オフィスの防犯カメラ設置、総務が発注前に確かめる録画の保存期間と従業員への説明
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この記事を読むと、防犯カメラを「何台つけるか」ではなく「どう運用するか」から決められるようになります。発注後にもめるのは、画質でも値段でもありません。従業員への説明をしないまま設置したこと、録画が思ったより早く消えていたこと、退去時に撤去費用が出てきたことの3つです。機器の比較より先に、この3点を社内で決めておくと、稟議も通りやすくなります。
最初に決めるのは台数ではなく「何のために撮るか」
防犯カメラの検討は、たいてい「とりあえず入口に1台」から始まります。ここで目的を言葉にしないまま進めると、あとで台数も保存期間も決められません。
よくある目的は次のどれかです。目的ごとに、必要な機材も置き場所も変わります。
- 外部からの侵入対策(夜間・休日の出入口や窓まわり)
- 現金や在庫、備品の持ち出し対策(金庫前、倉庫、備品棚)
- 来客や配送業者とのトラブル時の事実確認(受付、搬入口)
- 事故の記録(駐車場、作業スペース)
目的が「侵入対策」なら、撮るのは出入口と外周で、社員の席は映らないほうが望ましいことになります。目的が「備品の持ち出し対策」なら、社内を撮ることになり、従業員への説明が必須になります。
稟議書には「設置目的」「撮影範囲」「保存期間」「映像を見られる人」の4つを必ず書いてください。この4行があると、経営層からの「社員を監視するのか」という質問にその場で答えられます。逆に、この4行がないまま見積だけ出すと、差し戻されます。
社内を撮るなら、周知のしかたを先に決める
防犯カメラの映像は、人物が判別できる形で記録されれば個人情報として扱われるのが一般的な整理です。利用目的を決め、本人がわかる形で示しておくことが求められます。詳しい線引きは所管官庁のガイドラインや、顧問の弁護士・社労士に確認してください。
実務で詰まるのは法律の条文ではなく、社内の空気のほうです。設置の翌朝に「いつの間に」と言われると、目的が正しくても運用が止まります。
確かめるのは次の点です。
- 設置前に、全従業員へ目的と範囲を文書で知らせているか(口頭だけだと、入社・退職で伝わらなくなります)
- カメラがあることが見てわかるか(「防犯カメラ作動中」の表示を出入口と撮影範囲に掲示する)
- 更衣室、休憩室、トイレ前など、撮らない場所を明記しているか
- 勤務態度の評価や人事上の処分に使わない、と決めているか。使う可能性があるなら、それも先に伝える必要があります
音声まで録る機能があるカメラは、扱いが一段重くなります。会話の録音は社内の反発が強く、目的も説明しにくいので、必要がなければ音声は切る設定にしておくのが無難です。
保存期間と容量は、見積より先に決める
「いつの映像まで残っているか」は、事件や事故が起きてから初めて確認されます。そのとき「3日前のぶんはもう上書きされていた」となるのが、いちばん多い失敗です。
録画は、容量がいっぱいになると古いものから自動で消える設定が標準です。保存できる日数は、カメラの台数、解像度、フレームレート、常時録画か動体検知録画か、そして保存先の容量で決まります。台数を増やせば、同じ容量で残る日数は短くなります。
決める順序はこうです。
- まず必要な保存日数を決める(週末や連休明けに気づくことを考えると、2週間〜1か月程度を目安にする会社が多いようです)
- その日数を満たす容量を、販売店に計算してもらう。台数・画質・録画方式を伝えれば出してきます
- 見積に「この条件で約◯日」と書かせる。口頭の説明だけにしない
もうひとつ忘れられるのが、録画用ハードディスクの寿命です。常時書き込みを続ける部品なので、数年で交換が前提になります。交換費用と、交換作業を誰が頼むかを、導入時のコストに入れておいてください。
買い切りとクラウド録画、見積に出ない費用はどちらにもある
機器を買って自社に録画機を置く方式と、映像をクラウド(事業者のサーバー)に預ける方式があります。初期費用はクラウドのほうが軽く見えますが、台数×月額が続くので、数年単位では逆転することがあります。比べるときは、3年か5年の総額に直してください。
見積の外に出やすい費用は、次のあたりです。
- 配線工事と電源の確保。LANケーブルで給電する方式でも、配線を通す工事費はかかります。天井や壁の状況で金額が動きます
- ネットワーク回線の負担。台数が増えると、回線や社内のスイッチの増強が必要になることがあります
- 保守契約。故障時の駆けつけが含まれるか、機器の交換は有償かを確認します
- クラウドの保存期間を延ばすときの追加料金。標準は短めで、延長が上位プランというつくりがよくあります
- 解約したときに、預けた映像がどうなるか。契約終了後に一定期間で消えるのが普通なので、必要な映像は先に書き出す必要があります
クラウド型は申し込む形の契約です。最低利用期間、値上げの通知方法、解約予告の期間を、申込前に書面で確認してください。
賃貸オフィスは、付ける前に「外すとき」を確認する
自社ビルでなければ、カメラは壁や天井に穴を開けて取り付けることになります。ここで必要なのが貸主や管理会社の承諾です。工事の種類によっては、指定業者でないと入れないビルもあります。
退去のときに出てくるのが、撤去と原状回復の費用です。カメラ本体を外すだけでは終わらず、配線の撤去、穴の補修、天井材の張り替えまで求められることがあります。見積段階で「設置費」しか見ていないと、数年後に想定外の支出になります。
契約前に確かめる点は次のとおりです。
- 工事の承諾を、口頭ではなく書面かメールで残しているか
- 共用部(廊下、エレベーターホール、駐車場)を撮ってよいか。他テナントの出入りが映る場合は、ビル側の了解がいります
- 退去時の撤去と補修の範囲は誰の負担か
- ビル側に既設のカメラがあり、必要な映像がそちらで足りないか
最後の点は意外と効きます。共用部はビル側のカメラで記録されていて、照会の手順も決まっている場合があります。自社で付ける範囲を専有部だけに絞れば、台数も費用も下がります。
映像を出す手順を決めておかないと、現場が困る
カメラを付けたあと、実際に総務が対応するのは「映像を見せてほしい」という依頼です。ここを決めていないと、担当者がその場で判断することになります。
先に決めておくことは次の4つです。
- 映像を見られる人を限定する。管理者アカウントのパスワードを全員で共有しない。担当者が辞めるときに引き継ぐ手順も書いておきます
- 閲覧したら記録を残す。いつ、誰が、何の目的で見たかを1行で残す台帳があれば十分です
- 社外から求められたときの窓口を一本化する。警察からの照会、取引先からの依頼、従業員本人からの開示の求めで、それぞれ扱いが違います。判断は担当者任せにせず、上長と、必要なら顧問弁護士に回す流れにします
- 書き出した映像の管理。USBメモリに入れて渡したあと、そのメモリをどうするかまで決めます
ここまで決めたら、A4で1枚の「防犯カメラ運用ルール」にまとめ、就業規則や社内規程のどこに位置づけるかを社労士に相談してください。稟議には、機器の見積と一緒にこの1枚を添えます。目的・範囲・保存期間・閲覧者が書いてあれば、「監視では」という反対への回答が、紙の上で済みます。
買う前に確かめること
- 設置目的・撮影範囲・保存期間・閲覧できる人を、稟議書に4行で書いたか
- 必要な保存日数を伝え、その条件で何日分残るかを見積に明記させたか
- 賃貸なら、工事の承諾と退去時の撤去・補修の負担を書面で確認したか
- クラウド型は最低利用期間・解約予告・解約後の映像の扱いを確認したか
- 従業員への事前周知の文書と、撮影中の掲示を用意したか
- 管理者アカウントを2名以上にし、担当者交代時の引き継ぎ手順を決めたか
候補になる分類
屋内・屋外用のネットワークカメラ(LAN給電に対応したもの)
目安:1台あたり1万〜5万円程度
出入口や倉庫など、撮る場所が決まっている会社向けです。LANケーブル1本で給電と通信ができる方式は、コンセントの位置に縛られにくく、配線工事を1回で済ませやすくなります。屋外に出すなら防水・防塵の等級と、夜間の写りを確認してください。
録画機(NVR)と録画用ハードディスク
目安:3万〜15万円程度
映像を社内に置いて、月額をかけたくない会社向けです。保存日数は台数と画質と容量で決まるので、必要日数から逆算して容量を選びます。常時書き込みに耐える録画用のディスクを使い、数年ごとの交換費用も見ておいてください。
クラウド録画型のカメラサービス(月額契約)
目安:1台あたり月1,000〜3,000円程度
録画機を置く場所がない会社、複数拠点をまとめて見たい会社向けです。申し込む形の契約なので、最低利用期間、保存期間の延長料金、解約後に映像がいつ消えるかを先に確認します。台数×月額が続く点を、3〜5年の総額で比べてください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
「防犯カメラ作動中」の表示プレート・ステッカー
目安:500〜3,000円程度
撮影していることを見てわかる形にするための備品です。出入口と撮影範囲に掲示します。数百円の品ですが、これがあるかないかで、従業員や来客への説明のしやすさが変わります。屋外は退色しにくい素材を選びます。
よくある質問
従業員が映るカメラを付けるのに、一人ひとりの同意は必要ですか
同意を個別に取ることまで常に求められるわけではありませんが、目的を決めて本人がわかる形で示しておくことが前提になります。実務では、設置前に目的と範囲を文書で全員に知らせ、カメラの存在を掲示する方法が取られます。勤務態度の評価に使うかどうかは、トラブルのもとになりやすいので、使わないなら明記してください。最終的な判断は顧問の社労士や弁護士に確認するのが安全です。
ダミーカメラで代用できませんか
抑止だけが目的なら選択肢にはなりますが、事故や盗難が起きたときに映像が残りません。あとから「あのカメラは映っていなかった」と説明する場面を考えると、記録が必要な場所には本物を置くほうが筋が通ります。予算が足りない場合は、台数を絞って優先度の高い場所から実機を入れる形が現実的です。
録画はどれくらいの期間残せばよいですか
法律で一律に決まった日数があるわけではありません。週末や連休明けに気づくことを考えると、2週間から1か月程度を目安にする会社が多いようです。必要日数を先に決めて、その条件で何日分残るかを見積に書かせてください。台数や画質を上げると、同じ容量で残る日数は短くなります。
途中で担当者が辞めたら、映像は見られなくなりますか
管理者アカウントのIDとパスワードが個人のメモにしかない場合、引き継げずに詰まることがあります。導入時に管理者を2名登録し、アカウント情報は社印や鍵と同じ扱いで保管してください。クラウド型は、登録メールアドレスを個人名ではなく部署の共有アドレスにしておくと、退職時の付け替えが楽になります。