情シス代行の契約、総務が申し込む前に確かめる対応範囲と管理者権限
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この記事を読むと、情シス代行(社内のIT運用を外部に任せるサービス)を契約してよいか、社内で説明できる形で判断できます。判断の中心は月額料金ではありません。「どこまでが定額で、どこからが別料金か」「管理者権限を誰が持つか」「やめるときに何が戻ってくるか」の3点です。パソコンやネットワークの困りごとを総務が兼任で抱えている会社ほど、この3点を決めないまま申し込み、契約後に想定外の請求と作業に追われがちです。先に線を引いておけば、契約後の揉めごとはかなり減らせます。
まず「今、誰が何をやっているか」を棚卸しする
情シス代行は、サービス名が同じでも中身がかなり違います。先に自社の作業を書き出さないと、見積の比較ができません。総務が兼任で抱えがちな作業は、おおむね次のように分かれます。
- 日々の問い合わせ対応(印刷できない、パスワードを忘れた、メールが届かない)
- 入社と退職の処理(パソコンの設定、アカウントの作成と削除、端末の回収)
- 機器の調達と管理(パソコン、モニター、ネットワーク機器の選定と資産台帳)
- ネットワークやクラウドの設定変更(Wi-Fi、ファイル共有の権限、各種サービスの管理画面)
- トラブル時の切り分けと、メーカーや回線業者への連絡
この5つのうち、どれが重いのかは会社によって違います。問い合わせ対応が重い会社はヘルプデスク型、入退社が多い会社はキッティング(端末の初期設定)と アカウント管理を厚くした契約が合います。
棚卸しは、1か月だけでも実際の件数を数えると精度が上がります。「月に何件、1件あたりおおよそ何分」が分かれば、稟議で工数を金額に直して説明できます。ここを飛ばして「なんとなく大変だから」と起案すると、経営から「で、いくら分の仕事なのか」と聞かれて止まります。
定額の範囲と、別料金になる作業の線を引く
見積書の月額だけを見て比べると、ほぼ確実に判断を誤ります。確かめるのは次の点です。
- 対応の窓口と時間帯。平日日中のみか、夜間・休日も含むか。含む場合は別料金か。
- 問い合わせの件数制限。「月◯件まで」「無制限だが同一内容は1件」など、数え方が契約書に書いてあります。
- 訪問の扱い。リモート対応は定額でも、現地訪問は1回いくらの実費という形が多くあります。交通費の扱いも確認します。
- 対応するのは「誰の」端末か。社員のパソコンは対象でも、アルバイトの私物端末や、工場の制御用機器は対象外ということがあります。
- オフィス移転、回線の引き直し、サーバーの入れ替えのような大きな作業。これはほぼ別見積です。
カタログに出ない継続費用としてよくあるのは、代行会社が標準で使う管理ツールのライセンス料です。IT資産管理やリモート操作のツールを1台ごとに課金する形だと、人数が増えた分だけ月額が上がります。台数が増えたときの単価も、契約前に書面で確認しておくと安全です。
また、返答までの時間(何時間以内に一次回答するか)が決められているかも見ます。決まっていない契約は、繁忙期に待たされても文句を言えません。
管理者権限は自社に残す。ここが解約時の最大の壁
継続契約は、入るときより、やめるときに詰まります。情シス代行で一番詰まるのが、各種サービスの管理者権限です。
メール、ファイル共有、ウイルス対策、Wi-Fi機器、ドメイン。これらには「全体管理者」のアカウントがあります。代行会社が作業しやすいように、このアカウントを代行会社側で作り、そのまま預けきりになっている状態は珍しくありません。この状態で解約すると、次の会社に引き継ぐときに、自社の中に誰も管理画面に入れる人がいない、という事態が起こります。
契約前に決めておくことは次の3つです。
- 最上位の管理者アカウントは自社名義で作り、自社の責任者が持つ。代行会社には作業用の管理者アカウントを別に発行する。
- 契約が終わったら、代行会社の作業用アカウントは削除する、と契約書に書く。削除の報告書を出してもらう形にします。
- 各サービスの契約名義と、支払いに使っているカードを自社名義にする。代行会社の名義で契約されていると、解約時に契約そのものを移す作業が必要になります。
「権限を分けると手間が増える」と言われることがありますが、手間が増えるのは最初だけです。名義と権限が自社にある状態を作っておけば、担当会社を替える判断がいつでもできます。
入社・退職の処理を、どちらが起点になるか決める
実務でよく止まるのが、入退社の連絡の流れです。代行会社は、人事の情報を自動では知りません。誰かが伝えなければ、退職者のアカウントは生き続けます。
決めておくのは次の点です。
- 誰が、いつ、どの形式で連絡するか。入社日と退職日、必要なアカウントの種類を書いた依頼フォームを1つに決めます。口頭やチャットの雑談で依頼すると、抜けます。
- 退職者のメールをどう扱うか。即日停止するのか、一定期間は転送するのか、データを誰に引き継ぐのか。労務のルールと合わせて決めます。
- 端末の回収と初期化を誰がやるか。遠方の社員やリモート勤務者の端末は、送り返す送料と、受け取った後の保管場所の問題が出ます。
- アカウントの棚卸しを年に1回やるか。使っていないアカウントに課金が続いていた、という形の無駄はよく見つかります。
退職者のアカウント削除は、情報漏えいの観点でも、各種サービスの課金の観点でも効きます。削除の記録を月次の報告書に残してもらう形にすると、監査や取引先からのチェックにも答えやすくなります。この「報告書に何を書いてもらうか」は、契約前に決めたほうが通りやすいです。
解約予告と引き継ぎ資料を、契約書で確かめる
継続契約の解約条件は、入る前に読む人が少ない箇所です。確かめるのは次の点です。
- 最低契約期間と自動更新の有無。1年の自動更新で、解約予告がおおよそ2〜3か月前という形が多く見られます。更新月を社内のカレンダーに入れておきます。
- 解約時に何を返してもらえるか。ここが肝心です。資産台帳(どの端末を誰が使っているか)、ネットワーク構成図、各サービスのアカウント一覧、設定内容、パスワードの管理表。これらを引き継ぎ資料として出す義務が書かれているかを見ます。
- 引き継ぎ作業が有料かどうか。終了時の作業に別途費用がかかる契約もあります。金額の目安を先に聞いておきます。
- 代行会社が自社で契約しているツールの扱い。解約と同時に使えなくなるものがあれば、その代替をどうするかを決めておきます。
「資料は電子データで、こちらが指定する形式で受け取る」と書いておくと安全です。紙の束で渡されると、次の担当に引き継げません。
稟議では、月額と初期費用のほかに、この解約時の条件を1行添えてください。「いつでも替えられる状態で契約する」と説明できれば、決裁は通りやすくなります。
稟議の書き方と、契約後3か月でやること
社内の反対は、たいてい「今まで総務がやれていたのに、なぜ外に出すのか」という形で出ます。感情論に見えますが、中身は費用対効果の話です。次の順で書くと説明しやすくなります。
- 現状の件数と時間。1か月の問い合わせ件数と、対応にかかった時間をおおよそで出します。
- その時間が止めている仕事。入社手続きが遅れる、給与の締めに影響する、といった具体的な支障を1つ書きます。
- 属人化のリスク。担当者が休んだ日にパソコンが壊れたら誰も対応できない、という状態を書きます。
- 外部に出す範囲と、自社に残す範囲。全部任せるのではなく、権限と判断は自社に残すと明記します。
契約後は、最初の3か月でやることを決めておきます。資産台帳を作り直す、アカウントの一覧を揃える、よくある問い合わせの手順書を作る。この3つが揃うと、担当会社を替える場面でも自社が困りません。逆に、何も揃えないまま年数だけ経つと、その代行会社なしでは動けない状態になります。
まずやるべきことは1つです。1か月だけ、社内のIT関連の依頼を記録してください。件数が見えたところから、頼む範囲が決まります。
買う前に確かめること
- 月に何件のIT依頼が来ているか、1か月だけ記録を取ったか
- 定額に含まれる範囲と、訪問・夜間・大型作業の別料金を書面で確認したか
- 最上位の管理者アカウントと各サービスの契約名義が自社にあるか
- 解約予告の期間と、更新月をカレンダーに登録したか
- 解約時に資産台帳・アカウント一覧・設定情報を電子データで受け取れるか
- 退職者のアカウント削除を誰が起点で依頼し、記録に残すか決めたか
候補になる分類
月額定額のヘルプデスク型 情シス代行(リモート対応中心)
目安:月額おおよそ3万〜15万円(人数・範囲による)
社員からの問い合わせ対応に総務の時間が取られている会社に向きます。訪問が少なく済む規模なら費用を抑えやすい一方、現地作業や大きな構成変更は別料金になることが多いため、範囲の線引きが要になります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
スポット契約のIT保守・キッティング代行(入退社時のみ依頼)
目安:1台あたりおおよそ1万〜3万円+作業費
問い合わせは少ないが、入社・退職のときだけ端末設定が集中する会社に向きます。月額を払わずに済む反面、急ぎの依頼に即日では動けないことがあるため、繁忙期の予定を先に共有できるかを確認します。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
IT資産管理・端末管理(MDM)ツールの自社契約
目安:1台あたり月額おおよそ300〜1,000円
代行会社のツールに相乗りせず、自社名義でツールを持ちたい会社に向きます。担当会社を替えても台帳と管理画面が自社に残るため、乗り換えの自由度が上がります。台数課金のため、人数が増える前提の会社は単価の確認が必要です。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
顧問の税理士や社労士のように、月額だけ払って普段は使わない形でも意味はありますか。
問い合わせが少ない会社では、月額が割高に感じられることがあります。その場合はスポット契約から始め、依頼の記録を半年ほど残してから定額に切り替える判断もできます。判断材料は、月あたりの件数と、対応が遅れたときに止まる業務の有無です。
パスワードを代行会社に預けて大丈夫でしょうか。
預けること自体は一般的ですが、最上位の管理者アカウントは自社名義で保持し、代行会社には作業用の権限を別に渡す形が安全です。契約書に秘密保持と、契約終了時のアカウント削除・データ返却を明記しておきます。削除したことの報告書を受け取る取り決めにしておくと、後から確認できます。
既に代行会社に任せきりで、管理画面に入れる社員がいません。どうすればよいですか。
まず各サービスの契約名義と支払い方法を確認し、自社名義の管理者アカウントを追加で作ってもらうところから始めます。更新月の2〜3か月前には、資産台帳とアカウント一覧の提出を依頼しておくと、替えるかどうかを落ち着いて判断できます。