レンタルオフィス・コワーキングの法人契約、総務が申し込む前に決めること
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この記事を読むと、レンタルオフィスやコワーキングを法人で契約するかどうかを、社内で説明できる形で判断できます。判断の中心は月額の席料ではありません。「登記や郵便など会社の住所として使えるか」「月額の外にいくら積み上がるか」「やめるときに何か月前に言えばいいか」の3点です。拠点を増やすのは簡単ですが、たたむときに手間と費用が出ます。先に出口を決めてから申し込むと、後から揉めません。
まず形態を3つに分ける。混ぜると稟議が通らない
同じ「レンタルオフィス」と呼ばれていても、中身はかなり違います。社内説明で混ぜると、経営から「それは何に使うの」と言われて止まります。
- 住所だけ借りる形(いわゆるバーチャルオフィス)。執務する席はなく、住所の利用と郵便の受け取り・転送が中心です。月額はいちばん低めですが、人が働く場所ではありません。
- 共用スペースの席を使う形(コワーキング)。フリーアドレスの席を会員が共有します。法人会員プランがあり、ID単位の課金になっていることが多いです。席は確保されないのが基本で、混む時間帯に座れないことがあります。
- 施錠できる専有区画を借りる形(個室型のサービスオフィス)。自社だけの区画があり、什器と回線が最初から付いていることが多いです。月額は高めですが、通常の賃貸借より初期費用と原状回復の負担が軽い場合があります。
総務が最初に決めるのは「何年使う想定か」です。半年〜1年の暫定なら共用席や個室型、3年以上続く見込みなら通常の賃貸と費用を並べて比べる、という分け方をすると判断がぶれません。「安いから」ではなく「使う期間に対してどの形が合うか」で書くと、稟議は通りやすくなります。
登記に使えるか、郵便は誰が受け取るか
会社の住所として使う予定があるなら、席の話より先に確かめる点です。
- 登記に使えるかどうかは、施設ごとに条件が違います。プランによっては住所利用は可でも登記は不可、という設定があります。契約書と重要事項の説明で、登記利用の可否と追加料金の有無を文字で確認してください。
- 許認可が必要な事業は、別の要件がかかることがあります。人材派遣、有料職業紹介、宅地建物取引業、古物商などは、独立した区画や面積、施錠できる書類保管などを求められる場合があります。所管の窓口に先に確認するのが安全です。共用席では満たせないことがあります。
- 法人口座の開設や、取引先の与信審査で、共用住所が理由で確認を求められることがあります。開設できないと断定はできませんが、追加の説明を求められる前提で動いたほうが落ち着きます。
- 郵便の扱いは実務でいちばん詰まります。よくあるのは、転送が週1回のプランで、行政からの通知や取引先の督促に気づくのが遅れるケースです。確かめるのは、到着の連絡方法(メール通知か、スキャン画像か)、転送の頻度と送料の負担、本人限定受取や書留が受け取れるか、宅配便と大型荷物の扱いです。社会保険や税の書類は期限があります。受け取りの遅れは、そのまま延滞につながります。
月額の外に積み上がる費用を先に出す
見積書の「月額◯円/ID」だけで稟議を書くと、使い始めてから差額が出ます。確かめるのは次の費用です。
- 入会金・事務手数料。初回のみですが、ID追加のたびにかかる設定もあります。
- 保証金またはデポジット。月額の数か月分を預ける形が一般的です。返還の時期(解約から何か月後か)と、差し引かれる費目を契約書で確認してください。
- 会議室の利用料。多くは従量課金です。月に何時間までは無料、超過分は時間単位、という形が多く、来客や面接が増える月に膨らみます。採用を本格化する予定があるなら、面接の回数を見込んで試算しておきます。
- 印刷・複合機。枚数課金が普通です。契約書を大量に刷る業務があると、思ったより効きます。
- ロッカー、郵便転送、法人登記オプション、ドロップインの追加利用、専用回線やIPアドレス、来客対応の受付代行。どれも単体では小さいですが、合計すると席料と同じくらいになることがあります。
稟議には「月額の合計」ではなく「1年間の想定総額」を書いてください。オプションを含めた年額で見ると、通常の小規模オフィスを借りる場合との比較ができます。
やめるときに詰まる。解約予告と値上げ条項
継続契約は、入るときより出るときに手間が出ます。申し込む前に、解約の条件を読んでおいてください。
- 最低契約期間(ロックイン)があるか。期間内に解約すると、残りの期間分の支払いを求められる設定があります。
- 解約予告の期間。月単位の契約でも、1〜数か月前の書面通知を求める施設があります。しかも「予告した月の末日まで」ではなく「予告から◯か月後の末日まで」と数えることがあり、1日ずれると1か月分増えます。社内の意思決定にかかる時間を足して逆算してください。
- 自動更新の有無と、更新時の料金改定条項。共用オフィスは相場で料金が動きます。更新のたびに値上げの通知が来る前提で、更新月をカレンダーに入れておきます。
- 原状回復の範囲。個室型でも、什器の追加や配線工事をしていると請求が出ます。壁面への掲示や表札の扱いも確認します。
- ICカードや鍵の返却。未返却は実費請求になります。退職者が持ったままになりやすいので、カードの貸与台帳を最初から作っておきます。
- 登記に使っていた場合、解約後に本店移転の登記が必要です。登録免許税と、司法書士に頼む場合の報酬がかかります。名刺、ホームページ、取引先への届出、各種契約の住所変更も発生します。この「たたむ費用」を申し込み時点で見積もっておくと、後で経営に説明できます。
情報管理と、社内の不公平への備え
共用空間を使うと、総務の責任範囲が広がります。カタログには書かれませんが、実務で必ず出る点です。
- 会話が漏れます。共用席で採用面接や人事の相談、与信の話をするのは避ける前提で運用ルールを作ります。個人情報を扱う業務は共用席で行わない、と文書で決めておくと説明が早いです。
- 画面と紙。背後から見える席で給与や契約書を開かない、紙は持ち込まない、席を離れるときは必ず施錠する。プライバシーマークやISMSを取得している、または取得を検討している会社では、審査で共用拠点の管理状況を問われることがあります。施錠書庫の有無、シュレッダーの扱い、ごみの廃棄方法を先に決めてください。
- ネットワーク。共用Wi-Fiを業務に使う場合の条件(VPNの必須化など)を情報管理の担当と決めます。
- 社内の不公平。一部の社員だけが使える拠点は、必ず「自分たちも使いたい」という声が出ます。誰が、どの条件で使えるかを先に書いておくと、運用が荒れません。あわせて、拠点への移動が通勤手当の対象になるのか、旅費交通費の精算になるのかを決めます。ここを曖昧にすると、精算のたびに判断が分かれます。テレワーク勤務の場所として使うなら、就業規則やテレワーク規程に勤務場所として書き足せるかを、社労士に確認しておくと安全です。
申し込む前にやる順番
手順にすると、次の流れになります。
1. 使う目的を1行で書く。住所が欲しいのか、席が欲しいのか、来客できる場所が欲しいのか。目的が2つ以上あるなら、優先順位を決めます。
2. 使う期間を決める。半年か、1年か、3年以上か。期間によって選ぶ形態が変わります。
3. 登記・許認可・郵便の条件を確認する。登記に使うなら、可否と追加料金、解約後の移転登記の費用まで含めて見ます。
4. 1年分の総額を出す。席料だけでなく、入会金、会議室の想定時間、印刷、オプションを足します。
5. 解約の条件を読む。最低契約期間、予告の数え方、保証金の返還時期、原状回復。ここをメモにして稟議に添付します。
6. 内見する。平日の、自社が実際に使う時間帯に行きます。混雑具合、会議室の空き、通信の速さ、受付の対応は、その時間に行かないと分かりません。
7. 社内ルールを1枚作る。誰が使えるか、交通費の扱い、持ち込んではいけない書類、カードの返却。
稟議書には「月額」「年間総額」「最低契約期間と解約予告」「やめるときにかかる費用」の4つを並べてください。この4つが書いてあれば、決裁者が聞きたいことはだいたい埋まります。
買う前に確かめること
- 登記に使えるか、追加料金がかかるかを契約書の文言で確認したか
- 郵便の到着連絡と転送頻度、書留や本人限定受取の扱いを確認したか
- 入会金・保証金・会議室・印刷を含めた1年分の総額を出したか
- 最低契約期間と解約予告の数え方、保証金の返還時期を読んだか
- 使う時間帯に内見して、席と会議室の混み具合を見たか
- 誰が使えるか、交通費はどう精算するかを社内ルールに書いたか
候補になる分類
住所利用・郵便転送型のサービス(バーチャルオフィス)
目安:月額数千円〜2万円程度
登記用の住所と郵便の受け取りだけが目的で、執務場所は自宅や既存オフィスで足りる会社に向きます。ただし登記可否、許認可要件、法人口座開設時の確認は事前に詰める必要があります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
コワーキングの法人会員プラン(ID課金・席共有型)
目安:1IDあたり月額1万〜4万円程度
外勤や在宅勤務の社員が立ち寄る場所として使う会社に向きます。席が確保されない形が多いため、使う時間帯の混雑と会議室の空き状況を内見で確かめてから決めます。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
個室型サービスオフィス(施錠できる専有区画)
目安:1席あたり月額4万〜10万円程度
少人数の拠点を短期間で立ち上げたい、来客や面接を行う、書類を保管するといった用途がある会社に向きます。通常の賃貸借より初期費用は軽めでも、最低契約期間と解約予告が長い場合があります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
本店の登記をレンタルオフィスの住所にしても問題ありませんか
施設が登記利用を認めているかがまず前提で、プランによって可否と追加料金が分かれます。あわせて、許認可が必要な事業では独立区画や面積の要件がかかることがあるため、所管の窓口に先に確認してください。解約時には本店移転の登記が必要になり、登録免許税や専門家への報酬が発生します。
月額が安く見えるのですが、通常の賃貸オフィスとどう比べればいいですか
席料だけでなく、入会金、保証金、会議室の従量料金、印刷、オプションを足した1年間の総額で比べてください。賃貸側は敷金、内装工事、什器、回線工事、原状回復を含めて同じ期間で並べます。使う期間が短いほど共用型が有利になりやすく、長くなるほど差は縮まる傾向があります。
解約予告は月末に言えば翌月末で終わりますか
契約書の数え方によります。「予告の翌月末まで」の施設もあれば、「予告から数か月後の末日まで」と定める施設もあり、1日の違いで1か月分増えることがあります。社内の決裁にかかる日数を足して逆算し、更新月と予告期限をカレンダーに入れておくのが安全です。