オフィスの選びかた

中小企業の総務が決裁する「契約」と「買いもの」を、実際に決裁した側の目線で選ぶための記録。

オフィスのLED照明への切り替え、リース・買い取り・工事の判断基準

2026-09-02 LED照明省エネ設備投資リース契約総務の判断

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この記事を読み終えたときに決まるのは、「うちはランプだけ替えるのか、器具ごと替えるのか」と「買い取りで進めるのか、リースで進めるのか」の二つです。LED化は一度やると10年近く触らない工事です。だから急がされて決めると、退去時や移転時に思わぬ費用が出ます。電気代の試算だけでなく、賃貸契約と廃棄と社内の反応まで含めて、決裁前に確かめる順番を書きます。

まず調べるのは電気代ではなく「蛍光灯がいつまで買えるか」

LED化の相談は、たいてい「電気代が下がりますよ」から始まります。ですが総務が最初に確かめるべきは、そこではありません。蛍光ランプそのものの供給がいつまで続くか、です。

水銀に関する国際的な取り決め(水俣条約)の改正により、直管形・コンパクト形の蛍光ランプは、おおよそ2026年から2027年末をめどに製造と輸出入が段階的に終わる方向で進んでいます。最新の期限は年度によって整理が変わるので、環境省や照明工業会の公表資料で必ず確認してください。

ここで大事なのは「使用禁止ではない」ことです。手元にある在庫は使えます。禁止されるのは新しく作ることと輸入することです。つまり実務上の問題は、切れたときに替えのランプが手に入るか、値段がどうなっているかです。

ですから稟議の書き出しは「電気代削減」ではなく「調達リスク」で組むほうが通りやすくなります。経費削減の話は景気で後回しにされます。部屋が暗くなって業務が止まる話は後回しにされません。

・自社の照明が直管形か、環形か、ダウンライトか・本数の概数(フロア図に数を書き込むだけでよい)・ランプの在庫が今どれだけあるかこの3つを1時間で数えるところから始めてください。

電気代がどれくらい下がるか、自分で概算する式

見積書に「年間○○円削減」と書いてあっても、その根拠は業者ごとに違います。自分で概算できると、比較の土台ができます。

式は単純です。(現状の1本あたり消費電力 − LEDの1本あたり消費電力)× 本数 × 年間点灯時間 ÷ 1000 × 電力単価

目安として、40W形の直管蛍光灯は安定器(ランプを点灯させる装置)の分を含めるとおおよそ45W前後、置き換え用の直管LEDはおおよそ20W前後です。年間点灯時間は、1日10時間で年250日ならおおよそ2,500時間。電力単価は契約内容で変わりますが、請求書の総額を使用量で割って自社の実効単価を出すのが確実です。

仮に100本で1本あたり25W減、2,500時間、単価25円なら、削減はおおよそ年間15万円程度という桁が出ます。あくまで桁の確認です。

注意点が二つあります。ひとつは、照明を減らしても契約電力(デマンド)はあまり下がらないことが多い点です。基本料金の削減までは期待しないでください。もうひとつは、照明の発熱が減って夏場の空調負荷がわずかに軽くなる副次効果はありますが、これを金額に乗せると試算が甘くなります。稟議では乗せないほうが安全です。

ランプだけ替えるか、器具ごと替えるか

ここが最大の分岐です。金額も工事日数も、退去時の扱いも変わります。

ランプだけ替える方式は、既存の照明器具を残して中身をLEDに交換します。安さと工期の短さが利点です。ただし方式が分かれます。既存の安定器をそのまま使うタイプと、安定器を切り離す配線工事(バイパス工事)が必要なタイプです。前者は工事不要で楽ですが、古い安定器が生きたままなので、そこが壊れれば結局点きません。後者は電気工事士の資格が必要で、DIYはできません。

器具ごと替える方式は、天井から器具を外して新しいLED器具を付けます。費用は上がりますが、安定器の故障リスクがなくなり、明るさの設計もやり直せます。

判断の目安はこうです。・器具の設置から15年以上経っている、または器具が変色・変形している → 器具交換を検討・築浅で器具がきれい、数年後に移転の可能性がある → ランプ交換で様子を見る

実務で見落とされるのが賃貸契約です。器具は建物の設備なので、勝手に替えると退去時に「元の器具に戻せ」と言われる余地があります。器具交換を選ぶなら、着工前に貸主へ書面で確認を取り、外した既存器具を1セットだけ倉庫に保管しておくのが安全です。捨ててしまうと戻せません。

買い取り・リース・ESCOの違いと、やめるときの詰まり方

支払い方法は主に3つです。

買い取りは、器具とランプを買って工事費を払い、それで終わりです。総額はいちばん安く済みます。ただし初年度に支出が集中します。

リースは、月額に分けて支払います。予算が平準化され、少額の月額なら決裁が軽くなる利点があります。問題は中途解約です。リースは原則として途中でやめられず、やめる場合は残債の一括請求になります。LED化の効果が出るのは数年後なのに、その前にオフィスを移転したらどうなるか。ここを契約前に確かめないと、移転費用に加えてリース残債が乗ります。移転時に器具を持ち出せるのか、そのときの費用は誰が持つのか、必ず条項で確認してください。

ESCO(省エネの効果保証を組み合わせた契約)に近い提案もあります。「削減した電気代の中から支払うので実質負担ゼロ」という形です。魅力的に見えますが、削減額の計測方法と、削減が想定に届かなかったときの扱いが契約の核です。点灯時間が想定より短かった、在宅勤務が増えてフロアを閉めた、そういう理由でも保証が効くのかを聞いてください。

・契約期間と、期間満了後の所有権はどちらに移るか・中途解約時の精算方法・移転・レイアウト変更時の取り扱い・ランプ交換や故障対応が月額に含まれるか、別料金かこの4点は口頭ではなく書面で残してください。

工事の段取りと、見積書に出てこない費用

照明工事は営業時間中にはできません。脚立や高所作業台を立てるので、その下で人は働けません。ですから土日か夜間になります。休日夜間の割増は見積に入っているか確認してください。「工事費一式」で済んでいる見積は、あとで追加が出ます。

段取りの実務は次の順です。まず1フロアだけ先にやります。全館一気にやらないのは、明るさや色の印象を社員に確認させるためです。次に、残りを土日で分割します。分割すると新旧が混在してムラが出るので、フロア単位や部屋単位で区切ります。同じ室内で新旧が混ざる区切り方はやめたほうがいいです。色の違いが必ず苦情になります。

見積書に出にくい費用を挙げます。・外した蛍光ランプの処分費。蛍光灯は水銀を含むため、事業所から出るものは産業廃棄物です。一般ごみには出せません。本数が多いと処分費だけで数万円単位になります。・外した器具の処分費と搬出費。エレベーターが使えない時間帯だと人件費が上がります。・古い器具の安定器の扱い。おおむね1972年以前に製造された業務用照明器具の安定器には、PCBを含むものがあります。含有する場合は通常の廃棄ができず、法令で定められた期限内に専用の処分ルートが必要です。器具の銘板に製造年が書いてあるので、着工前に業者と一緒に確認してください。古いビルに入居している場合は、ここを飛ばさないでください。

補助金が使えるかは「発注前」にしか確かめられない

省エネ設備の補助金には、照明が対象になるものと、ならないものがあります。国の省エネ関連の補助では、対象設備がリスト化されていて、照明単体は対象外だったり、高効率空調や生産設備との組み合わせが条件だったりします。一方で、自治体の中小企業向け省エネ設備導入補助では、LED照明が単体で対象になっている例があります。まずは本社所在地の都道府県と市区町村のサイトを見てください。

ここで絶対に外せない実務が一つあります。交付決定の前に発注や契約をすると、対象外になります。「工事を先に済ませてから申請」は通りません。業者から「補助金は後から申請できますよ」と言われたら、その根拠を募集要領のどこに書いてあるか示してもらってください。

もう一つ。リースで導入する場合、補助対象になるかは制度ごとに違います。リース会社が申請者になる仕組みが用意されている制度もありますが、自社購入のみが対象の制度もあります。支払い方法を先に決めてから補助金を探すと、あとで組み替えができません。順番は「補助金の有無を確認 → 支払い方法を決める」です。

公募には締切があります。締切に合わせて工事日を無理に前倒しすると、業者の選定が甘くなります。今期の補助金に間に合わないなら、来期に回す判断も選択肢です。

社内の反対の中身と、稟議の書き方

LED化で出る社内の声は、だいたい3種類です。

「白すぎて疲れる」。これは色温度の話です。昼光色は青白く、昼白色は自然な白、温白色や電球色は暖色寄りです。事務室は昼白色あたりが無難ですが、決める前に1フロアで実物を見せるのが確実です。カタログの色見本では伝わりません。

「明るすぎる/暗すぎる」。これは照度の話です。LEDは光が直進的で、蛍光灯より手元は明るく感じるのに天井付近が暗く感じることがあります。同じ明るさでも印象が変わります。工事前と工事後に、机の上で照度計を当てて数値を残しておくと、感覚の議論を数値の議論に変えられます。事務所衛生基準規則で執務空間の照度の下限が定められているので、その水準を下回っていないかも確認してください。

「今の照明で困っていない」。これがいちばん多い反対です。ここに効くのが最初に書いた調達リスクです。

稟議は次の順で組んでください。1. 蛍光ランプの供給終了時期と、自社の在庫があと何年分か2. 現状の本数と年間の消費電力、概算の削減額(甘く見積もらない)3. ランプ交換か器具交換か、その理由(築年数と移転予定)4. 買い取りかリースか、中途解約と移転時の扱い5. 補助金の可否と締切、間に合わなければ来期でよい理由6. 廃棄費とPCB確認の有無

まずやることは3つです。フロア図に本数を書き込む。請求書から自社の電力単価を出す。器具の銘板で製造年を見る。この3つがあれば、業者の話を聞く側に立てます。

買う前に確かめること

  • フロア図に照明の本数と種類を書き込み、現状の在庫が何年分あるか数えた
  • 電気の請求書から自社の実効単価を出し、削減額を自分で概算した
  • 照明器具の銘板で製造年を確認し、安定器のPCB含有の可能性を業者と点検した
  • 賃貸なら、器具交換の可否を貸主に書面で確認し、既存器具を1セット保管する段取りをつけた
  • リースなら中途解約時の精算方法と、移転時の器具の扱いを契約書で確認した
  • 補助金の対象になるか、交付決定前の発注が禁止されていないかを発注前に確認した

候補になる分類

直管形LEDランプ(既存器具を残して中身だけ交換するタイプ)

目安:1本あたりおおよそ1,500〜4,000円

器具が比較的新しく、数年内に移転の可能性がある会社に向きます。ただし安定器をそのまま使う方式と、配線工事が必要な方式があり、後者は電気工事士でないと施工できません。購入前に自社器具の点灯方式を確認してください。

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LEDベースライト(照明器具ごと交換するタイプ)

目安:1台あたりおおよそ5,000〜20,000円(別途工事費)

設置から15年以上経った器具や、変色・異音がある器具はこちらが安全です。安定器の故障リスクがなくなります。賃貸オフィスでは外した既存器具の保管と貸主の了解を先に取ってください。

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照度計(工事前後の明るさを数値で記録する道具)

目安:おおよそ3,000〜15,000円

「暗くなった」「眩しい」という感覚の苦情を数値の議論に変えられます。工事前に机上の照度を測っておくだけで、検収と社内説明がぐっと楽になります。1台あれば使い回せます。

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LED照明のリース・省エネ効果保証型の導入契約

目安:契約内容により変動(総額は買い取りより高くなるのが一般的)

初期支出を抑えたい会社に向きますが、判断の中心は月額ではありません。中途解約時の残債、移転時の器具の扱い、ランプ交換や故障対応が月額に含まれるかを書面で確認してから決めてください。

これは申し込む形のサービスです。申込先はこの記事の下にまとめています。

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よくある質問

蛍光灯は2027年以降、使ってはいけなくなるのですか。

使用が禁止されるわけではありません。制限されるのは新規の製造と輸出入で、おおよそ2026年から2027年末をめどに段階的に進む方向です。手元の在庫は使えます。実務上の問題は、切れたときに替えが手に入るかどうかと、価格が上がるかどうかです。最新の期限は環境省などの公表資料で確認してください。

工事不要と書かれたLEDランプを買って、社内で付け替えてもよいですか。

既存の安定器をそのまま使う方式なら、ランプの差し替え自体は可能です。ただし器具の点灯方式が合っているかの確認が必要で、合わないと点灯しないか、器具側が発熱します。配線を切り離す工事が必要なタイプは電気工事士の資格が必要で、社内作業はできません。判断がつかない場合は、まず1本だけ試して業者に確認してもらってください。

外した蛍光灯は普通のごみに出せますか。

事業所から出るものは産業廃棄物にあたり、一般ごみには出せません。蛍光ランプは水銀を含むため、専用の処理が必要です。工事業者が引き取る場合も、処分費が見積に含まれているか確認してください。本数が多いと処分費だけで無視できない金額になります。

リースと買い取り、どちらが総額で安いですか。

一般には買い取りのほうが総額は安く収まります。リースの利点は支出の平準化と決裁の通しやすさです。ただし中途解約ができず、移転時に残債が問題になることがあります。数年内に移転や統廃合の可能性がある会社は、契約期間の長いリースは慎重に検討してください。

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