オフィスのネット回線とWi-Fi、総務が契約前に確かめる工事と解約金
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「ネットが遅い」という苦情が出てから回線を替えても、直らないことがよくあります。原因が回線ではなく社内の配線や無線機器にあるからです。この記事を読むと、回線を替えるべきか、社内側を直すべきかの切り分けと、契約前に確かめる工事・解約条件・運用担当の決め方がわかります。最後に、稟議に書く材料もまとめます。
「遅い」の原因は回線とは限らない。先に切り分ける
苦情が出たとき、まず疑われるのが回線契約です。しかし実際には、社内側が原因のことが少なくありません。
- 無線アクセスポイント(Wi-Fiの電波を出す機器。以下AP)が1台しかなく、人数に対して足りていない
- 家庭用のWi-Fiルーターを流用していて、同時接続が増えると不安定になる
- レイアウト変更のたびにハブ(LANの分配器)を足していき、いわゆるタコ足配線になっている
- 特定の時間帯だけ遅い。これは回線の混雑か、誰かが大きなファイルを上げている可能性がある
切り分けの手順は単純です。有線LANでつないだパソコンでも遅いのか、Wi-Fiのときだけ遅いのかを見ます。有線でも遅ければ回線側、Wi-Fiだけなら社内側の疑いが濃くなります。時間帯を変えて、朝・昼休み・夕方の3回ほど測ると傾向が見えます。
ここを飛ばして回線を乗り換えると、費用と工事の手間をかけて何も改善しない、という結果になりがちです。総務が最初にやるべきは、契約先探しではなく状況の記録です。「いつ・どこの席で・何をしていて遅かったか」を2週間ほど集めるだけでも、判断材料になります。
契約前にビルの管理会社へ確認する4つのこと
回線は、事業者と契約すれば必ず引けるものではありません。建物の事情で引けないことがあります。契約書にサインする前に、ビルの管理会社かオーナーへ確認します。
- その事業者の回線を新たに引き込めるか。ビルによっては特定の事業者しか入っていない
- MDF室(建物の通信設備が集まる部屋)の作業許可と鍵の手配を誰がするか。管理会社の立ち会いが必要な場合が多い
- 共用の回線設備を全テナントで分け合う方式かどうか。この方式だと、隣のテナントの使い方に速度が影響される
- 配管や壁の穴あけ、天井への機器取り付けが可能か。可能な場合、退去時に元へ戻す義務があるか
特に4つめは、後で効いてきます。天井にAPを取り付けると見た目も電波もきれいですが、退去時に撤去と天井の補修を求められることがあります。移転が視野にあるなら、置き型で済ませる判断もあります。
また、工事日は希望どおりに取れないと考えてください。繁忙期には申し込みから開通まで1か月以上かかることも珍しくありません。移転や増員に合わせるなら、逆算して早めに動く必要があります。
法人向けと家庭向けは何が違うのか。値段だけで比べない
料金表だけ見ると、家庭向けのほうが安く見えます。違いは、止まったときの扱いにあります。
- 問い合わせ窓口の受付時間。平日日中のみか、24時間か
- 故障時にどのくらいで復旧に動くかの取り決め(品質保証。SLAと呼ばれます)があるか
- 固定IPアドレス(社外から社内へつなぐときなどに使う、変わらない住所)が付くか
- 帯域を他社と分け合う度合い。分け合う人数が少ないほど安定しやすく、その分高い
自社に固定IPが要るかどうかは、勤怠管理システムや会計ソフトの「特定の場所からしかログインさせない」設定を使うかで決まります。使う予定があるなら、回線契約の時点で決めておくと後が楽です。
もう一つ、電話です。光回線とセットの電話サービスにすると、料金は下がることが多い一方、移転先の地域によっては同じ番号を持っていけない場合があります。代表番号を名刺やWebに載せている会社にとっては、番号が変わる影響は小さくありません。移転の可能性があるなら、契約前に「移転しても番号を維持できるか」を書面で確認しておきます。
やめるとき・移すときに詰まる。解約条件はここを読む
継続契約は、入るときより出るときに詰まります。回線も同じです。見積書ではなく契約約款のほうに答えが書いてあります。
- 最低利用期間と、期間内解約の違約金。月額の何か月分か、残期間分か
- 工事費の分割払いが残っている場合、解約時に一括請求されるか
- 撤去工事の費用は誰が持つか。ビルから原状回復を求められると、この費用が発生する
- 貸与機器(回線終端装置やルーター)の返却期限。期限を過ぎると機器代を請求されることがある
- 移転の扱い。解約+新規なのか、移転手続きとして継続扱いになるのか
実務でよくあるのは、返却機器の行方不明です。移転のどさくさで箱ごとどこかへ行き、期限を過ぎて請求が来ます。撤去日に「返すもの一覧」を紙で作り、写真を撮って総務が保管しておくと防げます。
そして自動更新です。何もしなければ同じ期間で更新される契約が多く、解約の申し出には期限があります。契約したその日に、更新月と申し出期限をカレンダーへ登録してください。担当が代わっても残る形で残すことが大事です。
社内Wi-Fiは台数と置き場所で決まる。分けるべきものを分ける
回線が速くても、APの数と位置が悪ければ体感は変わりません。設計というほど大げさでなくても、次の点は押さえます。
- 1台のAPでカバーできる範囲は限られる。壁やスチール棚、金庫は電波を弱める
- 同時につながる台数が多いほど不安定になる。パソコンだけでなくスマホやプリンタも数える
- 電子レンジや無線機器の近くは干渉しやすい。給湯室の隣は避ける
- APは天井や壁の高い位置のほうが電波が届きやすい。ただし前述の原状回復に注意
分けるべきものも決めます。来客用のWi-Fiと社内業務用は分けるのが基本です。同じ電波に来客の端末を入れると、社内のファイルサーバーや複合機に届いてしまう構成になりがちだからです。来客用のパスワードは、少なくとも人の入れ替わりや年度替わりの区切りで変えます。退職者のスマホがずっとつながっている状態は避けたいところです。
APを増やす場合、電源とLANケーブルをどう通すかが現実の壁になります。PoE(LANケーブルで電源も送る仕組み)に対応した機器を選ぶと、コンセントの増設工事を減らせます。
誰が運用するかを決めないと、総務が全部やることになる
回線を替えても、日々の面倒は残ります。「つながらない」と言われたときに動く人を決めていないと、総務が全部やることになります。
決めておくのは次の3つです。
- 一次対応。席の再起動やケーブル確認まで、社内の誰がやるか
- 切り分け後の連絡先。回線事業者、ビル管理会社、機器の保守業者と、窓口が分かれている場合はどこから聞くか順番を紙にする
- 機器の管理台帳。APやハブの型式、設置場所、保証期限、管理画面のIDを1枚にまとめる
社内に詳しい人がいない場合は、月額の保守サービスを付ける選択肢があります。金額は内容によって幅がありますが、月額で数千円から数万円程度が目安になることが多いようです。金額よりも、対応時間と訪問の有無、機器交換までやってくれるかを確認してください。
ありがちな失敗は、社内の「パソコンに詳しい人」に頼りきることです。その人が辞めた瞬間に、管理画面のパスワードすらわからなくなります。属人化を防ぐ意味でも、台帳を総務が持つ形にしておくと安全です。
稟議の通し方と、明日からの進め方
稟議では、速度の数字より「止まったときに何が起きるか」を書くほうが通りやすいです。
- 現状の記録。苦情の件数、発生時間帯、影響した業務
- 止まった時間×関係人数で、おおよその損失時間を出す。金額に直すと伝わりやすい
- 案を2〜3つ並べる。回線据え置きで社内機器のみ更新、回線と機器の両方、現状維持
- 現状維持を残すのが要点。比較対象がないと判断できないと言われます
- 初期費用と月額に加え、工事費、解約時の想定費用、保守料まで含めた数年分の総額
進め方はこの順です。まず2週間、症状を記録します。次に有線とWi-Fiで切り分けます。同時に、ビル管理会社へ引き込みと工事の可否を確認します。そのうえで見積もりを2社以上取り、約款の最低利用期間・違約金・撤去費・返却条件を読みます。最後に、運用の担当と連絡先の順番を決めてから契約します。
急ぎでも、契約書にサインする前にビル確認だけは済ませてください。ここを飛ばして工事日に「引けません」となるのが、いちばん時間を失うパターンです。
買う前に確かめること
- ビルの管理会社に、その回線を引き込めるかと工事の可否を先に確認したか
- 最低利用期間・違約金・工事費の残債・撤去費用を約款で読んだか
- 貸与機器の返却期限と、返却漏れ時の請求条件を控えたか
- 自動更新の更新月と解約申し出の期限をカレンダーに登録したか
- 来客用と社内用のWi-Fiを分ける構成になっているか
- つながらないときの一次対応者と連絡先の順番を紙で決めたか
候補になる分類
法人向けインターネット回線(品質保証や法人窓口が付くタイプ)
目安:月額 数千円〜3万円程度(回線種別と品質保証の有無で大きく変わります)
問い合わせ窓口の対応時間や復旧の取り決めを重視する会社に向きます。テレワークや外部システムを日常的に使い、止まると業務が丸ごと止まる会社ほど、家庭向けとの差額が意味を持ちます。契約前に、最低利用期間・違約金・移転時の扱いを約款で確認してください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
法人向け無線アクセスポイント(複数台をまとめて管理できるタイプ)
目安:1台あたり 1万〜5万円程度
人数が増えてWi-Fiが不安定になった会社に向きます。来客用と社内用を分けられ、複数台を1つの画面で管理できるものだと、増設や設定変更の手間が減ります。天井設置を考えるなら、退去時の原状回復条件を先に確認してください。
PoE対応のスイッチングハブ(LANケーブルで給電できるもの)
目安:1万〜6万円程度
アクセスポイントを増やしたいが、コンセントの増設工事は避けたい会社に向きます。配線が1本で済むため、天井裏や壁際への設置が楽になります。接続する機器の消費電力の合計に余裕があるか、台数分の口数があるかを確認して選びます。
ネットワーク保守・運用の外部委託(月額型のサポート)
目安:月額 数千円〜数万円程度(対象機器数と対応時間で変動)
社内に詳しい人がいない、あるいは特定の一人に頼りきりの会社に向きます。障害時の窓口を一本化でき、担当者の退職リスクを下げられます。金額よりも、対応時間帯・訪問の有無・機器交換まで含むかを比べてください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
よくある質問
回線を速いプランに変えれば、社内の「遅い」は解決しますか。
解決しないことがあります。有線でつないだパソコンでも遅いなら回線側ですが、Wi-Fiのときだけ遅いなら社内の無線機器や配線が原因の可能性が高いです。先に切り分けてから、どちらに投資するかを決めてください。
移転するとき、今の回線をそのまま持っていけますか。
事業者や移転先の建物によって異なります。移転手続きとして継続扱いになる場合と、解約して新規契約になる場合があり、後者だと違約金や工事費の残債が発生することがあります。移転が決まった時点ではなく、契約時に確認しておくのが安全です。
来客用のWi-Fiは、社内用と同じもので済ませてはいけませんか。
分けることをおすすめします。同じ電波に来客の端末が入ると、社内のファイル共有や複合機に届く構成になりがちだからです。分離機能のあるアクセスポイントを使い、来客用のパスワードは定期的に変えてください。
社員10人程度でも法人向け回線は必要ですか。
人数より業務内容で決まります。クラウドの業務システムやオンライン会議が日常なら、止まったときの影響が大きいため法人向けの窓口がある契約が向きます。逆にメールと調べ物が中心なら、社内機器の見直しだけで足りることもあります。