OFFICE CHOICEオフィスの選びかた

年末調整の電子化、総務が申し込む前に決める紙の併用と回収の締切

2026-10-13 年末調整労務手続き給与計算総務の稟議電子化

この記事で紹介しているのは、申し込む形のサービスです。現在、アフィリエイトの提携はありません。

この記事を読むと、年末調整の電子化に今年踏み切るかどうかを、社内で説明できる形で判断できます。判断の中心は、ソフトの月額ではありません。「自社の給与計算が誰の手で回っているか」「従業員側が電子データを用意できるか」「紙をどこまで残すか」の3点です。この3点を決めずに申し込むと、Webと紙の二重運用になり、総務の作業はむしろ増えます。年末調整は年に一度しか練習できません。だから、始める前の設計がそのまま結果になります。

電子化で減る手間と、電子化しても減らない手間を分ける

年末調整の電子化とは、扶養控除等申告書や保険料控除申告書を、紙ではなく従業員がパソコンやスマートフォンの画面で入力し、そのデータを給与計算に取り込む仕組みのことです。

減る手間は、はっきりしています。・用紙の印刷と配付、回収の袋詰め・手書きの文字を読んで給与ソフトに打ち込む作業・控除額の手計算と検算・記入漏れの目視チェック(入力時にその場でエラーが出るため)

一方で、減らない手間もあります。ここを稟議で正直に書いておかないと、翌年「結局忙しかったじゃないか」と言われます。・未提出者の催促。これは紙でもWebでも総務が追いかけます。・内容の相談対応。扶養に入れてよいか、同居か別居か、といった質問は電子化では減りません。むしろ画面の操作質問が上乗せされます。・年末調整が終わったあとの処理。住民税の給与支払報告書、源泉徴収票の配付、過不足額の反映は従来どおりです。

期待値を「入力と転記が消える」に置くと、評価がぶれません。「全部が自動になる」と説明すると、初年度に必ず落胆が出ます。

自社の給与計算が誰の手にあるかで、選べる方式が決まる

方式を先に選ぶのではなく、今の体制から逆算します。現実的には次の3通りです。

  • 給与計算を自社でクラウドの給与ソフトを使って行っている場合。多くのソフトに年末調整の申告機能が付いています。追加オプションで使えることもあります。この場合は、まず契約中のソフトでどこまでできるかを確認するのが先です。別サービスを足すと、従業員番号や扶養情報の二重管理が発生します。
  • 給与計算をアウトソースしている、または社労士・税理士に委託している場合。委託先が受け取れるデータ形式が決まっていることがあります。自社が勝手に電子化すると、結局は委託先向けに紙かExcelへ戻す作業が発生します。先に委託先へ「電子データで渡せるか、形式は何か」を聞いてください。
  • 給与計算が古いソフトやExcelで動いている場合。年末調整だけを単独の申告サービスで電子化しても、取り込み口がないため転記が残ります。この場合は、年末調整の電子化より給与計算側の見直しが先になることがあります。

判断の順番は、給与計算の置き場所が先、年末調整の画面は後です。逆にすると、入力されたデータの行き先がなくなります。

従業員側でつまずくのは、控除証明書とログインの2つ

電子化の失敗は、総務側ではなく従業員側で起きます。多いのは次の2点です。

一つめは、保険料控除証明書などの電子データです。保険会社や金融機関が発行する電子的な証明書を取り込めれば入力はほぼ不要になりますが、全員がそろえられるとは限りません。紙の証明書しか手元にない人、契約が古くて電子発行に対応していない人、マイナポータル(行政手続きのオンライン窓口)との連携をまだ設定していない人がいます。結果として、金額を画面に手入力し、紙の証明書は別途提出、という形が残ります。初年度は「電子データと紙が混ざる」前提で手順を作ってください。

二つめは、ログインです。会社のメールアドレスを持っていない従業員、スマートフォンに会社のアプリを入れたくない従業員、パート・アルバイトで出勤日が限られる人がいます。ID配付と初回パスワード設定の案内だけで、問い合わせが集中します。

確かめるのは次の点です。・会社貸与の端末がない人がどれだけいるか・個人のスマートフォンで入力してもらうことを就業上どう扱うか・入力用のパソコンを休憩室などに1台用意できるか・扶養家族のマイナンバーをどの画面で、誰が見られる形で集めるか

紙をゼロにしない。併用の線引きを先に決めて文書にする

年末調整の電子化は、全員が電子でなくても成立します。初年度から紙を禁止すると、提出期限に間に合わない人が出ます。先に線引きを決めて、社内通知に明記してください。

決めておくこと。・原則は電子、例外として紙を認める対象(端末を持たない職種、長期休業中の人など)・紙で出た分を誰が入力するか(総務が代行入力するのか、本人に出社してもらうのか)・電子データと紙の証明書が混在したときの保管方法・提出の締切を2本立てにするか(紙は電子より早め、が実務的です)

保存についても確認が要ります。申告書類は、税務署から求められたときに提示できる状態で、おおむね数年単位の保存が必要とされています。具体的な年数と、電子のまま保存してよい範囲は、自社の税理士や国税庁の案内で確認してください。なお、以前は電子で受け取るために税務署への事前承認が必要でしたが、制度改正により不要とされています。この点も最新の取扱いをご確認ください。

サービスを解約した後に、過去年分のデータを誰が持つのかも、申し込み前に聞いておく項目です。

費用はソフト代だけでは終わらない。継続費用とやめるときの話

見積に出るのは利用料です。従業員1人あたりの月額課金、年末調整の期間だけの従量課金、給与ソフトのオプション料金など、形はさまざまです。金額よりも、次の条件を確かめてください。

  • 課金の対象人数は、在籍者か、年末調整の対象者か、退職者を含むか。中途退職者や年の途中で入った人の扱いで、想定より人数が増えることがあります。
  • 年末調整の期間だけ使う契約でも、最低利用期間や自動更新の条項があるか。
  • 初期設定の支援が有料か。初年度は項目の設定と従業員情報の取り込みに手がかかります。
  • 問い合わせ窓口が、11月から12月にどれだけつながるか。繁忙期に電話がつながらないサービスは、総務の残業に直結します。

カタログに出ない費用は、初年度の説明コストです。全従業員向けの案内文、操作の手引き、質問対応に時間が取られます。人数が数十人規模でも、説明会や動画の用意に数時間から十数時間はみておく想定が現実的です。

やめるときは、当年分の処理が終わってから解約日を置くことです。年をまたいで解約すると、源泉徴収票の再発行や訂正のときに画面が見られなくなります。

今年やるなら逆算する。稟議に書く3行はこれ

年末調整は時期が固定されています。間に合わない導入は、やらないほうが安全です。おおよその逆算は次のようになります。

  • 10月ごろまでに、サービスの選定と契約、従業員情報の取り込みを終える
  • 11月の早い時期に、ID配付と案内、入力の開始
  • 11月末から12月初旬を入力の締切にし、紙組はそれより前倒し
  • 12月の給与または翌月の給与で過不足を精算

この逆算に乗らないと判断したら、今年は紙で回し、来年に向けて給与ソフト側の整理から始めるのが順序として安全です。遅らせるのは失敗ではありません。

稟議には、金額の前に次の3行を書いてください。・現状の年末調整にかかっている総務の作業時間(直近の実績を自社で数えた値だけを書く)・電子化で減る作業と、減らない作業・初年度に増える作業(説明、問い合わせ対応)と、その担当者

「楽になります」だけで出すと、翌年に効果を問われて答えられません。減る作業と増える作業を両方書いた稟議は、通りやすく、あとで守りやすい形になります。

買う前に確かめること

  • 契約中の給与ソフトに年末調整機能が付いているか、追加料金かを先に確認したか
  • 給与計算の委託先が電子データを受け取れるか、形式は何かを聞いたか
  • 会社の端末やメールアドレスを持たない従業員が何人いるかを数えたか
  • 紙での提出を認める対象と、その締切を社内通知に明記したか
  • 課金の対象人数(退職者・中途入社の扱い)と自動更新の条項を確認したか
  • 解約後に過去年分のデータを書き出せるか、保存年数を税理士に確認したか

候補になる分類

給与計算クラウドに付属する年末調整機能(申告書をWeb入力できるもの)

目安:従業員1人あたり月額おおよそ数百円程度(給与ソフト料金に含まれる場合あり)

すでにクラウドの給与ソフトを使っている会社に向きます。従業員情報や扶養情報を二重に持たずに済むため、総務の管理対象が増えません。まず現契約でどこまでできるかを確認してから、他を検討する順番が安全です。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

年末調整に特化したクラウド申告サービス(既存の給与ソフトと連携できるもの)

目安:年末調整の期間のみの従量課金で、1人あたりおおよそ数百円〜千円台程度

給与計算は変えたくないが、申告書の回収と転記だけを減らしたい会社に向きます。選ぶときは、自社の給与ソフトへ取り込める形式で出力できるかが分かれ目です。連携できない組み合わせだと、結局は手入力が残ります。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

年末調整業務の外部委託(給与計算代行や社労士・税理士のオプション)

目安:人数と範囲により幅が大きく、1人あたり数千円程度からの見積が一般的

総務が1人または兼任で、11〜12月にほかの繁忙期が重なる会社に向きます。委託先が受け取れるデータ形式と、問い合わせ対応をどちらが持つかを契約前に決めておく必要があります。従業員からの質問まで委託できるとは限りません。

これは申し込む形のサービスです。提携が決まりしだい、ここに申込先を載せます。

よくある質問

全員が電子で提出しないと、電子化する意味はありませんか。

意味はあります。多くの会社では、まず大半を電子にし、端末を持たない人などを紙で受け付ける併用から始めます。重要なのは、紙で出た分を誰が入力するかを先に決めておくことです。決めないまま始めると、総務が全部を代行入力することになりがちです。

マイナンバーカードがない従業員がいても進められますか。

申告自体は進められます。マイナポータル連携を使うと控除証明書の取り込みが楽になりますが、使えない人は金額を画面に手入力し、紙の証明書を別途提出する形で対応できます。全員にカード取得を求める前提で設計しないほうが、現場は回ります。

サービスを解約したら、過去の年末調整データは見られなくなりますか。

サービスによって扱いが異なります。解約後に閲覧できなくなるもの、一定期間だけ参照できるもの、データを書き出して自社保存できるものがあります。申し込み前に、書き出し形式と保存期間を確認し、源泉徴収票の再発行に備えて自社側にも控えを残す運用を決めてください。

← 記事の一覧にもどる