人材派遣の受け入れ、総務が契約前に確かめる抵触日と中途解約
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この記事を読むと、人材派遣を使うかどうかを、単価の比較ではなく「契約の型」と「やめ方」で判断できるようになります。派遣は、申し込めば翌週から人が来る手軽さがある一方で、受け入れる側の会社にも法律上の義務が生じる契約です。しかも、もめるのは入れるときではなく、期間が切れるときと、途中でやめるときです。先に決めておくのは、誰が指揮命令をするか、いつまで使えるか、途中でやめたらいくらかかるか、の3点です。
派遣・業務委託・紹介、まず契約の型を分ける
外から人の力を借りる方法は、大きく3つあります。社内説明では、ここを混ぜないことが出発点です。
- 労働者派遣:雇用主は派遣会社、指揮命令はこちら。つまり「仕事の指示を自社が出してよい」のが特徴です。その代わり、期間制限や台帳の作成など、受け入れ側にも義務がつきます。
- 業務委託(請負・準委任):仕事の完成や遂行を外部に任せる形です。こちらから個々の作業指示や勤務時間の指定はできません。ここを守らずに自社の社員と同じように指示を出すと、形式は委託でも実態は派遣とみなされる、いわゆる偽装請負の状態になります。
- 人材紹介:採用して自社の社員にする形です。成功報酬が発生し、早期退職時の返金規定の有無が論点になります。
「指示を出したいかどうか」で切り分けると、ほぼ迷いません。毎日の段取りをこちらで決めたい業務なら派遣、成果物を納めてもらえばよい業務なら委託です。安いからという理由で委託にして、現場が細かく指示を出してしまう形が、いちばん危ない組み合わせです。
契約前に派遣先が出す書類がある:抵触日通知と待遇情報
派遣は「申し込む側」が書類を出す契約です。ここを知らないまま見積だけ取っていると、契約直前で止まります。
受け入れ側が用意するものとして、一般に次が挙げられます。
- 事業所単位の期間制限に関する抵触日の通知。いつまで派遣を受け入れられるかを、あらかじめ書面などで派遣会社に伝えることが求められます。これを出さないと契約を結べない取り扱いです。
- 比較対象労働者の待遇に関する情報の提供。派遣スタッフの待遇を決めるために、自社の同じような業務に就く社員の賃金や手当、教育訓練の情報を派遣会社に渡す必要があります。派遣会社が労使協定方式を採っている場合は提供範囲が変わりますが、いずれにしても自社の賃金情報を整理する作業が発生します。
- 指揮命令者、苦情の申出先、就業場所、業務内容などを契約書に明記すること。
ここで詰まるのは、自社の賃金表や手当の支給基準が文書になっていない会社です。資料を作るところから始まるため、着任希望日の2〜3週間前には動き出しておくと安全です。人事の繁忙期と重なると、ここだけで1週間溶けます。
3年ルールは2種類ある。延長には社内手続きがいる
派遣の期間制限は、原則として2つの軸があります。混同されがちなので、稟議には両方書いてください。
- 事業所単位:同じ事業所で派遣を受け入れられるのは原則3年までです。延長するには、事業所の過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)への意見聴取という社内手続きが必要になります。
- 個人単位:同じ人を、同じ課などの組織単位で受け入れられるのは原則3年までです。こちらは意見聴取では延びません。課を変えるか、直接雇用に切り替えるか、交代してもらうかになります。
例外として、派遣会社に無期雇用されている方や、一定の年齢以上の方などは期間制限の対象外とされる扱いがあります。長く来てほしい業務なら、契約前に「この方は期間制限の対象か」を派遣会社に確認しておくと、3年目の慌てがなくなります。
もうひとつ、実務で引っかかるのが離職後1年以内のルールです。自社を退職した人を、その後1年以内に派遣として同じ会社で受け入れることは、原則としてできません。「退職した経理担当に派遣で戻ってきてもらおう」という発想は、ここで止まります。知らずに話を進めると、本人にも断りを入れることになります。
時間単価では比べられない。費用は4つに分けて見る
派遣会社の提示は時間単価が中心ですが、支払総額はそれだけで決まりません。見積を並べるときは、次の4つに分けて書き出すと比較できます。
- 基本の時間単価と、精算幅(月の稼働時間の下限・上限)。幅の外に出たときの控除・加算の単価が別に決まっていることがあります。
- 時間外・休日・深夜の割増の扱い。単価に法定の割増を掛けるのか、別単価なのかで、残業が多い部署では差が出ます。
- 交通費の扱い。単価に含むのか、実費を別請求するのか。遠方から通ってもらう場合は月額で無視できない額になります。
- 直接雇用に切り替える場合の手数料。派遣から自社の社員にするときに、紹介手数料が発生する契約が一般的です。紹介予定派遣では、切り替え時の手数料率や、派遣期間の長さによる減額の有無を先に確認します。
さらに、カタログに出ない費用として、受け入れ側の負担があります。貸与するパソコンとアカウント、入館証、机と椅子、教育にかかる社内の時間です。1人受け入れるたびに情報システムの初期設定が発生する会社では、短期の入れ替わりが続くと社内工数のほうが高くつくこともあります。
やめるときが本番:中途解約で派遣先が負うもの
継続契約は、入るときより、やめるときに詰まります。派遣も同じです。
受け入れ側の都合で契約期間の途中に解約する場合、派遣法や関連する指針では、派遣先に次のような対応が求められています。
- あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣会社に申し入れること。実務では30日以上前の予告が目安とされます。
- 派遣会社が別の就業先を見つけられるよう協力すること。
- それでも就業先が見つからない場合、派遣会社が負担する休業手当などの費用について、損害賠償の形で負担すること。予告が30日に足りないときは、不足日数分を基準に算定する考え方が示されています。
つまり「来月から要りません」は、無料ではありません。繁忙期だけ使うつもりが、業務が早く終わって余った、という場面で効いてきます。契約期間は、短めに区切って更新していくほうが、総額では読みやすくなることが多いです。
あわせて契約書で見るのは、派遣スタッフ側の事情で急に来られなくなったときの代替要員の扱いです。「努力する」としか書かれていないことも多く、実際にどこまで動いてくれるかは営業担当との会話で確かめるしかありません。
受け入れ初日までに決める指揮命令者と台帳
契約が済んだら、現場の準備です。ここを総務が仕切らないと、現場任せになって形が崩れます。
決めることは次のとおりです。
- 指揮命令者を1人に決める。複数の人がばらばらに依頼を投げると、契約書に書いた業務の範囲を超えがちです。契約外の業務を頼むのは、本来できません。
- 苦情の申出先を決めて、本人に伝える。派遣会社側の窓口と、自社側の窓口の両方です。
- 派遣先管理台帳を作り、就業日や時間、業務内容を記録する。作成と一定期間の保存が義務づけられています。月に一度、派遣会社へ就業実績を通知する運用も必要です。
- 自社の社員が使う食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設は、派遣スタッフにも利用の機会を与えることが求められています。入館証や社内システムの閲覧範囲とあわせて、初日までに整理しておきます。
よくあるのは、現場が親切心から正社員と同じように扱い、採用面接のような場に同席させたり、他部署の業務を頼んだりしてしまうことです。善意でも契約違反になり得ます。受け入れ部署には、A4一枚で「頼んでよいこと・いけないこと」を渡しておくと揉めません。
で、どう進めるか。契約前にやる順番
手順にすると、次の流れになります。
1. 業務を棚卸しして、指示が要る業務か、成果物を納めてもらう業務かを分ける。後者なら派遣ではなく委託を検討します。
2. 期間を決める。3年を超えて続けたい業務なら、個人単位の制限と直接雇用への切り替え、その際の手数料まで含めて見積もります。
3. 社内資料を用意する。事業所単位の抵触日、比較対象となる社員の待遇情報、就業場所と業務内容です。ここがいちばん時間を食います。
4. 2〜3社から見積を取り、時間単価・精算幅・割増・交通費・切り替え手数料の5項目を同じ表に並べる。合計額は、想定残業時間を入れた月額で比べます。
5. 契約書で、中途解約の予告期間と費用負担、代替要員、更新の判断期限を確認する。
6. 稟議には「採用と比べてどうか」を1行入れる。派遣は固定費を抱えずに済む代わりに、長く使うほど割高になりやすい性質があります。期間が読めない業務ほど、この比較が効きます。
金額の妥当性だけでなく、いつまで・どうやめるかが書かれた稟議は、通りやすくなります。
買う前に確かめること
- 指示を出したい業務か、成果物を納めてもらう業務かを切り分けたか
- 事業所単位の抵触日と、個人単位の3年の両方を確認したか
- 比較対象となる社員の待遇情報を、契約前に用意できるか
- 時間単価・精算幅・割増・交通費・切り替え手数料を同じ表で比べたか
- 中途解約時の予告期間と費用負担が契約書に書かれているか
- 指揮命令者と苦情の申出先を決め、受け入れ部署に伝えたか
候補になる分類
一般的な人材派遣(事務・軽作業などの職種別派遣会社)
目安:時間単価でおおよそ1,800〜3,000円程度(職種・地域による)
繁忙期や欠員の穴埋めなど、期間が区切れる業務に向きます。地域と職種によって得意な会社が違うため、全国規模の1社だけでなく、地元に強い会社も候補に入れると条件を比べやすくなります。
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紹介予定派遣
目安:派遣料金に加え、切り替え時に理論年収の数%〜20%程度の手数料が設定されることが多い
将来は自社の社員にしたいが、いきなり採用するのは不安という場合の選択肢です。切り替え時の手数料率と、派遣期間に応じた減額の有無を契約前に確認しておくと、後で費用が膨らみません。
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無期雇用型・専門職特化型の派遣
目安:時間単価でおおよそ2,500〜4,500円程度(専門性による)
経理や情報システムなど、入れ替わると業務が止まる領域に向きます。派遣会社に無期雇用されている方は期間制限の対象外とされる場合があり、長期で任せたい業務では確認する価値があります。
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業務委託(アウトソーシング)
目安:月額数万円〜、業務量と範囲で大きく変動
こちらから日々の指示を出す必要がなく、成果物や処理件数で任せられる業務に向きます。給与計算や請求書発行のように手順が固まった業務は、派遣より委託のほうが社内工数が減ることがあります。
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よくある質問
派遣で来てもらっている人に、契約書に書いていない業務を頼んでもよいですか。
原則としてできません。労働者派遣契約に記載した業務の範囲が、指示してよい範囲です。業務が増えたり変わったりする場合は、契約内容の変更を派遣会社と取り交わしてから依頼してください。現場の善意で頼んでしまう場面が起きやすいので、受け入れ部署に業務範囲を紙で渡しておくと防げます。
3年たったら、その人にはもう来てもらえないのですか。
同じ組織単位で同じ方を受け入れられるのは原則3年までですが、例外があります。派遣会社に無期雇用されている方などは期間制限の対象外とされる扱いがあります。また、直接雇用に切り替える道もあります。切り替えには手数料が発生する契約が一般的なので、3年目に慌てないよう、2年目の段階で派遣会社と条件を話しておくと選びやすくなります。
業務が早く片づいたので、契約期間の途中で終了したいのですが。
受け入れ側の都合による中途解約は、無償ではありません。相当の猶予をもって申し入れること、派遣会社の新しい就業先探しに協力すること、見つからない場合は休業手当などの費用を負担することが求められています。期間はあらかじめ短めに区切り、更新していく形にすると、こうした負担を避けやすくなります。
退職した元社員に、派遣として戻ってきてもらうことはできますか。
離職後1年を経過していない場合、同じ会社で派遣として受け入れることは原則としてできません。業務を知っている人に戻ってほしいという相談はよく出ますが、ここで止まります。別の形(業務委託が成り立つ業務か、再雇用か)を検討することになります。