ハラスメント相談窓口の外部委託、総務が契約前に決める受付後の流れ
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この記事を読むと、ハラスメント相談窓口を外部に委託するか社内で持つかを、料金ではなく「受け付けたあと誰が何をするか」で判断できるようになります。外部委託でラクになるのは受付までで、その先の調査と処分は会社に残ります。ここを決めずに契約すると、最初の一件で止まります。契約前に紙にしておく項目と、やめるときに詰まる点をまとめました。
外部に出せるのは「受け付けるところまで」です
パワーハラスメント防止のための措置は、中小企業も含めて事業主に求められています。その中に相談窓口の設置が含まれるため、「窓口を外に置けば対応が終わる」と考えて見積もりを取る会社が少なくありません。
ただ、外部窓口サービスの多くが引き受けるのは、相談の受付と、内容を整理した報告書の提出までです。事実確認のための聞き取り、加害者とされた人への対応、配置転換や懲戒の判断は、原則として会社が行います。ここを委託範囲に含められるサービスもありますが、別料金であることが一般的です。
契約前に見るのは、提案書の表紙ではなく業務範囲の条文です。
- 受付の手段(電話・メール・Webフォーム・面談のどれか)
- 受付できる時間帯と、時間外の扱い
- 報告書が会社に届くまでの目安日数
- 緊急性が高い相談(自傷のおそれ、暴力)のときの連絡先と手順
- 調査や面談を頼む場合の追加費用
よくあるのは、受付記録が月次でまとめて届く契約になっていて、深刻な相談を会社が知るのが数週間後だった、という形です。「重大と判断したものは即時連絡」の基準が書かれているかを確かめてください。
料金の形を見る ─ 従業員数課金と最低契約期間
相談窓口サービスの料金は、月額固定、従業員数に応じた単価、相談1件ごとの従量、この組み合わせが多く見られます。従業員10〜100人規模なら、月額で数千円台から数万円程度に収まる提案が中心ですが、金額よりも「増えたときにどう上がるか」を見るほうが大事です。
確かめるのは次の点です。
- 従業員数は契約時点の固定か、毎年見直しか
- パート・アルバイト・派遣社員を人数に含めるか
- 相談件数に上限があるか。超えた分の単価はいくらか
- 面談(対面・オンライン)は月額に含まれるか、都度課金か
- 年1回の報告会や研修がセットの場合、それは必要か
最低契約期間も要確認です。1年契約の自動更新で、解約予告が満了の数か月前まで、という設定は珍しくありません。初年度は相談ゼロで終わることもあり、「使わなかったからやめる」と言いにくい空気が社内に出ます。
稟議では、金額の安さより「義務とされている措置への対応」「社内の人間に言いにくい相談の受け皿」という目的で書くほうが通りやすい傾向があります。件数で費用対効果を測る設計にすると、来年の更新で説明に困ります。
受付後の流れを、契約前に1枚の紙にする
いちばん詰まるのは、報告書が届いたあとです。誰が開封し、誰に共有し、いつまでに何をするか。これが決まっていないと、総務の机の上で数日止まります。
契約前に、次を1枚にまとめておきます。
- 報告書の受領者(役職で指定。個人名だけにしない)
- 受領者が不在のときの代理
- 社長・役員にいつ上げるか(全件か、重大なもののみか)
- 事実確認を誰が行うか(社内の誰か、社労士、弁護士)
- 相談者への途中経過の連絡を、いつ・誰が行うか
- 記録の保管場所と、見られる人の範囲
ここで問題になりやすいのが、相談対象に役員や社長が含まれる場合です。通常ルートで報告すると、本人に筒抜けになります。外部窓口を入れる意味の大半はここにあるので、「対象者が経営層の場合は社外役員または顧問弁護士へ直接」といった別ルートを、契約と同時に社内規程へ書き込んでおきます。
この紙があると、稟議書の添付資料にもなります。「窓口を外注する」ではなく「受けたあとの手順まで整える」と書けるため、決裁が速くなります。
匿名希望と記録の扱いを、先に決めておく
相談者が名前を伏せたいと言うのは、よくあることです。匿名のままだと事実確認が進めにくい一方、無理に名前を出させると相談そのものが来なくなります。
契約前に、サービス側の運用を確認してください。
- 匿名での受付が可能か
- 相談者の氏名を会社に伝えるかどうかを、相談者本人が選べるか
- 会社に伝える範囲(氏名のみ、所属まで、発言の原文まで)をどう区切るか
- 相談者が「会社には伝えないでほしい」と言った場合の扱い
記録の保管も確かめます。相談記録は個人情報であり、ハラスメント以外の機微な内容(健康状態、家庭の事情)が含まれることがあります。委託先での保管年数、保管場所、アクセスできる担当者の範囲、契約終了後の削除方法を、契約書か仕様書の記載で確認します。口頭の説明だけで済ませないことです。
あわせて、不利益取扱いの禁止を就業規則または規程に明記します。相談したことを理由に評価を下げない、という一文があるかどうかで、窓口が使われるかどうかが変わります。
周知していない窓口は、使われないまま更新されます
契約して安心し、周知が朝礼の一言で終わる。これが最も多い失敗の形です。相談しようとする人は、追い詰められた状態で電話番号を探します。思い出せる場所になければ、使われません。
周知で効きやすいのは、次のような地味な手段です。
- 入社時の書類に、窓口の連絡先を1枚入れる
- 給与明細の配布物や社内ポータルの固定位置に常時掲示する
- トイレや休憩室など、人目を気にせず見られる場所に小さく貼る
- 財布に入るサイズのカードを全員に配る
「誰に知られずに連絡できるか」を明記することも大切です。会社に名前が伝わるのか、上司に知られるのか。そこが書かれていないと、番号を知っていても押せません。
また、管理職への説明も分けて行います。部下から相談を受けた管理職が「まず自分で解決しよう」と抱え込むと、窓口に届きません。受けたら必ず窓口か総務に回す、という一本の線を引いておきます。年1回、窓口の存在を再告知する月を決めておくと、運用が続きます。
やめるとき・乗り換えるときに残るもの
継続契約は、入るときより終わるときに手間が出ます。相談窓口も同じです。
解約・乗り換えの前に確かめるのは次の点です。
- 解約予告の期間と、通知の方法(書面かメールか)
- 自動更新の有無と、更新日
- 対応中の案件がある場合、いつまで受け付けてもらえるか
- これまでの相談記録を会社が受け取れるか、形式は何か
- 受け取らない場合、委託先での削除がいつ行われるか
記録の引き継ぎは慎重に扱います。すべてを会社が引き取ると、匿名で相談した人の前提が崩れることがあります。件数と傾向だけを統計として受け取り、個別記録は委託先で削除する、という分け方も選択肢です。どちらにするかは、契約時に決めておくほうが揉めません。
切り替え当日に窓口の番号が変わることも忘れられがちです。掲示物、入社書類、社内ポータル、名刺サイズのカード。差し替え対象を一覧にしてから解約日を決めると、空白期間が出ません。
で、どうすればいいか
順番はこうです。
1. 自社に今ある窓口を確認する。規程に書いてあるだけで実体がない場合も多いので、担当者名と連絡先が現在も有効かを見ます。2. 受付後の流れを1枚にまとめる。誰が受け取り、誰に上げ、誰が調べるか。経営層が対象のときの別ルートも書きます。3. その紙を持って、2〜3社から見積もりを取る。見るのは月額より、業務範囲・重大案件の即時連絡・匿名対応・最低契約期間・解約予告の5点です。4. 稟議書は「法令上求められる措置への対応」と「受付後の手順整備」をセットで書く。窓口費用だけを単独で出すと、件数で判断されて翌年切られます。5. 契約後、周知を実施する。掲示・配布・入社書類の3か所に入れ、年1回の再告知月を決めます。
外部委託は、相談を受ける人の負担を会社の外に出す仕組みです。判断と対応は社内に残ります。そこを引き受ける体制を先に決めてから、契約書にサインしてください。
買う前に確かめること
- 業務範囲に「重大案件は即時連絡」の基準が書かれているか確認する
- 従業員数の数え方と、パート・派遣を含むかを見積書で確認する
- 最低契約期間・自動更新・解約予告の期間を契約書で確認する
- 報告書を誰が受け取り、誰に上げるかを役職名で決めて紙にする
- 経営層が相談対象のときの別ルートを規程に明記する
- 解約時に相談記録をどう扱うかを、契約前に取り決めておく
候補になる分類
外部相談窓口サービス(電話・Web受付中心、EAP型を含む)
目安:月額数千円〜数万円程度(従業員数・受付手段による)
専門の相談員が一次受付を担い、内容を整理して会社に報告する形です。社内に言いにくい相談の受け皿が必要な会社、総務が一人で兼任していて受け止めきれない会社に向きます。メンタル不調の相談まで広く受ける型と、ハラスメントに絞った型があります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
社労士事務所・弁護士事務所が提供する相談窓口サービス
目安:顧問料への上乗せ月額数千円〜、案件対応は別途
受付だけでなく、事実確認の進め方や処分の妥当性まで相談したい会社に向きます。顧問契約があれば追加費用を抑えやすい一方、受付時間が平日日中に限られることがあります。顧問先の立場上、相談者から見て中立に見えるかは確認が必要です。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
規程整備・管理職研修とセットの導入支援
目安:一式で十数万円〜数十万円程度(研修回数による)
窓口だけ作っても、受付後の手順と不利益取扱い禁止の明文化がないと機能しません。就業規則や規程を長く触っていない会社、管理職が相談を抱え込みがちな会社は、窓口契約と同時に整えると稟議も通しやすくなります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
従業員が30人ほどで、相談が来たことがありません。それでも窓口は必要ですか。
相談件数の有無と、窓口を設けているかどうかは別の話です。事業主には相談に応じる体制を整えることが求められており、件数がゼロでも体制がなければ措置を取っていないと見られる可能性があります。使われないこと自体は悪いことではありません。周知してあるのに来ていないのか、存在を知られていないだけなのかは分けて確認してください。
社内の総務が窓口を兼ねるのでは駄目ですか。
社内窓口でも要件を満たす形はつくれます。ただし総務が人事評価や配置に関わっている場合、相談者から見て「評価に響く」と映り、使われにくくなります。社内窓口と外部窓口の両方を案内し、相談者が選べるようにしている会社もあります。費用と相談しやすさの折り合いで決めてください。
相談が来たあと、調査まで外部に頼めますか。
頼めるサービスもありますが、月額に含まれず都度の費用になるのが一般的です。聞き取りの対象人数や回数で金額が変わるため、見積もりの単価だけでも契約時に確認しておくと、いざというときに稟議で止まりません。処分の判断そのものは会社が行う点は変わりません。
契約を別の会社に切り替えるとき、過去の相談記録はどうなりますか。
契約書の定め次第です。会社が引き取る、委託先で削除する、統計情報のみ受け取る、といった選択肢があります。匿名で相談した人の前提を崩さないよう、個別記録の扱いは慎重に決めてください。切り替え時は掲示物や入社書類の連絡先差し替えも忘れずに行います。