人事評価システムの導入、総務が契約前に決める評価シートの移行と運用負荷
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この記事を読むと、人事評価システムを今入れるべきか、まだ早いかを、社内で説明できる形で判断できます。判断の中心は機能比較ではありません。「評価の制度そのものが決まっているか」「毎期まわすのは誰か」「やめるときに評価の記録を持ち出せるか」の3点です。逆に言えば、この3点が未定のまま契約すると、ツールは入ったのに評価が終わらない、という状態になりがちです。よくある失敗は、システムが悪かったのではなく、紙や表計算で回っていなかったものをそのまま載せたことです。
先に決めるのは機能ではなく、評価制度があるかどうか
人事評価システムは、評価制度を作ってくれる道具ではありません。すでに決まっている評価の手順を、集める・催促する・残す、という作業を楽にする道具です。ここを取り違えると、導入後に「で、何点つければ昇給なんですか」と現場から聞かれて止まります。
契約前に、自社で次が決まっているかを確かめてください。
- 評価の期間(年1回か、半期か、四半期か)
- 評価する人は誰か(直属の上長だけか、二次評価者を置くか)
- 評価項目(職種ごとに分けるのか、全社共通か)
- 評価の結果を何に使うか(賞与、昇給、等級、またはフィードバックのみ)
このうち「結果を何に使うか」が一番もめます。賞与や昇給に直結させると、評価は労働条件の話になり、説明の責任が重くなります。まずはフィードバックと育成の記録に限定し、処遇への反映は次の期から、という進め方を選ぶ会社もあります。どちらを選ぶかは経営判断です。総務が勝手に決める話ではないので、稟議の前に経営層に確認しておきます。
制度が未定なら、システムの契約はいったん待つほうが安全です。先に制度を決め、1期だけ表計算で回してみると、必要な機能が自社の言葉で言えるようになります。
料金は「1人いくら」ではなく「誰を数えるか」で変わる
クラウドの人事評価システムは、利用人数に応じた月額が一般的です。料金表の単価だけを見て人数を掛けると、請求額と合わないことがあります。確かめるのは次の点です。
- 数えるのは全従業員か、評価される人だけか。評価者や閲覧だけの役員もID(利用者登録)が要るのかで人数が変わります。
- 休職者、産休育休中、長期欠勤者はカウントされるか。アカウントを残したまま人数に入る契約もあります。
- パート・アルバイトを評価対象にするか。対象にすると人数が一気に増えます。
- 最低契約人数があるか。実人数が少なくても、下限の人数分を請求される形式があります。
- 人数の増減をいつ反映するか。月初の在籍数で固定か、都度反映かで、採用が多い時期の金額が変わります。
あわせて、初期費用と設定支援の費用を分けて確認します。評価シートの初期設定を提供元に頼むと別料金になることがあり、自社でやる場合は総務の工数が初期費用の代わりになります。
そして見落としやすいのが、最低利用期間です。年契約で、途中解約しても残りの期間分は支払う条件は珍しくありません。稟議書には単価ではなく「年間の支払総額(想定人数の上振れを含む)」で書いてください。単価で通すと、翌年の請求で説明に困ります。
運用で止まるのは総務ではなく、評価者です
導入後に一番詰まるのは、入力画面の使いにくさではありません。期日までに評価が集まらないことです。これは紙の時代から変わりません。システムを入れても、締切を守らない管理職は締切を守りません。
契約前に確かめたい運用の機能は次のあたりです。
- 未提出者を一覧で出せるか。誰が出していないかが一目で分かる画面があると、催促が「個人攻撃」になりにくいです。
- 自動のリマインド(催促通知)を出せるか。総務が個別にメールを書く作業が消えます。
- 差し戻しができるか。二次評価者が内容を戻す運用をするなら必須です。
- 評価の閲覧権限を細かく設定できるか。ここは事故が起きやすい部分です。他部署の評価やコメントが見えてしまうと、信頼が一度で壊れます。設定の単位(部署単位か、役職単位か)をデモで必ず見せてもらってください。
もう一つ、見積に出てこない負荷があります。評価者向けの説明です。管理職が10人いれば、操作説明と評価の付け方の説明に、短くても一度は時間を取る必要があります。導入初年度は総務の手間が減るどころか増える、と見込んでおくほうが現実的です。「2期目から楽になる」という前提で稟議を書くと、後で責められません。
過去の評価データの移行は、全部は運べないと考える
表計算や紙で残してきた過去の評価を、新しいシステムにそのまま入れられると期待すると、ほぼ外れます。確かめるのは次の点です。
- 一括で取り込めるのは何か。氏名・所属・等級・点数などの数値や区分は取り込める形式が多い一方、自由記述のコメントや面談記録は取り込めない、または1項目にまとめて入る場合があります。
- 何年分を移すか。実務では、直近1〜2期分だけ移し、それ以前は従来のファイルのまま保管、という割り切りがよく使われます。全部移そうとすると、総務の作業が数週間単位で膨らみます。
- 期の途中から始めるとどうなるか。評価期間の途中で切り替えると、前半は旧ファイル、後半は新システム、という分断が起きます。可能なら期の変わり目に合わせて契約開始日を決めます。この一点だけで、導入の手間がかなり変わります。
移さない過去データの保管ルールも、同じタイミングで決めてください。評価の記録は個人情報であり、誰が見られるファイルサーバーに置くのか、何年で廃棄するのかを決めておかないと、担当者が代わったときに所在が分からなくなります。
やめるときに持ち出せる形を、入る前に確認する
継続契約は、入るときより、やめるときに詰まります。人事評価のデータは、昇給や賞与の根拠として後から参照されることがあり、退職者とのやり取りで必要になる場合もあります。解約したら消えました、では済みません。
契約前に、次を書面(契約書・利用規約・サービス仕様書)で確認してください。
- 解約予告はいつまでか。更新日の1〜3か月前、といった定めが多く、過ぎると自動更新になります。更新日は契約時にカレンダーへ登録します。
- データの出力形式は何か。CSV(表計算で開ける形式)やPDFで出せるか、出せるのは数値だけか、コメントや面談記録も含むか。
- 出力は自社の操作でできるか、提供元への依頼作業(有料)か。
- 解約後にデータを閲覧できる猶予期間はあるか。即日停止なら、解約の前に出力を済ませる段取りが要ります。
- 保管しているデータの削除証明を出してもらえるか。
デモの段階で「試しに1件、出力してみせてください」と頼むのが確実です。画面で見えることと、出力できることは別です。出力したファイルを開いて、評価コメントが残っているかまで見てください。ここを確認せずに契約すると、乗り換えのときに手入力でやり直すことになります。
稟議は「評価の見える化」ではなく、具体の困りごとで書く
稟議が通りにくいのは、目的が抽象的なときです。「人事評価を見える化する」では、経営から「今のままでいいのでは」と返ってきます。通りやすいのは、現に起きている詰まりを数で書く形です。
- 評価シートの回収と督促に、毎期どれくらいの時間がかかっているか(自社で記録を取れば書けます)
- 提出期限に遅れた評価者の人数と、賞与計算が後ろ倒しになった日数
- 過去の評価を探すのに、どのフォルダを何か所見たか
こうした数字は、自社で確かめられるものだけを書きます。提供元の資料にある「削減率」は、他社の前提での数字です。稟議に転記すると、根拠を聞かれたときに答えられません。
書き方の型としては、次の順が通しやすいです。目的(何が困っているか)、やらない場合に起きること、年間の支払総額(人数の上振れを含む)、初年度の総務の工数、やめるときの条件、試用の期間と判断の時期。最後の「いつ見直すか」を自分から書くと、決裁者は承認しやすくなります。
進め方としては、まず制度の中身を固める、次に1期を今の方法で回して必要な機能を洗い出す、それからデモで出力まで確認して契約する、という順番が安全です。ツールが先、制度が後、の順にしないことが一番の分かれ目です。
買う前に確かめること
- 評価の期間・評価者・項目・結果の使い道が、文書で決まっているか
- 課金の対象人数に休職者やパート、閲覧だけの役員が含まれるか確認したか
- 最低契約人数と最低利用期間、途中解約時の残額の扱いを書面で読んだか
- 未提出者の一覧とリマインド、閲覧権限の設定をデモで実際に見たか
- 過去データは何期分を移すか、移さない分の保管場所と廃棄時期を決めたか
- 解約予告の期限と、データ出力の形式(コメントが残るか)を試しに確認したか
候補になる分類
クラウド型の人事評価システム(目標管理・評価シート配布に対応するもの)
目安:1人あたり月300〜1,000円程度+初期費用(人数条件により変動)
評価制度がすでに決まっていて、回収と督促の手間だけを減らしたい会社に向きます。評価者が10人を超えたあたりから、未提出の一覧とリマインド機能の効果が出やすくなります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
勤怠・給与と同じ基盤で使える人事労務システムの評価機能(オプション)
目安:既存契約への追加で1人あたり月数百円程度〜
すでに同じ提供元の勤怠や給与を使っている会社向きです。従業員マスタ(氏名・所属・入社日などの基本情報)を二重に管理せずに済み、異動のたびの登録作業が減ります。ただし評価機能の自由度は専用システムより狭いことがあるため、評価シートの項目数や階層をデモで確認します。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
評価制度の設計支援(社会保険労務士・人事コンサルへの委託)+運用は既存の表計算
目安:設計一式で数十万円程度〜(規模と範囲により大きく変動)
制度そのものが未整備の会社に向きます。等級と評価項目、処遇への反映ルールを先に文書化し、1期は手元のファイルで回してから、システム導入を判断する進め方です。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
従業員30人ほどです。表計算で足りませんか。
評価者が数人で、期が年1回なら、表計算でも回ることは多いです。判断の目安は、回収と督促にかかる時間と、過去の評価を探せるかどうかです。ファイルの版が増えて最新がどれか分からない状態が出てきたら、検討の時期と考えられます。
導入したら評価が公平になりますか。
システムは記録と進行管理の道具で、評価の中身を公平にするものではありません。公平さは、評価項目の決め方と、評価者への説明、二次評価の仕組みで作ります。システムは、その手順を期日どおりに回すことを助ける位置づけです。
評価のコメントは本人に見せる必要がありますか。
見せるかどうかは自社の運用で決める事項です。ただし開示する前提と、しない前提では、評価者の書き方が変わります。どちらにするかを先に決めて、評価者へ伝えてから運用を始めてください。途中で方針を変えると現場が混乱します。
無料プランや試用期間だけで判断してよいですか。
操作感の確認には有効ですが、それだけでは足りません。確認したいのは、権限設定で他人の評価が見えないか、未提出者を一覧で出せるか、データを出力したときにコメントまで残るかです。試用の期間中にこの3点を試してください。