オフィスの選びかた

中小企業の総務が決裁する「契約」と「買いもの」を、実際に決裁した側の目線で選ぶための記録。

電子契約サービスの導入、やめるときに困らないため総務が契約前に確かめること

2026-08-31 電子契約契約管理電子帳簿保存法稟議総務

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この記事を読み終えると、電子契約サービスの見積もりを前にして「何を追加で聞けばいいか」が決まります。判断の分かれ目は料金ではありません。どの契約書を電子にするか、相手が応じなかったらどうするか、そして解約したときに過去の契約書がどうなるか。この3つです。20年総務をやってきて、継続契約は入口より出口で困ると何度も見てきました。

最初に決めるのは製品ではなく「どの契約書を電子にするか」

見積もりを取る前にやることがあります。自社が年間に何通の契約書を交わしているか、その内訳を数えることです。

多くの会社で、契約書の大半は同じ種類に偏っています。よくあるのは次のあたりです。

  • 雇用契約書、労働条件通知書(従業員数と同じだけ毎年発生する)
  • 業務委託契約書、発注書
  • 秘密保持契約書(NDA。取引を始める前に交わす、情報を外に出さない約束)
  • 賃貸借契約、リース契約(相手が大手で、先方の紙の様式に従うことが多い)

数えてみると、電子化して効果が出るのはたいてい上の2つです。雇用契約と業務委託は自社が発行側なので、こちらの都合で方式を決められます。逆に賃貸借やリースは相手が様式を持っているので、こちらが電子契約を導入しても紙のままになりがちです。

ここを数えずに「全社の契約を電子化します」と稟議に書くと、導入後に「思ったほど紙が減っていない」と言われます。年間の総通数のうち、おおよそ何割が電子に乗るのか。その見込みを先に出しておくと、後で数字の説明に困りません。

立会人型と当事者型、違うのは値段ではなく責任の置き所

電子契約には大きく2つの方式があります。用語が難しいので言い換えます。

  • 立会人型(事業者署名型)…サービス会社が「この人がメールで承諾しました」と記録する方式。相手はメールのリンクを開いて押すだけで、事前の登録も専用の証明書も要りません。導入が速く、費用も抑えめです。
  • 当事者型(電子署名型)…契約する本人が電子証明書(本人であることを証明する電子的な身分証)を取得して署名する方式。本人確認の強さは上ですが、相手にも証明書を用意してもらう必要があり、手間と費用がかかります。

実務では、社内の契約の大半は立会人型で足ります。金額が大きい契約や、後で争いになりやすい契約だけ当事者型や紙を残す、という使い分けをしている会社が多いはずです。

注意したいのは、法務や役員から「立会人型は法的に弱いのでは」と質問が出る点です。ここは総務が単独で答えず、顧問弁護士や社労士に一度見解をもらっておくと稟議が早く進みます。「専門家に確認済み」の一行があるかどうかで、決裁の速さが変わります。

料金表に出てこない費用を、見積もり時点で全部聞く

月額いくら、という表示だけを見て比較すると後で足が出ます。契約前に確認しておきたい費用は次のとおりです。

  • 送信1件ごとの従量課金があるか。月額に何件まで含まれるか。超過分の単価はいくらか
  • ユーザー(送信できる社員)の数で課金されるか。閲覧だけの人は無料か
  • 保管している契約書の件数や容量で追加費用が発生するか
  • タイムスタンプ(その時刻に存在したことを証明する仕組み)が標準か、有料オプションか
  • 他システムとの連携、電子帳簿保存法対応の検索機能、権限設定の細かい設定などが上位プランのみか

特に見落としやすいのが送信件数の偏りです。入社が集中する時期や、期末の発注更新で送信が一気に増えます。年間の平均で契約すると、繁忙月に超過課金が出ます。月別の見込み通数を出して、ピーク月で当ててみてください。

あわせて、印紙税がかからなくなる分を試算しておくと稟議で効きます。ただし「年間◯万円削減」と断定して書くと、通数が変わったときに責任を問われます。前年実績をもとにした概算である旨を必ず添えるのが安全です。

解約するときの取り出し方を、入るときに書面で確認する

ここが本題です。電子契約は、契約書という会社の資産をサービス会社のサーバーに預ける行為です。やめるときにどう返してもらえるかを、入る前に確かめてください。

聞くべきことは次のとおりです。

  • 解約後、過去の契約書を一括でダウンロードできるか。1件ずつしか落とせない仕様ではないか
  • ダウンロードしたPDFに、誰がいつ合意したかの記録(署名情報や証跡ログ)が残るか。ただの見た目だけのPDFになっていないか
  • 解約後、データを閲覧できる猶予期間がどれくらいあるか。過ぎると消されるのか
  • データ移行を頼んだ場合の作業費がかかるか
  • 最低契約期間と、自動更新の解約予告期限(更新日の何か月前までに申し出るか)

契約書は法定の保存期間があるものが多く、契約終了後も長く持ち続ける必要があります。サービスをやめた瞬間に読めなくなると、後で監査や係争の場面で困ります。

実務上のコツを一つ。導入直後に、テストで交わした契約書を1件ダウンロードして、社内の共有フォルダで開いてみてください。この動作確認を初月にやっておくと、数年後の解約時に慌てません。

相手が応じない・社内が反対する、この2つは必ず起きる

導入して最初に来る問い合わせは、機能の話ではありません。「取引先が紙でくれと言っている」です。

相手方の事情はさまざまです。社内規程で紙の押印しか認めていない、担当者がメールのリンクを開けない、迷惑メールフォルダに入って気づかれない。どれもよくあります。ですから紙の運用は残す前提で設計してください。全廃を目標にすると現場が疲れます。

社内の反対も想定しておきます。よく出るのは次の3つです。

  • 「押印がなくなると誰が承認したか分からなくなる」…社内の承認は既存のワークフローで残す、と分けて説明します
  • 「PCが苦手な社員が使えない」…送信は総務など一部の担当だけに絞り、他の社員は受け取るだけにする運用が現実的です
  • 「過去の紙はどうするのか」…原則そのまま保管庫に残します。遡ってスキャンし直すと工数が跳ね上がります

もう一つ、地味に効くのが担当者アカウントの管理です。送信者アカウントに契約書が紐づく仕様だと、その人が退職したときに引き継ぎが要ります。部署共有のアドレスで運用できるか、契約前に確認しておくとよいです。

稟議は「削減額」ではなく「止まらない仕組み」で通す

稟議書に金額削減だけを書くと、経営から「その程度なら今のままでいい」と言われがちです。数字より効くのは、業務が止まらなくなるという説明です。

書き方の型としては、現状の困りごとを具体的に並べます。たとえば、押印のために出社が必要、郵送で往復に数日かかる、入社日までに雇用契約書が返ってこない、原本が見つからず探すのに半日かかる。こうした具体例は、決裁者も経験しているので通りやすいです。

そのうえで、次の3点を必ず添えてください。

  • 電子帳簿保存法への対応方針(電子で受け取った契約書は電子のまま保存する必要があるため、今の共有フォルダ運用のままでは検索要件を満たさない可能性がある、という説明)
  • 専門家に方式の妥当性を確認した旨
  • 解約時のデータ取り出し方法を確認済みである旨

最後に進め方です。まずは雇用契約や秘密保持契約など、自社発行で数の多い1種類だけを対象に、無料期間や最小プランで数か月試します。そこで通数と手間を実測してから、本契約の規模を決めます。最初から全社一斉に広げないこと。これが一番の失敗回避策です。

買う前に確かめること

  • 年間の契約通数と種類の内訳を数え、電子に乗る割合を出したか
  • 月額に含まれる送信件数と、超過時の単価を確認したか
  • 繁忙月のピーク通数で料金を試算したか
  • 解約後に過去の契約書を一括ダウンロードできるか書面で確認したか
  • 最低契約期間と自動更新の解約予告期限を控えたか
  • 送信者アカウントを部署共有で運用できるか確認したか

候補になる分類

立会人型(メール認証方式)の電子契約サービス

目安:月額数千円〜数万円程度(送信件数で変動)

取引先に登録や証明書の準備を求めずに始められるため、相手先の数が多い会社や、まず雇用契約と秘密保持契約から試したい会社に向きます。導入の負担が軽く、社内教育も短くて済みます。

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当事者型(電子証明書方式)に対応した電子契約サービス

目安:月額数万円〜+証明書費用

金額の大きい契約や、後で争いになったときの立証を重く見る会社に向きます。相手方にも準備を求めるため、取引先が限られている会社や、グループ会社間の契約が中心の場合に現実的です。

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契約書の保管・検索機能を備えた契約管理型サービス

目安:月額数万円〜

契約件数が多く、更新期限の管理や過去契約の検索に困っている会社に向きます。電子帳簿保存法の検索要件を意識した機能があるかどうかで、経理部門の負担が変わります。

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既存のワークフロー・人事システムと連携できるタイプ

目安:月額数万円〜(連携オプション別途)

社内承認は今の仕組みを残したい会社、入退社手続きで書類を大量に出す会社に向きます。連携が上位プランや別料金になっていることが多いので、見積もり段階で切り分けて確認してください。

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申し込み先

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KANBEI SIGN(電子契約)

株式会社Wiz

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よくある質問

電子契約にすると印紙税はかからなくなりますか。

電子データでやり取りする契約については、印紙税がかからないとする扱いが一般的です。ただし、印刷して紙で交付した場合の取り扱いなど、判断が分かれる場面もあります。金額が大きい契約は税理士に個別に確認したうえで、稟議には概算である旨を添えて書くのが安全です。

取引先が電子契約に応じてくれない場合はどうしますか。

紙の運用を並行して残すのが現実的です。相手の社内規程で紙が必要なケースは一定数あり、こちらの都合では変えられません。自社が発行側になる契約から電子に寄せて、相手が様式を持っている契約は紙のままにする、という線引きを最初に決めておくと現場が混乱しません。

解約したら過去の契約書は消えてしまいますか。

サービスによって扱いが異なります。一定の猶予期間を置いてから削除される例が多いですが、期間も一括ダウンロードの可否も一律ではありません。契約前に、解約後のデータ取り出し方法と保存期間を書面で確認し、導入初月にテスト用の契約書を実際に落として開けるか試しておいてください。

小さい会社でも電子帳簿保存法への対応は必要ですか。

電子でやり取りした契約書や請求書は、電子のまま保存する必要があるという考え方が基本です。会社の規模に関係なく発生します。共有フォルダに入れておくだけでは検索の要件を満たさない可能性があるため、対応方針を顧問税理士に一度確認しておくことをおすすめします。

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