サブスク契約の棚卸し、総務が年1回やる自動更新と解約予告の確認
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この記事を読むと、社内に散らばった月額・年額のサービス契約を、年1回の決まった作業として片づけられるようになります。判断の中心は「いくら減らせるか」ではありません。「どの契約が、いつ、黙って更新されるか」を把握することです。自動更新は止め忘れた側が負けます。逆に言えば、更新日と解約予告の期限さえ台帳に載っていれば、あとは毎年同じ作業の繰り返しで済みます。
棚卸しの目的は削減額ではなく、更新日を握ること
サブスクの見直しというと、使っていないサービスを解約していくら浮いたか、という話になりがちです。しかし総務の実務で効いてくるのは、金額よりも日付です。
業務用のクラウドサービスは、ほとんどが自動更新です。月額契約なら翌月から止められますが、年額契約は違います。更新日の30日前まで、60日前まで、といった解約予告の期限が利用規約に書かれていることが多く、その日を1日過ぎると、使う予定のない1年分が確定します。しかも年額は前払いが基本で、途中解約しても日割り返金なし、という条件は珍しくありません。
ここで詰まるのは、更新日を誰も知らない状態です。申し込んだ担当者が異動していたり、クレジットカードの明細に略称で出ていて何の請求かわからなかったりします。請求額が小さいほど、誰も気にしないまま何年も流れます。
ですから、棚卸しの第一歩は解約ではありません。「契約の一覧を作り、更新日と解約予告の期限を書き込む」ことです。これができていれば、解約するかどうかは毎年その時点で決められます。できていなければ、決める機会そのものが来ません。
稟議では「経費削減」ではなく「自動更新の管理体制を作る」と書くほうが通りやすい傾向があります。削減額は事前には約束できませんが、管理の不在はそれ自体が指摘されやすいためです。
契約台帳に書く項目は、金額より先にこの6つ
台帳は専用のツールがなくても始められます。表計算ソフトのシート1枚で十分です。大事なのは項目の決め方です。次の6つを先に埋めてください。
- 契約名義(会社名義か、担当者個人名義か)。個人名義のまま会社で使っているサービスは、その人が辞めた瞬間に触れなくなります。
- 支払い方法(法人カード、口座振替、請求書払い、立替精算)。カード番号の更新で止まる契約がどれかも、ここでわかります。
- 契約期間と更新日(月額か年額か、次の更新がいつか)。
- 解約予告の期限と、解約の方法(管理画面のボタンだけで済むのか、書面やメールでの通知が要るのか)。
- 課金の単位(1アカウントいくらか、容量か、使った分か)。ここが曖昧だと、人が増えたときに請求が跳ねます。
- 社内の管理者(管理画面にログインできる人が誰か、その人が辞めたらどうするか)。
金額の欄はもちろん要りますが、最後で構いません。金額は明細を見ればわかりますが、解約予告の期限は規約を読まないと出てこないからです。
洗い出しの元ネタとして使いやすいのは、法人カードの明細、口座振替の履歴、経費精算の立替申請、そして会社ドメインのメールに届く請求通知です。この4つを突き合わせると、把握していない契約がいくつか出てくることがよくあります。
使っていないIDが減らない理由と、退職者アカウント
サブスクの無駄で一番多いのは、サービスそのものではなく、使われていないアカウントです。1人あたり月数百円から千円台でも、20も30も残っていれば年間ではまとまった額になります。
減らない理由はいくつかあります。
- 退職者のIDが止まっていない。退職時のチェックリストに、メールと勤怠は載っていても、各サービスのアカウントまでは載っていないことがあります。管理者が各サービスを個別に開いて削除しない限り、課金は続きます。
- 最低契約ID数が決まっている。10IDからの契約で、実際に使っているのが6人、という形です。この場合、4つ消しても請求は変わりません。契約の見直しが必要です。
- 年額契約の途中でIDを減らしても、減った分は返金されない。減らすなら更新のタイミングで、という条件になっているサービスは多くあります。
- 部署が勝手に増やしている。管理者権限が現場にあると、人を追加した時点で課金が増えます。請求が上がってから総務が気づく流れになりがちです。
対策は、退職時と入社時の手続きリストに「サービスごとのアカウント処理」を項目として足すことです。そして、ID追加の権限を誰が持つかを決めます。現場に持たせるなら、月次で人数を報告してもらう形にしておくと、請求の増加に説明がつきます。
解約を決める前に、データの持ち出しと保存義務を確認する
解約で本当に困るのは、お金ではなくデータです。サービスを止めた瞬間に見られなくなる情報が、社内のどこにも残っていないことがあります。
確認するのは次の点です。
- エクスポート(データの書き出し)ができるか。できる場合、どの形式か。PDFで1件ずつしか落とせない仕様だと、件数によっては現実的な作業量を超えます。
- 解約後にデータを閲覧できる期間があるか。一定期間は読み取り専用で残るサービスと、即座に削除されるサービスがあります。
- 法令で保存が必要な書類が含まれていないか。請求書・領収書・契約書・給与関係の帳簿などは、法令上の保存期間が定められています。電子で受け取ったものを電子で保存している場合、サービスを解約したあとの保存方法を先に決めておく必要があります。税務の扱いは顧問税理士に確認してください。
- 解約ではなく、安いプランへの変更で閲覧だけ残せないか。読み取り専用の低額プランが用意されているサービスもあります。データの移し替えが大変なときは、こちらのほうが結果的に安く済むことがあります。
作業の順番としては、エクスポートを先に済ませ、中身が開けることを確認してから解約手続きに進みます。解約を申し込んでから書き出そうとすると、期限に追われます。
年1回の棚卸しを、カレンダーに固定する
棚卸しは、思い立ったときにやると続きません。期を決めて固定してください。
現実的なのは、予算編成の時期に合わせる方法です。来期の予算を組む前に一覧を更新すれば、継続・解約・プラン変更の判断がそのまま予算の根拠になります。経営から「この費目は何か」と聞かれたときに、台帳がそのまま答えになります。
作業は次の流れで進めます。
- 法人カード明細と口座振替の履歴から、1年分の定期支払いを抜き出す。
- 台帳と突き合わせ、載っていない契約を追加する。
- 各サービスの管理画面でアカウント数と利用状況を確認する。ログイン履歴が見られるサービスなら、直近数か月使われていないIDを拾う。
- 更新日が近い順に並べ替え、解約予告の期限をカレンダーに登録する。登録先は個人の予定表ではなく、総務で共有している予定表にします。担当が替わっても残るようにするためです。
- 継続するものは、来期の予算に金額を入れる。
解約を現場に提案すると、反対が出ることがあります。「たまに使う」「あれがないと困る」という声です。このときは、直近の利用実績を数字で示し、代わりの手段があるかを一緒に確認してください。削ること自体を目的にすると、現場との関係が悪くなり、翌年から協力が得られなくなります。目的はあくまで、更新日を把握して、決める機会を毎年作ることです。
で、まず何から手をつけるか
最初の1回は、完璧を目指さないでください。全部のサービスを洗い出そうとすると終わりません。
始め方としては、法人カードの直近12か月分の明細を開き、毎月または毎年同じ金額で引き落とされているものに印をつけます。これだけで、定期契約の大部分が見えます。印をつけたものについて、サービス名・契約名義・更新日・解約予告の期限の4項目だけを埋めます。金額や利用状況は後回しで構いません。
次に、更新日が3か月以内に来るものを抜き出し、解約予告の期限をカレンダーに入れます。ここまでで、黙って1年分更新される事故はかなり減ります。
そのうえで、残りの契約を数か月かけて埋めていき、来期の予算編成までに一覧を完成させます。2年目からは更新作業だけになるので、負担は大きく下がります。
社内で説明するときは、「無駄遣いを探す」ではなく「契約の期限を管理する仕組みを作る」と伝えてください。前者は現場の反発を招きますが、後者に反対する人はあまりいません。
買う前に確かめること
- 法人カードと口座振替の12か月分の明細から、定期支払いを全部抜き出したか
- 各契約の更新日と解約予告の期限を調べ、共有カレンダーに登録したか
- 会社名義でなく担当者個人名義になっている契約がないか確認したか
- 退職時・入社時の手続きリストに、サービスごとのアカウント処理を入れたか
- 解約を検討する契約について、データの書き出し方法と保存義務を確認したか
- 最低契約ID数やプラン変更の条件を、更新前に規約で確かめたか
候補になる分類
サブスクリプション・SaaS契約管理ツール(申し込み型のサービス)
目安:月額1万円台〜(契約数や機能で変動)
契約数が数十を超え、表計算シートでの管理が追いつかなくなった会社向けです。カード明細やメールから契約を自動で拾う機能を持つものがありますが、拾えない契約は結局手で入れる必要があります。まずは手作業の台帳で全体像をつかんでから、導入の是非を判断するほうが失敗しにくい進め方です。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
法人向けパスワード・アカウント管理ツール(申し込み型のサービス)
目安:1ユーザーあたり月数百円〜千円台
各サービスの管理者IDが特定の個人に紐づいたままだと、その人の退職や休職で管理画面に入れなくなります。共有の保管庫に集約しておくと、担当交代のときに引き継ぎが止まりません。導入時は、退職者のアクセスをどう止めるかの手順まで決めてから入れてください。
これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。
契約書・申込書を紙で残すためのファイルボックスやキャビネット
目安:1個あたり数百円〜3千円程度
電子で完結する契約でも、申込時の条件や解約予告の規約を印刷して1か所にまとめておくと、更新時の確認が早くなります。サービスを解約したあとは管理画面を見られなくなるため、条件の控えが手元にあるかどうかで後の確認のしやすさが変わります。
よくある質問
解約予告の期限を過ぎてしまいました。もう1年分払うしかないですか。
まずは契約した事業者に連絡し、途中解約や次回更新での停止が可能か確認してください。規約上は不可でも、運用で応じてもらえる場合があります。ただし応じてもらえる保証はありません。同じことが起きないよう、更新日と予告期限を共有カレンダーに登録するところまでを今回の対応に含めてください。
担当者が個人のクレジットカードで申し込んだサービスが見つかりました。どうすべきですか。
会社名義の支払い方法への切り替えを優先してください。個人名義のままだと、その人の退職時に支払いが止まり、サービスが突然使えなくなるおそれがあります。切り替えができない契約なら、会社名義で契約し直すか、別の手段に移すかを検討します。
現場が「必要だ」と言うサービスを、総務の判断で解約してよいですか。
いきなり止めるのは避けたほうが無難です。直近の利用実績を示したうえで、使う頻度と代わりの手段を現場と確認してください。判断に迷うものは、次の更新までの期間を猶予として設定し、その間の利用状況で決めると説明がつきやすくなります。