オフィスの選びかた

中小企業の総務が決裁する「契約」と「買いもの」を、実際に決裁した側の目線で選ぶための記録。

産業医とストレスチェックの契約、従業員50人を超える前に総務が決めること

2026-09-08 産業医ストレスチェック労務従業員50人総務の稟議

この記事で紹介しているのは、申し込む形のサービスです。現在、アフィリエイトの提携はありません。

この記事を読むと、「うちはいつまでに何を契約すればいいか」と「その契約をどうやって稟議に載せるか」が決まります。従業員50人という線を越えると、総務の仕事は一段増えます。慌てて紹介サービスに申し込むと、あとで産業医を替えたいときに動けなくなることがあります。先に順番と契約条件を押さえておきましょう。

「従業員50人」は正社員だけの数ではありません

最初につまずくのがここです。50人という基準は、正社員の頭数ではありません。パート・アルバイトを含む「常時使用する労働者」で数えます。週の労働時間が短い人も、継続して雇っていれば原則として含まれます。役員は原則含みませんが、使用人兼務役員のような立場だと判断が分かれます。迷ったら社労士か労働基準監督署に確認してください。

もう一つ大事なのが、会社全体ではなく「事業場ごと」に数える点です。本社40人・支店20人の合計60人なら、それぞれが50人未満なので選任義務は発生しません。逆に、本社に55人が集まっていれば、会社全体が55人でも本社は義務の対象です。テレワーク中心の会社では、どの拠点に所属させているかで数字が変わります。

  • 雇用契約書と社会保険の加入者名簿を並べて、拠点別に数える
  • 採用予定を足して、いつ50人に届くかを先に出しておく
  • 派遣で受け入れている人の扱いは、派遣元・派遣先どちらで数えるか確認する

50人は「越えてから考える」と間に合いません。48人あたりで準備を始めるのが現実的です。

50人を超えた月に増える手続きは、ひとつではありません

産業医の選任だけだと思っていると、あとから追加が出てきます。おおむね次のものが同時に発生します。

  • 産業医の選任(選任後、労働基準監督署へ報告書を提出)
  • 衛生管理者の選任(社内から資格者を出す必要があります)
  • 衛生委員会の設置と、月1回程度の開催・議事録の保存と社員への周知
  • ストレスチェックの年1回程度の実施と、監督署への結果報告
  • 定期健康診断の結果報告書の提出

このうち社内の負担が重いのは、実は衛生管理者と衛生委員会です。衛生管理者は原則として社内の人が国家資格を取る必要があり、講習と試験の日程を押さえると数か月かかることがあります。「誰に取らせるか」は総務が一人で決められない話なので、早めに役員会に上げてください。

衛生委員会も、作って終わりではありません。毎月の開催と記録が残っていないと、監督署の調査で真っ先に見られます。議題が思いつかないという相談をよく聞きますが、健診の受診率、長時間労働者の状況、季節ごとの注意喚起など、産業医が議題を出してくれる契約もあります。契約前に「衛生委員会に出席してもらえるか」を聞いておくと後が楽です。

産業医を探すルートは3つ。費用の出方が違います

探し方はおおよそ3通りです。それぞれ費用と手間の性質が違います。

  • 地域の産業保健総合支援センターや地域窓口を使う方法。50人未満の事業場向けの無料相談枠が中心で、50人以上になると選任の代わりにはなりません。ただ、産業医を探す前の相談先としては有効です。
  • 地域の医師会や、社員が使っている健診機関から紹介してもらう方法。地元の開業医が引き受けてくれることがあります。報酬は直接交渉で、月額の相場はおおよそ3万〜10万円程度と幅があります。訪問頻度や職場巡視の有無で変わります。
  • 産業医の紹介・仲介サービスを使う方法。最短で見つかりますが、月額に紹介会社の手数料が乗ります。合わなかったときの交代に対応してくれるのが利点です。

どのルートでも、契約前に確かめることは同じです。訪問頻度(50人規模なら月1回程度が基本)、1回の滞在時間、職場巡視をするか、面接指導(長時間労働者や高ストレス者との面談)が月額に含まれるか、含まれない場合の1件あたりの追加料金。この「追加料金」が後から効いてきます。残業が増えた月に面談が続くと、想定より支払いが膨らみます。

契約書で先に読むのは、期間・解約予告・引き抜き条項です

継続契約は、入るときより、やめるときに詰まります。産業医の契約も同じです。

見るべきは3か所です。まず契約期間。1年契約の自動更新が多く、更新拒否は「満了の1〜3か月前までに書面で」といった条件が付きます。この期限を1日過ぎると、もう1年続きます。カレンダーに入れておいてください。

次に途中解約。産業医は法律上の選任義務があるので、後任が決まる前に切ることができません。「解約通知から後任の選任までの間、誰が対応するか」を紹介会社に確認しておきます。

三つ目が引き抜き(直接契約)の禁止条項です。紹介サービス経由で来てもらった先生と相性が良く、手数料を省いて直接契約にしたい、という話はよく出ます。契約書には、契約終了後の一定期間は直接契約を禁じる条項や、違約金の定めが入っていることがあります。読まずに直接契約にすると、あとで請求が来ます。やるなら、紹介会社に正面から相談して、移行の条件を書面でもらってください。

もうひとつ実務的な話をすると、産業医を替えると、それまでの面談記録や就業判定の経緯が途切れます。休職・復職の対応中に交代すると、本人にもう一度事情を説明させることになります。人が休んでいる時期の切り替えは避けるのが無難です。

ストレスチェックの委託は「誰が結果を見るか」で決まります

ストレスチェックは、値段だけで選ぶと運用でつまずきます。決め手は結果の取り扱いです。

実施者になれるのは医師・保健師など決められた立場の人です。個人の結果を、本人の同意なく会社側が見ることはできません。ここを勘違いして「部署別に誰が高ストレスか知りたい」と言い出す役員がいます。できない、と最初に説明しておいてください。人事権を持つ人は実施事務従事者になれないという制約もあり、総務担当者が兼任できるかどうかは自社の役割分担次第です。

委託先を選ぶときに確かめる点です。

  • 実施者を業者側で用意してくれるか、自社の産業医に依頼するのか
  • 紙とWebのどちらに対応するか(現場作業が多い会社は紙が要ります)
  • 集団分析(部署ごとの傾向)が標準か追加料金か
  • 監督署に出す報告書の作成を手伝ってくれるか
  • 高ストレス者から面接指導の申出があったときの流れを誰が回すか

費用はおおよそ一人あたり数百円から千円台、これに初期設定費用が乗る形が多いです。安さで乗り換える会社もありますが、業者を替えると過去の回答データを引き継げないことがあります。集団分析の経年比較をしたいなら、契約前にデータの出力形式とエクスポートの可否を確認してください。

契約後に総務へのしかかる、カタログに出ない仕事

見積書には出てこないのに、確実に発生する仕事があります。先に想定しておくと、社内の反発が減ります。

  • 産業医が来る日の個室確保。面談は他の社員に聞かれない場所が必要です。会議室が1つしかない会社では、月1回その日は会議が入れられません。
  • 健診結果と面談記録の保管。健康情報は特に配慮が必要な個人情報です。鍵のかかる場所か、アクセス権を絞った保存先が要ります。誰が見られるかを決めた取扱規程を作っておくと、あとで揉めません。
  • 健診の未受診者への催促。これが一番地味で、一番時間を取られます。受診が業務であること、費用は会社負担であることを、毎年アナウンスすることになります。
  • 再検査の扱い。定期健診の費用は会社負担ですが、再検査の費用まで会社が持つかは会社の判断です。決めていないと、その場の空気で決まってしまいます。

稟議の通し方も一言。産業医やストレスチェックは「コスト」ではなく「選任しないと是正指導や罰則の対象になりうる法定義務」です。稟議書には、対象人数、いつ50人を超えるか、未対応のリスク、年間見込み額、比較した3社の条件を1枚にまとめます。金額の妥当性より、期限があることを先に書くほうが通ります。

で、どの順番で進めればいいか

手順にすると、こうなります。

1. 拠点ごとに常時使用する労働者を数え、50人に届く時期を出す。採用予定も足す。2. 衛生管理者の候補を決め、講習・試験の日程を押さえる。ここが一番リードタイムが長い。3. 産業医の候補を、医師会・健診機関・紹介サービスの3ルートから2〜3件集める。訪問頻度、面談の追加料金、衛生委員会への出席可否を同じ表に並べる。4. 契約書の期間・更新拒否の期限・途中解約・直接契約の禁止条項を確認する。不明点は口頭でなくメールで回答をもらう。5. ストレスチェックの委託先を決める。実施者を誰が用意するか、データの持ち出しができるかを確認する。6. 50人を超えたら、選任と各報告書の提出、衛生委員会の初回開催まで一気に進める。

50人未満の会社でも、地域の窓口で健康相談を受けられる仕組みがあります。義務が来る前に一度使ってみると、産業医に何を頼めるのかが体感でわかります。準備は、忙しくなる前の今のうちに始めてください。

買う前に確かめること

  • 拠点ごとにパートを含めて人数を数え、50人に届く月を出したか
  • 衛生管理者の候補者と、講習・試験の日程を押さえたか
  • 産業医契約の面談・追加訪問が月額に含まれるか、別料金かを確認したか
  • 契約期間・更新拒否の期限・直接契約の禁止条項をメールで確認したか
  • ストレスチェックの過去データを、解約時に持ち出せるか確認したか
  • 面談用の個室と、健康情報の保管場所・閲覧権限を決めたか

候補になる分類

産業医の紹介・仲介サービス(月額契約型)

目安:月額 約3万〜10万円(訪問頻度・面談の追加料金で変動)

社内に医療関係のつてがなく、期限までに選任を済ませたい会社向けです。相性が合わないときの交代に対応してもらえる点が利点ですが、月額に手数料が含まれ、直接契約への切り替えが制限される場合があります。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

ストレスチェック受託サービス(Web・紙の併用型)

目安:1人あたり 約数百円〜千円台+初期設定費用

実施者や事務局を社内で用意しにくい会社に向きます。現場作業が多く全員がPCを使わない会社は、紙の回答に対応できるかを先に確認してください。集団分析と監督署への報告書作成の対応範囲で選びます。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

健診代行・健康管理クラウド(結果の保管と受診管理)

目安:月額 約1万〜数万円(人数課金が中心)

健診の予約、未受診者の催促、結果データの保管を一元化したい会社向けです。人数が50人を超えると紙の管理が破綻しやすくなります。契約終了時にデータを自社形式で持ち出せるかを必ず確認してください。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

よくある質問

本社と支店を合わせて60人です。産業医は必要ですか。

産業医の選任義務は、会社全体ではなく事業場ごとの人数で判断するのが原則です。本社40人・支店20人ならどちらも50人未満なので、選任義務は発生しません。ただし健康相談や健診の実施義務はあるため、地域の産業保健の窓口を活用する方法があります。所属拠点のつけ方が実態と合っているかも一度確認してください。

産業医を替えたいのですが、途中で解約できますか。

契約上は解約予告期間を守れば可能なことが多いですが、選任義務がある以上、後任が決まらないまま空白を作ることはできません。紹介サービス経由の場合、契約終了後に同じ医師と直接契約することを禁じる条項が入っていることがあります。休職者の対応中は記録が途切れるため、交代の時期をずらすほうが安全です。

ストレスチェックの結果を、部署ごとに見て人事に活かしたいのですが。

個人の結果を本人の同意なく会社が見ることはできません。一方で、一定人数以上の集団で集計した分析結果であれば、職場環境の改善に使えます。ただし少人数の部署は個人が特定されるため、集計の最低人数を委託先と決めておいてください。人事権を持つ人が実施事務に関われない点にも注意が必要です。

← 記事の一覧にもどる