マイナンバーの収集と保管、総務が委託先を決める前に確かめる廃棄と退職者分
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この記事を読むと、マイナンバーを自社で保管し続けるか、システムや士業に預けるかを、社内で説明できる形で決められます。判断の中心は月額料金ではありません。「誰が番号を見られるか」「やめるときに返してもらえるか」「いつ捨てるか」の3点です。マイナンバーは、集めるときより捨てるときと預け先を変えるときに詰まります。先に出口を決めてから、入口の契約を選んでください。
まず「集める・使う・保管する・捨てる」の4工程に分けて考える
マイナンバー(個人番号)の扱いは、ひとかたまりの作業に見えて、実は性格の違う4つの工程に分かれます。ここを分けずに「システムを入れれば解決」と考えると、だいたい紙が残ります。
- 集める:入社時や扶養家族の増減時に、本人から番号を提出してもらいます。番号が正しいかの確認(番号確認)と、その人が本人かの確認(身元確認)の両方が必要とされています。
- 使う:税や社会保険の手続きに限って使えます。社内の名簿番号や本人確認の代わりに使うことはできません。利用できる場面が法律で限られている点が、ほかの個人情報と大きく違います。
- 保管する:使う必要がある間だけ持てます。「とりあえず全員分をずっと持っておく」はできません。
- 捨てる:必要がなくなり、法令で決まった保存期間を過ぎたら、できるだけ速やかに廃棄・削除することが求められます。
総務の実務で抜けやすいのは4番目です。入社時の収集フローは作られても、退職者分をいつ誰が消すかまで決めている会社は多くありません。委託先を選ぶときは、この4工程のうちどこまでを任せるのかを先に線引きしてください。「収集だけ代行、保管は自社」「全部預ける」では、必要な契約条項も費用もまったく変わります。
自社で持つか委託するか ─ 決め手は金庫ではなく担当者の人数
自社保管か委託かは、従業員数より「事務を担当できる人が何人いるか」で考えると判断しやすくなります。
自社で持つ場合、番号を取り扱う担当者(事務取扱担当者)を決め、その人以外が見られない状態にする必要があります。紙なら施錠できる書庫、データなら権限を絞ったフォルダやシステムです。ここで起きがちなのは、担当者が1人しかいないのに、その人が休むと年末調整が止まるという状態です。かといって「念のため全員が見られるように」すると、取扱者を限定したことになりません。兼任総務の会社では、この2人目をどう確保するかが最初の壁になります。
委託する場合は、クラウドの労務・給与システムの番号管理機能を使う形と、社労士・税理士といった士業に手続きごと預ける形が中心です。預けても委託元の責任が消えるわけではなく、委託先がきちんと管理しているかを確かめる立場(監督責任)は自社に残ります。「預けたから安心」ではなく「預けた先を確かめる仕事が増える」と理解しておくほうが、あとで説明に困りません。
判断の目安は次のとおりです。番号を見る必要がある人が1〜2人で、紙の申告書が毎年ほぼ全員分発生するなら、システム化の効果は出やすいです。逆に、手続きのほとんどを士業に出しているなら、収集と保管もまとめて預けたほうが社内の保管場所が減ります。
契約前に確かめる条項は、再委託・保管場所・事故時の連絡
委託するときの契約書で、料金表より先に読むべきところがあります。見積書には出てこない部分です。
- 再委託の可否と範囲。委託先がさらに別会社に作業を出す場合、どこまで自社の許諾が要るのかを確認します。「事前の書面による承諾」が必要と書かれているか、「あらかじめ包括的に同意したものとみなす」になっているかで、意味がまったく違います。
- 番号データの保管場所と保管期間。国内か国外か、バックアップはどこに置かれるか。サーバーの所在地が答えられない委託先は避けたほうが無難です。
- 閲覧できる人の範囲と記録。誰がいつ番号を表示したかの記録(アクセスログ)が残り、自社でも確認できるかどうか。何か起きたときに「誰も見ていないこと」を示せるのは、この記録だけです。
- 事故が起きたときの連絡。何時間以内に、誰から、どの窓口に連絡が来るのか。特定個人情報の漏えいは、一定の場合に個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要とされています。報告の期限がある以上、委託先からの一報が遅れると自社が間に合いません。
- 監査や報告を求められるか。年1回の報告書提出や、必要に応じた調査に応じる条項があるかを見ます。
これらは標準の利用規約だけでは読み切れないことがあります。別紙の「個人情報の取扱いに関する覚書」や「安全管理措置の概要」を出してもらい、稟議に添付してください。出し渋る相手は、その時点で判断材料になります。
やめるときに詰まるのは、返却と削除証明
継続契約の本番は解約のときです。マイナンバーの場合、解約時に戻ってこないと次に移れません。
確かめるのは次の点です。
- 解約したあと、番号データを返してもらえるか。返却の形式はCSVなどの汎用ファイルか、PDFの一覧だけか。PDFだけだと、次のシステムに取り込めず手入力になります。人数が多いほど、この差が効きます。
- 返却後、委託先側のデータを削除してもらえるか。そして、削除したことを書面で出してもらえるか。削除証明書や廃棄証明書の発行可否は、契約前に聞いておきます。発行が有償のこともあります。
- 解約後、どれくらいの期間でデータが消えるか。「契約終了後◯日でアクセス不可、その後◯日で完全消去」といった段取りが書かれているかを見ます。アクセスできなくなるのと消えるのは別です。
- バックアップの扱い。本体を消してもバックアップが一定期間残る設計は珍しくありません。そこまで含めた消去時期を確認します。
よくあるのは、乗り換えを決めてから「番号だけは出力できません」と言われ、全従業員に再提出をお願いする展開です。本人確認書類の提出からやり直しになり、現場の負担が一気に増えます。入るときの画面の使いやすさより、出るときの出力形式を先に確認してください。
退職者と扶養家族の番号を、いつ捨てるかを決めておく
保管の期限は「もう使わないから今日捨てる」では決められません。番号が書かれた書類には、税法などで定められた保存期間があります。たとえば扶養控除等申告書のような書類は、提出期限の翌年から数年間の保存が必要とされており、その期間中は番号も一緒に残ることになります。一方で、保存期間を過ぎたものは、できるだけ速やかに廃棄・削除することが求められます。つまり、早すぎても遅すぎても指摘されうる、という扱いです。
現実的な運用は次の形です。
- 退職が発生したら、その時点では消さず、「廃棄予定年」を台帳に書き込む。
- 年に1回、決まった月(年末調整が終わった直後が回しやすい)に、廃棄予定年が来たものをまとめて処分する。
- 処分したら、誰が・いつ・何件を廃棄したかを記録に残す。
紙で廃棄する場合は、細かく裁断できるシュレッダー(マイクロカットなど)か、溶解処分の委託を使います。一般ごみに出す選択肢はありません。委託するなら、処理したことの証明書が出るかを確認してください。
データの場合は、システム側に「保存期間を過ぎた番号を自動で削除する機能」があるかどうかで手間が変わります。無い場合は、手で消す作業が毎年発生します。見落としやすい論点なので、導入前に機能の有無を聞いておくと稟議で説明しやすくなります。
稟議は「便利になる」ではなく「報告義務がある情報だから」で通す
マイナンバーの管理は、売上が増えるわけでも、目に見えて作業が速くなるわけでもありません。費用対効果で押すと、経営から「今のままでいいのでは」と返されがちです。
通りやすいのは、次の組み立てです。
- マイナンバーは、漏えいした場合に個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要とされる情報であること。社内の名簿とは扱いが違う点を最初に書きます。
- 現状、番号が社内のどこに何件あるかを棚卸しして示すこと。机の引き出し、共有フォルダ、過去の申告書の束。所在が把握できていない状態そのものがリスクだと説明します。
- 取扱担当者が1人しかいない、または全員が見られる状態になっていること。属人化と過剰な権限は、どちらも説明がつきません。
- 導入後に自社でやる運用(年1回の棚卸しと廃棄、担当者の変更時の権限見直し)を書き添えること。入れて終わりではないと先に言っておくと、翌年の更新がもめません。
費用は、月額だけでなく、初期設定、従業員への再収集の手間、将来の解約時の出力やデータ削除証明の費用まで並べます。安いプランが番号管理だけ別料金になっている、人数が増えると段階的に上がる、といった形も多いので、現在の人数と1年後の想定人数の両方で計算しておくと差し戻されにくくなります。
まず今週やることは1つです。社内のどこに番号が残っているかを書き出してください。委託先を選ぶのはそのあとで間に合います。
買う前に確かめること
- 社内のどこに番号が何件あるか(紙・共有フォルダ・過去の申告書)を書き出したか
- 番号を見られる人を限定し、代わりに対応できる2人目を決めてあるか
- 委託契約に再委託の条件と、事故発生時の連絡期限・連絡先が書かれているか
- 解約時に番号データを汎用ファイルで出力でき、削除証明が発行されるか確認したか
- 退職者分の廃棄予定年を記録する台帳と、年1回の廃棄作業日を決めたか
- 月額のほかに初期費用・人数増加時の加算・解約時の費用まで見積もりに入れたか
候補になる分類
マイナンバー管理機能を備えた労務・給与クラウド(番号の権限設定とアクセス記録が確認できるもの)
目安:月額数千円〜数万円(従業員数とオプションによる)
入退社のたびに紙の申告書を集めている会社や、番号を見る担当者を2人までに絞りたい会社に向きます。選ぶときは、解約時に番号を汎用ファイルで出力できるか、保存期間を過ぎた番号の削除を支援する機能があるかを先に確認してください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
社労士・税理士など士業への収集・保管を含む委託
目安:顧問料に含む〜月額数千円程度の加算
社会保険や年末調整の手続きをすでに外部に出していて、社内に番号を置きたくない会社に向きます。委託しても監督する責任は自社に残るため、再委託の範囲と事故時の連絡手順を覚書で確かめる必要があります。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
施錠できるオフィス用書庫・耐火金庫(番号が記載された紙の保管用)
目安:2万〜10万円程度
紙の申告書や本人確認書類が当面残る会社に必要です。鍵の本数と保管者を決められること、置き場所の床の耐荷重と搬入経路を事前に確認できることが選定の条件になります。
よくある質問
税理士や社労士に預ければ、自社ではもう何もしなくていいですか。
委託しても、委託先が適切に管理しているかを確かめる立場は自社に残るとされています。年に一度は取扱状況の報告を受け、担当者の変更があれば権限を見直してください。預ける範囲(収集だけか、保管まで含むか)を契約書で明確にしておくことも必要です。
紙で集めた書類をスキャンして保存し、原本は捨ててもいいですか。
保存が必要な書類は、法令で定められた期間と方法に従う必要があるため、原本の廃棄可否は書類の種類によって異なります。顧問税理士に確認してから決めてください。スキャンデータにする場合は、保存先のフォルダの閲覧権限を絞り、誰が見られるかを文書に残しておくと説明しやすくなります。
退職した人の番号は、退職日にすぐ消していいですか。
番号が記載された書類には税法などで保存期間が定められているものがあり、その間は保管が続きます。退職時は削除せず、台帳に廃棄予定の年を記録しておき、年1回まとめて処分する運用が回しやすいです。処分したら、日付と件数と担当者を記録に残してください。