)の利用料
- ケースや保護フィルム、充電器、車載ホルダーなどの周辺品
- 紛失・破損したときの実費と、代替機を手配する手間
とくに残債は、やめるときに効いてきます。端末代を分割で払っている途中に他社へ移ると、残りが一括請求になります。台数が多いと、金額がまとまって出ます。乗り換えを検討するなら、まず「今、全台の残債合計がいくらか」を出してもらってください。口頭ではなく書面で。これを見ずに乗り換えを決めると、稟議で通した金額と実際の支出が合わなくなります。
もう一つ落とし穴があります。安さの根拠が「◯年間の割引」になっている提案です。割引が切れた後の月額を必ず聞いて、稟議書には割引後の金額も併記しておきます。数年後に自分が説明を求められます。
退職・異動のたびに起きる回収と初期化、これを誰がやるか
継続契約でいちばん人手を食うのは、契約でも支払いでもなく、人の出入りに伴う端末の処理です。
退職時にやることは、だいたいこうなります。端末の回収、私物の写真やアプリの削除、会社アカウントのログアウト、初期化、次の利用者への引き渡しか一時保管。ここを人事任せにすると、たいてい抜けます。退職の最終日は本人も周りもばたばたしていて、スマホは最後まで手元に残るからです。
現実的な対策は3つです。ひとつは、貸与時に貸与書を1枚交わすこと。端末の機種、番号、付属品、返却義務を書いて署名をもらいます。ふたつめは、退職手続きのチェックリストに「社用スマホ返却」を項目として入れ、返却の確認欄を作ること。みっつめは、遠隔で初期化やロックができる端末管理ツールを入れておくことです。連絡が取れない相手から回収できないとき、これがないと打つ手がありません。
置き場所の話も現実的です。回収した端末と充電器がどんどん増えます。鍵のかかる棚を1段確保しておいてください。古い端末は、電池が膨らむことがあります。データを消したあとの廃棄は、産業廃棄物として扱うか、下取りに出すかを先に決めておくと、期末に慌てません。
私物スマホの業務利用(BYOD)と手当支給、どちらを選ぶか
「会社で配らず、私物のスマホを使ってもらって手当を出せば安い」という案は、必ず誰かが言い出します。判断材料を整理します。
手当方式の利点は、端末代がかからないこと、退職時の回収が不要なことです。欠点は、業務の連絡先や顧客データが個人の端末に残ることです。退職後にその端末から取引先へ連絡が行っても、会社は止められません。名刺アプリや業務チャットを入れているなら、そこは真剣に考える必要があります。
また、手当は原則として給与として扱われる部分が出てきます。金額の決め方や課税の扱いは会社ごとに違うので、顧問の税理士か社会保険労務士に一度確認してください。ここを自己判断で決めると、後の税務調査で説明に困ります。
実務的な折衷案として、次のような線引きをする会社が多いです。
- 顧客の個人情報や図面を扱う職種は会社貸与
- 社内連絡だけの職種は私物利用+手当
- 通話番号を取引先に案内する必要がある人は会社貸与
全員一律にしないほうが、費用と安全のバランスは取りやすくなります。ただし、基準を文書にしておかないと「なぜあの人だけ貸与なのか」という不満が出ます。
稟議は「値下げ」より「管理できていない状態の解消」で書く
社用スマホの稟議は、単純な値下げとして書くと弱いことがあります。金額の差が小さいと「今のままでいいのでは」と返ってきます。
通りやすいのは、次の3点を並べる書き方です。
- 現状の棚卸し結果(契約◯回線のうち、利用者が特定できない回線が◯本、個人名義が◯本)
- そのまま放置した場合のリスク(退職者経由の情報流出、名義人が辞めた際に番号を引き継げない)
- 切り替え後の姿(全回線を法人名義に統一、貸与書と返却チェックの運用、月額はおおよそ現状比で◯%程度)
つまり、費用の話に「管理できていない状態を直す」という理由を足します。決裁者が気にするのは、金額よりも「あとで自分が説明を求められる事故」です。
現場の反対も先に想定しておきます。よくあるのは「今の機種が使いやすいから変えたくない」「乗り換え作業の時間が取れない」です。前者には、機種の選択肢を2種類くらい用意すると収まりやすくなります。後者には、部署ごとに切替日を分ける段階移行を提案します。全社一斉の切り替えは、総務の電話が鳴り止まなくなります。経験上、それだけは避けたほうが無難です。
契約前に決めておくこと、そして最初の1週間でやること
最後に、順番だけまとめます。
1. 棚卸し表を作る。番号・名義・端末・利用者・用途・残債。ここが出発点です。2. 使っていない回線を止める。それだけで比較の前提が変わります。3. 貸与ルールを文書にする。会社貸与の対象職種、私物利用の可否、返却の義務。4. そのうえで見積りを取る。3つの型から、少なくとも2社に同じ条件で出してもらいます。5. 契約書で、契約期間、途中解約の扱い、端末残債の扱い、番号の引き継ぎ(他社へ移せるか)、解約の申し出方法と期限を確認します。口頭説明ではなく条項で。6. 稟議は、費用比較+管理状態の改善+移行スケジュールの3点セットで出します。
運用が始まったら、最初の1週間で貸与書の署名を全員分そろえてください。あとから集めるのは、驚くほど大変です。そして半年に一度、請求書の回線数と在籍者名簿を突き合わせる時間を、カレンダーに入れておきます。30分で終わります。この30分をやっている会社は、次の契約更新のときに困りません。
買う前に確かめること
- 契約回線の一覧に、利用者不明の回線と個人名義の回線が何本あるか数えた
- 全台の端末代残債の合計を、書面で出してもらった
- 割引が終わったあとの月額を確認し、稟議書に併記した
- 貸与書と、退職時の返却チェック欄を用意した
- 解約の申し出方法と期限、番号を他社へ移せるかを契約条項で確認した
- 回収した端末と充電器を置く、鍵のかかる棚を確保した
候補になる分類
大手キャリアの法人契約(法人窓口・直販)
目安:1回線あたり月額3千〜7千円程度
外出先で大きなデータを扱う職種があり、故障や紛失の対応を早く済ませたい会社に向きます。担当者が付くため、台数が増えたときの手続きを任せやすい反面、単価は高めになりがちです。
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法人向け格安SIM(MVNO・データ量を社内で分け合える形式)
目安:1回線あたり月額千〜3千円程度
通話は短く、連絡が主な用途という会社に向きます。月額を抑えやすい一方、故障対応は自社手配になりやすく、混雑時間帯の速度が落ちる場合があるため、用途を選んで使うのが安全です。
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端末管理ツール(MDM=会社が遠隔でロック・初期化できる仕組み)
目安:1台あたり月額数百円程度
回収できない端末や紛失に備えたい会社に必要です。退職者が多い業種、顧客情報を端末で扱う業種では、貸与ルールとセットで入れておくと事故時の打ち手が残ります。
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携帯販売代理店経由の法人プラン
目安:条件により変動
端末とセットの提案や値引きが出やすい入口です。ただし回線契約とオプションの契約相手が分かれることがあるため、解約時の窓口がどこになるかを契約前に書面で確認してください。
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よくある質問
社長個人の名義で契約した回線を、会社名義に変えられますか。
多くの場合、名義変更(譲渡)の手続きで対応できますが、必要書類や手数料は契約先によって違います。番号をそのまま引き継げるかも含め、契約先の法人窓口に事前に確認してください。端末代の分割が残っていると、手続きの条件が変わることがあります。
乗り換えを検討していますが、途中解約の費用はどれくらい見ておくべきですか。
解約金そのものは以前より小さくなっている契約が増えていますが、影響が大きいのは端末代の残債です。全台分の残債合計を書面で出してもらい、その金額を稟議書に含めてください。口頭の概算だけで判断すると、実支出とずれます。
退職者から端末が返ってこないときはどうすればよいですか。
まず遠隔でロックや初期化ができる仕組みがあるかを確認し、可能なら実行します。次に回線を停止し、貸与書があれば返却の督促を書面で行います。貸与書を交わしていないと請求の根拠が弱くなるため、契約時点で1枚交わす運用にしておくのが現実的です。
私物スマホの業務利用に切り替えれば、費用は下がりますか。
端末代と回収の手間は減りますが、顧客情報が個人の端末に残る問題が残ります。手当の金額設定や課税の扱いも関わるため、顧問の税理士や社会保険労務士に一度確認してください。職種で貸与と私物利用を分ける形が、実務では扱いやすいです。