役員の任期と変更登記、総務が司法書士に頼む前に確かめること
この記事には広告(Amazonアソシエイトのリンク)が含まれます。
この記事を読むと、自社の登記をいつ・誰に・いくらで頼むかを、社内で説明できる形で決められます。判断の中心は司法書士の報酬額ではありません。「自社の役員の任期が何年か」「次の改選はいつか」「登記のあとに続く届出を誰が出すか」の3点です。登記そのものは数万円の話ですが、忘れたときに困るのは会社ではなく代表者個人です。逆に言えば、この3点を先に押さえておけば、あとは定型作業として回せます。
登記は「変わってから」動くと遅い。期限はおおむね2週間
役員が代わった、本店を移した、商号を変えた。こうした登記事項の変更は、原則として変更があった日からおおむね2週間以内に申請することとされています。期限を過ぎても登記自体は受け付けられますが、代表者個人に対して過料(行政上の制裁金)が科されることがあります。会社宛ではなく、代表者の自宅に裁判所から通知が届く形になるため、「総務が知らなかった」では収まりません。
実務で詰まるのは、期限そのものではなく、その手前の段取りです。役員変更なら株主総会の決議が要ります。取締役会を置いている会社なら取締役会の決議も必要です。議事録を作り、就任承諾書や印鑑証明書を集め、司法書士に渡し、申請して完了するまでに日数がかかります。
- 起算日は「決議の日」。就任日から数え始める
- 議事録の日付は、あとから都合よく作れない前提で動く
- 書類集めと申請完了までの日数を含めて逆算する
つまり、就任日が決まった時点で動き出すのが正しい順序です。
任期を10年にした会社ほど、改選を忘れます
取締役の任期は原則2年、監査役は原則4年とされていますが、株式に譲渡制限がある会社(いわゆる非公開会社)は、定款で最長10年まで伸ばせる扱いになっています。設立時に「手続きの手間が減るから」と10年にしている中小企業は多くあります。問題は、10年後に社内の誰も覚えていないことです。
役員の顔ぶれが変わらなくても、任期が満了すれば重任(同じ人が続けて就任すること)の登記が必要です。これを放置すると、登記簿上は任期切れのままになります。最後の登記から長期間(おおむね12年とされています)動きがない株式会社には法務局から通知が届き、応答しなければ解散したものとみなされる扱い(みなし解散)があります。復活の手続きは可能ですが、余計な費用と時間がかかります。
- 自社の定款を現物で確認し、取締役・監査役の任期を控える
- 登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)で直近の就任日を確認する
- 次の改選年を、総務の年間予定表と引き継ぎ書の両方に書く
「定款がどこにあるか分からない」という状態も珍しくありません。その場合は、まず原本の所在確認から始めてください。
自社で申請するか、司法書士に頼むか
費用の内訳は、おおまかに三つに分かれます。法務局に納める登録免許税、司法書士の報酬、そして実費(証明書の取得費や郵送代)です。登録免許税は法律で決まっており、役員変更なら資本金の額に応じて1万円または3万円程度、本店移転は移転先の管轄によって金額が変わるとされています。最新の額は法務局の案内で確認してください。司法書士の報酬は数万円程度が目安ですが、事務所と案件の内容で幅があります。
自社で申請すること自体は可能です。ただし、記載に不備があると補正(修正の指示)がかかり、法務局とのやり取りが繰り返されます。オンライン申請には電子証明書の準備が要ります。年に一度あるかないかの作業のために手順を覚え直すより、外に出したほうが結果的に安いことは多いです。
ここで誤解されやすい点がひとつあります。登記申請の代理ができるのは司法書士(および弁護士)で、税理士は代理できません。顧問税理士から司法書士を紹介してもらう形は一般的ですが、「税理士にまとめて頼んでいるつもりだった」という思い込みは危険です。誰が登記を出すのかを、契約の形で確認してください。
書類で止まるのは、印鑑証明と本人確認
役員変更の登記では、議事録のほかに次のような書類が求められます。内容は会社の機関設計(取締役会の有無など)によって変わります。
- 新任役員の就任承諾書
- 新任役員の本人確認証明書(住民票の写しなど)
- 代表取締役などの印鑑証明書
- 株主リスト(議決権の多い株主を記載したもの)
ここで時間を食うのが印鑑証明書です。発行から一定期間内(おおむね3か月以内)のものを求められることが多く、古いものは使えません。役員が遠方に住んでいる、非常勤の親族役員がいる、といった場合は、取り寄せだけで1〜2週間かかることがあります。実印を登録していない役員がいると、市区町村での印鑑登録から始めることになります。
代表取締役が辞任する場合は、辞任届に実印の押印と印鑑証明書の添付が必要になる場面があります。円満でない辞任のときほど、ここで書類が揃わず止まります。関係が悪くなる前に書類をもらう、という段取りの問題です。
ついでに棚卸しする登記事項と、代表者の自宅住所
登記を依頼するときは、変更したい1件だけでなく、登記事項全体を見直すと効率的です。同時に申請すれば、司法書士の報酬や実費がまとめられることがあります。
- 本店の所在場所(移転後も旧住所のままになっていないか)
- 商号、目的(実態と合っているか)
- 代表者の自宅住所(引っ越していれば、それも登記事項です)
- 支店、公告方法、株式の譲渡制限に関する定め
見落とされやすいのが代表者の住所変更です。会社の話ではないと思われがちですが、登記事項であり、変更登記が必要です。なお、代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書に表示しない措置が設けられています。要件や申出の方法は法務局で確認してください。
目的(事業目的)も確認しておく価値があります。許認可の申請、銀行の融資審査、補助金の申請などで、登記簿の目的欄を見られることがあります。実際に始めた事業が目的に入っていないと、その場で止まります。
登記が終わってからの届出が、総務の本番
登記完了は折り返し地点です。そこから先の届出を出し忘れると、あとで郵便が届かない、口座が動かせない、といった形で表に出ます。登記の種類によりますが、確認する先は次のあたりです。
- 税務署、都道府県税事務所、市区町村への異動届
- 年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク(代表者や所在地の変更)
- 取引銀行(届出事項の変更。来店や印鑑証明書が必要なことが多い)
- 許認可の官庁(建設業、宅建業、派遣、古物、運送など)
- 法人カード、電子契約サービス、GビズID、リース契約の名義
- 印鑑カード、ゴム印、名刺、封筒、ウェブサイトの会社概要
注意したいのは、許認可の変更届の期限が登記より短い場合があることです。登記の完了を待っていると間に合わないこともあるため、許認可を持っている会社は、先に所管の窓口へ必要書類と期限を確認してください。
稟議では「登記費用」だけでなく、この後続作業にかかる手間と、ゴム印や封筒の刷り直し費用も一緒に書いておくと、あとで追加の決裁を取らずに済みます。
で、どうすればいいか
やることは四つです。
第一に、定款と登記事項証明書を取り出して、取締役・監査役の任期と直近の就任日を確認します。登記事項証明書はオンラインでも請求でき、費用は1通あたり数百円程度です。
第二に、次の改選年を年間予定表に書き込みます。任期10年の会社ほど、ここが唯一の防波堤になります。担当者が交代しても残るよう、個人のカレンダーではなく引き継ぎ書に書いてください。
第三に、司法書士から見積を取るときは、「報酬」「登録免許税」「実費」の内訳で出してもらいます。総額だけの見積は、他社と比べられません。顧問契約を結ぶ必要は多くの場合なく、案件ごとのスポット依頼で足ります。
第四に、登記後の届出先を一覧にして、社内の手順書に残します。次に役員が代わるときも、同じ紙が使えます。
登記は、やり方を覚える仕事ではなく、忘れない仕組みを作る仕事です。
買う前に確かめること
- 定款の原本を確認し、取締役と監査役の任期年数を控えたか
- 登記事項証明書で直近の就任日と次の改選年を確認したか
- 役員全員の実印登録と印鑑証明書の取り寄せ日数を確認したか
- 見積を報酬・登録免許税・実費の内訳で出してもらったか
- 許認可の変更届の期限が登記より短くないか所管に確認したか
- 登記後の届出先と印刷物の刷り直しを一覧にして稟議に入れたか
候補になる分類
司法書士へのスポット依頼(商業登記の申請代理)
目安:報酬3万〜10万円程度+登録免許税・実費
年に数回しか登記が発生しない会社向けです。顧問契約にせず、役員変更や本店移転のたびに見積を取る形で十分回ります。許認可の変更届まで対応できるかを、依頼前に確認してください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
登記事項証明書・登記情報のオンライン請求(法務局系サービス)
目安:1通あたり数百円程度
自社の登記内容を確認するだけなら、窓口に行かずに取得できます。改選年の確認や、取引先の実在確認にも使えます。総務の担当者が使えるように、利用者登録だけ先に済ませておくと動きやすくなります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
法人用の印鑑セット(代表者印・銀行印・角印)
目安:1万〜3万円程度
商号変更や代表者交代のときに、印鑑の作り直しが発生します。法務局への改印届とセットで考える必要があるため、届出の予定日から逆算して発注してください。素材や彫り方で納期が変わります。
重要書類用の耐火金庫(定款・印鑑・証明書の保管)
目安:3万〜15万円程度
定款の原本や印鑑カードの所在が分からない会社は珍しくありません。保管場所を一か所に決め、鍵の管理者を明文化しておくと、登記のたびに探し回らずに済みます。設置場所の床の耐荷重も確認が必要です。
よくある質問
役員の顔ぶれが変わらなければ、登記は要りませんか。
任期が満了すれば、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要です。登記簿上の任期が切れたまま放置されると、長期間動きのない会社として、みなし解散の手続きの対象になることがあります。まず定款で任期を確認してください。
顧問税理士にまとめてお願いできますか。
登記申請の代理ができるのは司法書士と弁護士で、税理士は代理できません。顧問税理士から司法書士を紹介してもらう流れは一般的です。誰が申請するのかを、見積の段階ではっきりさせてください。
期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか。
気づいた時点で申請するのが先です。期限を過ぎても登記はできます。遅れた期間などに応じて代表者個人に過料が科されることがあり、放置するほど不利になりやすいため、司法書士に状況を伝えて早めに進めてください。
登記費用は会社の経費にできますか。
会社の登記にかかる登録免許税や司法書士報酬は、通常は会社の費用として処理されます。勘定科目の扱いは顧問税理士に確認してください。見積を報酬・登録免許税・実費に分けておくと、経理の処理が早くなります。